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第四話 入学式②

「神崎君遅いな。」


「もしかして負けるのが怖くて逃げ出したんじゃ?」


けれど千風がそう言い終わると同時に演習場のドアが開く。


「悪い。少し迷った。」


どうやら本当に迷っていたようだ。


部屋に入ってきた彼の腕には腕輪型のデバイスが装着されている。


演習でも勝負は勝負。デバイスなどの装備類はきちんと装備してから演習場に入るのがマナーであった。

2人が位置につき、ルールが説明される。


大まかなルールを確認し終えた二人は構える。



そして。


「この部屋に数十秒後遮蔽物を作成する。君達はそれまで互いを攻撃しないこと。あと、殺傷性S+の武器に関しては携帯してもいいが使用してはならない。…何か質問は?」


「「ない。」」


「では。…用意…始め。」


その掛け声で両者ともまず距離を置く。そして30秒もしないうちにそこには高層ビル群…まるで都会のような街並みが作られていた。

道まで枢密に作られており、ここが本当の場所だと勘違いさせられそうになる。

千風はすぐさま一番高いビルのてっぺんへ。

とは言っても5Fなのでとても高いわけではない。

…しかし彼女には好都合。

彼女は「風」の家系。

そのため風について日本で彼女に勝るものはいないと言われている。

そんな中。


「えっと。神崎は…っと。いた。」


彼女は風の吹き付け具合から、そこに何があるかなどを把握することができる。

そして


「【風刃ウィンドスラッシュ】」


遮蔽物の一部を、風圧を凝縮したような刃で切り崩し、


「【風圧上昇(ウィンドオーバー)】」


風圧を上昇させ、身動きがとれない状態にする。

気圧としても上がっており、30気圧ほどまで上がっている。

ただし、事前に学園長に許可を取った値であり、実戦であれば40気圧などざらである。

標準的に考えれば、30気圧は人が苦しいと思う限界だと思われる。

450メートルの水深まで潜った人物が昔にいたという記録があり、その記録からすると、人の限界は45、46気圧ではないか、と思われるが、平均を考えれば30気圧なのではないかと思うところである。

終いには


「【竜巻(ハリケーン)】!」


さきほど崩した遮蔽物を竜巻が巻き上げながら、身動きの取れないはずの神崎のいるところへ進んでいく。生身で受ければ死ぬことはなくともよくて打撲、悪くて骨折と言ったところだろうか。まあ、彼女の狙いは相手にけがを負わせることではなく、この力の差を見せつけることで神崎の口から「負けた」の三文字を出させることであった。「負けた」といった時点でギブアップを指し、学園長により遮蔽物以外の魔法の強制解除が発動されるのである。

ゆえに、これは勝った。あとは神崎の口から「負けた」の三文字を聞くだけ。そう思う千風であったが詰めが甘い。無名の魔術師だ、と神崎をなめ切っていた。…しかし。


…竜巻が既に神崎が先ほどいた建物の端に直撃しているというのに、一向に敗亡宣言が聞こえてこない。



「神崎…強がっているのかな…?」


けれども、その予想は次の瞬間に覆される。



「呼んだか?」


「―ッ⁉︎」


遠くで身動きがとれず、怪我の危険が迫っている筈の彼がなんと彼女の真後ろにいたのだった。

彼女はすぐさま風の魔法を放とうとするが時すでに遅し。

神崎に接近を許した以上、どうやっても千風は勝てない。


「遅い。」


彼は手を彼女の首に当てる。


「―ッ!」




彼女は、その時点で負けの判決を下されたのだった。

しかも神崎が魔法を使用することなく。

その試合は僅か1分足らずで終了した。

その様子を学園長は満足気に見ており、逆に空弥は驚いていた。

何せ、空弥には彼がどのような動きをしたのかさえも見えなかったのである。


「空弥。この勝負を見ても彼を下だと判断できる?」


「…いいえ。しかし彼の動き。学園長は見えたのですか?」


「目で追うことはできたよ。…まあ、あの速度の攻撃はギリギリ私には反応できないけどね。」


「え?本当ですか?」


「私が嘘を言っているように見える?」



空弥が驚くように、実は学園長は五代家系に劣らない力を持つ実力者である。



「…まさか学園長に勝る日本人がいたとは。それ程の力を持つのなら国家戦力にもなれそうですけどね。」



というか、彼女がそう言うほど、学園長は五代家系よりも下手すれば強い。

そんな中、彼が千風を抱えて降りて来た。


「ご苦労様。神崎君。…千風。これで何故私が神崎君をΔの担任に指名したか分かったかい?」


「はい…。私の目が節穴。ごめんなさい。」


そうして勝負は終わった



そして


勝負が終わり、学園長、神崎、空弥、千風の四人は職員室で書類作業に取り掛かる。

新しい担任は、入ってくる生徒の写真付き名簿を渡される。

入学式当日まで名簿は学園長にも見ることができないので、この入学式の前の時間を使って覚えてもらうのである。


名簿には出身中学校、魔法の属性、所属していた部活動、大会や検定で得た結果などが書かれている。

中学の校風や部活、成績、大会出場の経験があるか等、これらだけで担任達は、その生徒がどういう性格なんだろうな、等を考えながら覚えていく。

30名程度のクラスであるため、すぐに覚えてしまう人もいる。


入学式前にしなければならないことは他にもあり、教室の机に配布物をあらかじめ置いておくことや黒板に席と名前を表示しておくことなど。

色々な準備で入学式前は忙しいようだ。

ただ、黒板と言っても現在はほとんどがホワイトボードに代わっており、プロジェクターや映写魔法を使うのが主流になっている。


そうして教室を終えると、次は会議室である。

この学校は大きな敷地にあり、生徒たちをわざわざ教室に入れてから入学式を行う講堂へ向かうにしても長い距離の往復になってしまう。

そのため、講堂に数部屋設置されている会議室に入学式前の新一年生たちは招かれるのである。


神崎は教室でやることを終わらせ、会議室へ向かう。

会議室のほうは副担任がやることになっており、早ければもう終わっていることだろう。

全てのクラスに副担任が存在しており、場合によってはあ副担任が担任に業務を教える、ということもあるようだ。

神崎のクラスの副担任はノーラであった。


「おはよう、リサンツ。こっちは終わったぞ」


「おはようございます、神崎さん。こちらも今終えたところです。」




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