第五話 入学式③
前話に比べると短めです…
担任との顔合わせの一時間前となり、生徒会役員たちが登校してきた。
生徒会役員…とくに生徒会長や副会長だが…は入学式でいろいろな仕事がある。
例えば会長には生徒代表挨拶というものがあるし、副会長には放送委員とともにプロジェクターや音声チェックをしなければならない。
そんな中、Δ、∑、Π組の担任三名はステージに呼び出されていた。
というのも、通常クラスであれば担任がいる会議室へと案内され、そこから入場となるのだが、特別クラスは違うらしい。
それは
「…なるほど。特別クラスの生徒は講堂二階席に割り振られるのか。そのうえ、教師が案内するにも二階席は団体で入ろうとすると混雑するから…といったところか。」
「はい、神崎先生。あとはサプライズみたいな一面もありますね。特別クラスは担任が優秀だと思わせるために。」
そういった生徒会長はあからさまに神崎の方を向く。
生徒会長の神谷も実力主義ではあるらしい。
言外に「貴方がいるから」と言っているように思える。
「ははは。別に俺は自分が強いと思ってはいないからどう扱ってくれても結構。しかし例年もこんな感じだと聞いているし、そんなに苛立つこともないんじゃないか?まあ、今年度は皇族の入学があるから気が立っているというのはわかるが。」
「…ッ。すみません。」
どうやら皇族の一人が入学するのだそうだ。
「お三方と学園長は講堂備え付けの第二応接室でお話でもしていてください。」
気づけば時は既に担任との顔合わせの30分前。多くの新入生が登校し始めていた。
特別クラスも普通クラスも、登校後に会議室へと案内される。
普通クラスでは8時30分の予鈴が鳴った後に担任との顔合わせ。
それが終わり次第会議室に置いてある資料の説明。そのあとは仲を深めるべく自己紹介を行い、余った時間でオリエンテーションなどをして9時30分までの時間をつぶす。
特別クラスでは8時30分前に学院の書類担当事務官が資料説明をした後、ざっくりとした今日のタイムスケジュールの確認。そのあとは9時30分まで自由時間である。
9時30分になるとアナウンスが流され、特別クラスは個別に入場。普通クラスはクラスの順番で入場開始となる。
そして予鈴が鳴る。
普通クラスでは通常通り、顔合わせや自己紹介が行われていく。
そんな中特別クラスでは既に書類とスケジュールの確認を終え、生徒同士の自己紹介の時間となっていた。
と言っても、知り合いのグループとそのほかのグループで二分され、そのほかのグループで自己紹介が行われているような感じであった。
知り合いのグループには主に名家出身の者たち。その他はそれ以外といった感じだろうか。
各々で既にグループができ始めていた。
そんな中Δ組。
Δ組でも他クラスと同様にグループが大まかに二分されていた。
しかし、中でも目立つ存在がいた。
「私、照子と言います。お名前を伺っても?」
今年度入学するという皇族その人である。
そうしてもう一人。彼女が声をかけた者も目立つ存在の一人であった。
なぜか。
「…わ、私、紗愛って言います。藤江紗愛です。」
彼女は普通の人とは違い、少し長い耳を持っていたのだ。
眼を長い前髪で隠しており、どんな顔なのかはよく見えない。
しかし、その耳と相まってゲームなどに出てくるエルフを思わせる。
エルフのような見た目の者や獣人のような見た目の者は、「被験者」とも呼ばれる。
彼ら彼女らは以前行われていたとある実験の被験者であり、あまりいい目では見られないのだった。
ここでも同じように、憐憫の眼差しを向ける生徒が多い。
だが、普通の人と何ら変わりはなく、ただ耳が長かったり、動物の角や尾のようなものを持ったり。一部人間でない部分は見られるが、ただそれだけなのだ。
あえて普通の人と違う点を挙げるならば、MDなしで魔法を扱えるという点だろうか。
それ以外は普通の人間と同じである。
彼女たち被験者が行われた実験施設は悉く破壊され、今は廃墟となっているが、数年前破壊されニュースになるまでその実験が秘匿されていたために、未だ憐憫の眼差しが拭えていないのも事実だろう。
2人はどうやらすぐに仲良くなったようで、そのまま会話をしはじめる。
一方そのころ。
「二人はやはりそうすぐには馴染めませんよね…。」
「どうしたの穂乃果。浮かない顔をして。」
「うんうん。なんでもないよ、気にしないで。」
そんな二人を気にする者がいた。
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