第六話 入学式④
連日投稿…推敲…うぅ…
時間はあっという間に経ってしまう。
気が付けば入学式が行われていた。
講堂。それは講義館や儀式館とも呼ばれ、儀式や式典、講義の為に使用される。
数年前までは体育館を使用していた。演習場もその時はなく、魔法演習の講義も体育館でやっていたらしい。
だがあるとき魔法の誤作動による爆発が起こり、体育館の大部分が修復不可能になってしまう。
幸い怪我人死人はいなかったが、それをきっかけに演習場と講堂を新設することが決まったようだ。
なお、現在の体育館もその際に新設されたものであり、設備はそれまでよりも充実し、魔法の誤作動による爆発が起こってもすぐに壊れはしない耐久性も兼ね備えたようだ。
講堂と演習場と体育館の歴史はさておき。
現在は学年二位の男子生徒が生徒代表として挨拶を行なっている。
彼もΔ組の生徒である。
名家出身ではないが、学年二位の実力を発揮するところから、なかなかの優秀さがうかがえる。
そして彼の長文が終わり、彼が席についた頃。
彼ら三クラス…特別クラスの担任のプロフィール、写真がプロジェクターで講堂のステージの壁に映し出される。
普通クラスの担任は普通クラスの授業しか持たないが、特別クラスの担任は場合によって普通クラスの授業を受け持つこともある。
そのため、このように全生徒の前で紹介を行うのだ。
しかし。
「…ねえ、穂乃果。あの教師見たことある?」
「…私も見たことない。陽華ちゃん。神崎…か。」
湖八穂乃果、炎十陽華の二人は神崎の写真を見て何かを話していた。
プロジェクターで映し出された三名のプロフィールには業績や担当教科が当たり障りのないように書かれていた。
…しかし、そこで目を見開いている女生徒が一人。
「…せん…せい?」
彼女は今年度入学する皇族。照子さんである。
神帝陛下の御令嬢であり、神崎が以前直に魔法を教えた者の一人であった。
天照大御神の名から付けられた。
魔法が必修科目として制定された頃から、神はいるのだと言われ始めた。
その風潮は日本で最初に広まり、その結果、何代か前の陛下が「人間宣言」をした為に現在のひとつ前の代の天皇陛下は神帝陛下と名を変えることとなった。
が、それは名前が変わっただけであり、日本国の象徴であることは変わらないし、戦争の過ちも変わることはない。
が、神帝陛下と呼ばれることは国内に限ることであり、外国には「天皇陛下」と、そのままの名前で通っている。
…しかし、ここ20年ほど。
今代の神帝陛下になってからあまり報道が無くなっている。
今も同じで、彼女の入学式にカメラや報道官はいない。
そして、現在、プロジェクターに投影されているのは学園長の祝辞。
毎年のように忙しかった彼女は、毎回何があっても良いように、祝辞をあらかじめ撮っているのである。
そのあとに続けて、国立大和魔法・魔術大学の学長の祝辞がはじまる。
この祝辞は今現在国立大和魔法・魔術大学で行われているものの中継であり、他の付属学校にも同じ映像が流されている。
今回、入学してきた者たちは、真剣な様子でその話に聞き入っている。
無論、この第一学院だけではない。
今の状況を変えたいと思って入学したもの。実力を上げたいと思って入学したもの。強いものと対決したいがために入学したもの。ここにいる新入生、他の付属校の新入生のほとんどが入学に何かしらの思惑を抱えているのだ。
彼らの眼は、窓が布などで覆われ、電気が消された薄暗い講堂なのにその眼力ゆえか光っているように見えた。
前のほうに座っている生徒たちの眼光とでもいえばいいのか。
それはまるで虎視眈々と獲物を狙っているような、そんな意思をはらんでいるようだった。
入学式が無事終了し、全生徒は教室へと案内される。
特別クラスは個別に移動をし、普通クラスは順番に担任が引率をして教室へと案内する。
一方歓談を終えた三人と学園長も教室へと向かっていた。
学園長が三人についてくるのはどうやら問題が起こった場合に対応するためらしい。
というのも、歓談中に話していたことではあったのだが
「問題児、ですか。」
「ええ。多分空弥と千風のクラスでは問題が起こることはないだろうけれど。神崎君のところでは何か起こるかもしれないからね。」
三人が聞かされたのは、実力主義の弊害というべきか。
普通に考えれば、担任は学園長が見合う実力の者を選出するため、実力と教師が合致しないなんてことは起こらない。
だが、名家出身の者達はとある事情から実力者については詳しい。
そのため「知らない」=「実力者ではない」という烙印を押す生徒が時々いるようなのだ。
「千風が神崎君に勝負を挑んだのと同じような感じよ。」
「ナッ⁉微恵だって文句は言ってた。」
「…まあ、それはさておいて。名家には毎年名簿が配られるの。優秀な魔法士だったり、優秀なスポーツ選手だったりね。いろいろな部門で優秀な成績を修めた人たちがその名簿に載るんだけど、神崎君の名前は今まで一度も見たことがないの。だから…」
空弥の話によると、彼女や千風のように、もともと力があると自負をしている者ほど、相手がどんな立場であろうと勝負を挑んでくるらしい。
なんでも「名簿に載っていなかったのだから自分がこんな奴に勝てないはずがない!」というような気持ちらしい。
故にその「なにか」が起こったときに手助けできるように学園長は毎年教室外の廊下を回るようである。
「すみません、学園長。俺がいろいろな事情で教師をしないといけないばかりに。」
「いえいえ。神崎君は私の眼から見ても実力者ですから。そんなこと気にしないでください。」
次話は早くて明日には投稿したい所存
(作者の都合により一週間開くかも…)