プロローグ1-3
―UMUC(Useful Magic Using Company ) デバイス作成課―
UMUCは国内売り上げ一位を誇る魔法器具類の会社である。
5年前に開業し、急成長した今注目の会社である。
そこのデバイス作成課の課長、鈴木念斎は今、20代と思われる男性とともに会議室にいた。
彼は80という歳でありながらも業務を行なっている。
それはこの世界では普通のことで、定年はなんと100歳まで伸びている。
これは科学・医療的な延命技術と魔法による延命技術が発展した結果である。
だが、この国の定年が100歳なのは企業のみであり、政府関係組織、議員、研究所などの公的組織といった、国公立の施設や組織での定年は60まで、と表記されている。
それは、100歳まで定年が伸びたことにより、組織を裏から操るような者が、以前よりも長い間居座るという懸念があったためである。
一度それに依存した組織は、それを失った場合依存をなくすまでに時間がかかる。
ゆえに、議員は必ず定年が60と明記されている。
…閑話休題。
そして
「神崎社長。今日はどう言ったご用件でしょうか。」
実はその20代の男性は社長だった。
「ああ。鈴木さん。実は…。」
「…ほう。なるほど。」
今日は鈴木念斎以外この課の者は来ていない。
会社の改装工事、ということで全員有給にしてあるのだ。では何を話し合っているのか。
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
……
…
どうやら魔法により他に話が漏れないようになっているらしい。
神崎、鈴木の両名はその日の午前中、ずっと話し続けていたという。
UMUCは国内売り上げ一位であるが、実は世界的売り上げでは六位であったりする。
この会社は多くの人が買うことのできる一番低いグレードの魔法器具からセレブ達のためのアクセサリーまで、いろいろ売っている。
中でも、自分に合った魔法デバイスを作成できる「UMUCラボ」の展開や、魔法の教科書「UMUC魔法辞典」の販売等が目玉である。
世界的な魔法教科書のシェア率はUMUCが約80%を占めている。
しかも、UMUCラボは日本、アメリカ、イギリスの三カ国に展開されている。
…閑話休題。
そんな話題性のある会社ではあるのだが、社長の話になると急に大多数の興味が薄れる。
まるでそこに誰かの妨害が働いているように。
それもそのはず。
彼、神崎社長の情報は秘匿されているのだから。
神崎御代志。
それが彼の名前である。
彼について知るものはあまりいない。