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Princesses' Fairytale~魔法と科学の出会いは何を魅せるのか?  作者: 雪色琴葉
第四章:二人の王女と魔女再誕
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第107話:私のせいだったらしい

「全員、厳戒態勢!」


 母上が叫んだ。私はそれを背にすぐに空へと舞った。視界の端にはここにいる人全員の雰囲気がただならぬものになったせいなのか、ルナが戸惑いを見せているのが映った。


 空へと上がって、訓練場を囲う塀の外が見えるようになった。魔力を感じた方向へと視線を向けると、驚くべき光景が広がっていた。


「え?嘘、まさかアレ全部特殊個体じゃないよね?」


 そこにいたのはフェンリルの群れ。ただのフェンリルの群れならよかったんだけど、そのすべてが雷を纏っている。前に私が討伐したフェンリルと同系統の特殊個体の群れだと思う。その中でも一頭、前に私が倒したのとほぼ変わらないサイズの個体がいて、恐らくそれが群れの統率を取っているんだと思う。


「フレア、何がいましたか?」


 下から母上の声が聞こえた。私は自分の目に映ったものをそのまま伝えた。


「全員、塀の外へ!とにかく王都へのこれ以上の接近を許さないようにしなさい。フレアは一番大きい個体を抑えてください」


 私の声を聞いて母上がテキパキと指示を出す。私もすぐに塀の外へと飛ぶ。すると、隣に並ぶようにルナが現れた。私の速度に合わせて空を駆けている。その近くには、ここに来るときに持ってきて、結局最後まで出番のなかった長物がついてきていた。


「フレア、あの大物への初撃は私がもらっても大丈夫ですか?」

「いいっちゃいいけど、もしかしてそれ使う気なの?」

「そのまさかです」


 そう言ってルナは浮いていた長物を手に取ってかけてあった布を取り去った。その中から出てきたのはスナイパーライフルだった。ただ、以前ルナに教えてもらったときに見たものよりもさらに大型のものだった。


「では、フレアはあの大物を動かないように牽制してください」

「ルナは?」

「この銃はさすがに立って撃つのが難しいので塀の上から狙撃します」

「わかった。あ、間違えて私に当てないでね?」

「そんなことするわけないじゃないですか」


 そんなルナの返事を聞いて、私は一瞬ルナの方を見たあと、速度を上げて一番大きな個体のもとまで向かった。


 私の視界にはっきりと群れの長のフェンリルが映るようになるまではそう時間はかからなかった。どうやら相手も同じようで、私へと殺意を向けてきた。それと同時に放たれる雷の魔法。やっぱり前に戦った特殊個体と同系統の力があるらしい。


 私はすぐに二本の剣を構え、動きを制限しにかかる。ルナが一発入れたいみたいだから仕方ない。それに、前と同じような強さだとしたら、すぐに決着まで持っていくのは難しそうだからね。


 接敵からしばらく、私はとにかくフェンリルがその場から動かないようにすることとフェンリルの攻撃が周りにまで及ばないようにすることに尽力した。しかし、結構時間としては経ったんだけど、私いつまでこうしてればいいのかな?と思っていたら、後ろから一瞬かなり大きな魔力を感じた。それと同時、私の耳に聞こえたのは何かが爆発したと言うのがおそらく最もピッタリな音だった。


 そんな音が私の耳に届いたのとほぼ同時にフェンリルの右肩を弾丸が穿った。弾丸、と断定出来たのはルナが銃を使っていた時に見たことがあるから。その弾丸は、フェンリルを穿つと同時に爆発して、フェンリルの傷をさらに増やした。


「うわあ、マジか」


 思わず声が漏れるほどに凄まじい一撃だった。最終的に、フェンリルの右半身がほぼ消滅

 していたからねえ。私はその致命の一撃を逃すことなく、追撃をしてフェンリルにトドメを刺した。


「どうでしたか?」

「どうかしてる」


 いつの間にか後ろに来ていたさっきの一撃を放った張本人のルナが私へと褒めて欲しそうに聞いてきたから、軽く呆れ混じりの声で返す。


「そんなドン引きしたみたいな声で返さないでくださいよ」

「多分ここにいるのが誰であってもみな同じ感想を抱くと思うんだ」


 ルナはそう言いながらもフェンリルをツンツンとレイピアで突いて絶命しているかどうかを確認している。一応私がトドメを刺したはずだから大丈夫だとは思うけども。


「うん、大丈夫そうですね」

「まあしっかり一撃追加で入れておいたからね。さて、ルナはもう少し戦える?」

「この銃はダメですが、まあそれ以外なら」


 そう言って、ルナは近くにあるスナイパーライフルに視線をやった。


「さっきの一撃で銃身が使い物にならなくなってしまって。スペルガンとして使おうとしても術式を刻んだ部分自体が破損しているので修理しないとダメそうです。まあ、要改善ですね。って、フレア置いていかないでくださいよ」


 なんとなく、ルナが語りだしてしまう気がしたからさっさと群れの残党の片付けへと走り出した。そして、しばらく戦った後、フェンリルの群れは掃討された。


「お疲れ様でした、皆さん」


 フェンリルの群れの壊滅を確認した母上は戦いの終わりを告げた。それと同時に響き渡る歓喜の声。たまたま近くにこれだけの戦力がいたからどうにかなったけれど、もし気づけなかったらと思うと背筋がヒヤッとする。確実に王都に被害が出ていただろうからね。


「ソラエル様、魔力ありがとうございました」

「あら、ルナ殿下。こちらこそ、フェンリル掃討戦への参加、感謝します」


 そんな中、ルナが母上に話しかけていた。


「あら、フレア。フレアもお疲れ様です」

「はい、母上。どころでさっきのやり取りは?」

「ええとですね、あの一撃なんですけど、私の手持ちの魔石だけだと魔力不足で限界までスペックを引き出せなかったのでソラエル様から魔力を少し頂いたんですよ」

「正直、私もその提案を聞いたときは驚きましたが、結果論的には正解でしたね。しかし、あれは雷の魔法だったと思うのだけれど、いったいどうやったのかしら?」

「あれは雷の魔法で金属で出来た銃弾を加速させたんですよ。さらにその銃弾に衝撃を受けたときに起動するように術式を調整して配置して、着弾と同時に爆発するようにしました。まあ、結果としてはそのエネルギーに銃身が耐えきれずに一発限りになってしまいましたけどね」


 どうやら、雷の魔法を利用したものだったらしい。ルナ的には最後の言葉的に納得いってはいなさそうだけど、正直あの火力を出せるのはすごいことだと思う。


「その一発限りの攻撃がなければもう少し長引いてたと思うから、その一撃だけでもすごいと思うよ?」


 そう言って、ルナの頭を撫でてみる。すると、ルナは少し顔を赤くしながらも嬉しそうな表情を見せてくれた。なんだか、少し素直なルナが可愛い。


「そういえば、フレア」

「ふえ?なんですか?母上?」


 ルナの頭の撫で心地と返ってくる反応を楽しんでいると、母上が話しかけてきた。


「この前貴方が仕留めたフェンリルの魔石、あれってどうなっているのですか?」

「ええと、確か、今部屋にそのまま、って、あ」


 私は母上からそっと目をそらしてそれ以上口を開けなくなってしまった。なぜなら、多分この魔石の管理が今回の襲撃の原因だからだ。


「フレア、ドラゴンは近年目撃例がないから気にしなかったんでしょうが、フェンリルは目撃例の多い魔物です。その上位個体の魔石をそのまま置いておいたらどうなるか知っていますよね?」

「はい、特有の魔力を先に通常のものに変換しないと下位個体が引き寄せられます…」

「フレア、今から説教です」

「…はい」


 そう言った母上は私の首根っこを引っ張って王城の方へと連行していく。さすがに今回ばかりは私の過失が大きすぎるから反抗することもなくずるずると引きずられていく。当然、ルナ含め、ここにいる人全員が困惑の表情を浮かべている。


「あ、ルナ!」

「なんですか?」

「今日はもう自由にしちゃっていいよ!あとでまた!」

「え、わかりました」

 引きずられていく中、私はルナにそれだけ告げた。そうして、ルナの始めた一通りの騒動は何故かルナが騒動を引き起こすことになった私が母上に連行されていくのをみなが困惑しながら見送るというなんともしまらない結末で幕を閉じたのであった。


ちなみにこの話のタイトルの没案は「とある魔術の超電磁砲」です。理由:さすがにやりすぎ


評価、ブクマ、感想などなどモチベになるのでぜひぜひお願いします!

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― 新着の感想 ―
久々の新アイテム、ルナさんはまたとんでもないのを作ってきましたね。 そしてフレア、完全にやっちまいましたね~。これはお説教も当然ですわ。 タイトル没案、こりゃあ確かにアウトですね。(笑)
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