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第十五話 宿泊行事一日目②

おはようございます。

3月も今日で残り半分くらいになりますね。

桜が開花したとも聞きますから、花見をしてみてはいかがでしょうか。


国立武蔵魔法学院別舎。

正式名称 国立大和魔法・魔術大学付属第一学院静岡別舎。

ここは宿舎まで付いているため、学校の宿泊行事でも使うことができる。

宿舎と言っても、大きな宿泊施設(ホテル)と呼べるものである。


…まあ、他にも色々な使い方はあるのだが。

それは後に話そう。


この別舎は大教室が10個あり、うち三つは1-Δ、Σ、Πが。他7つは1〜7組が使用する。


そして今日から三日間彼らはこの宿舎に滞在することになる。

それはクラスメイトが仲良くなるため、そしてとある試験を受けるためである。







神崎とノーラはチェックインをし、部屋に入る。

二人は同室である。何せ


「悪いな、ノーラ。こっちまで回復部屋を作ってもらって。」


「いえ。陛下から頼まれてますし。」


神崎の精神はまだ不安定であるからだ。



セキュリティは全部屋万全。

しかしそのためマスターキーというものはない。

そんな中。



『ピンポンパンポーン………国立武蔵魔法学院の方達がお見えになりました……』


「やっと来たか。」


「そうですね。」


そうして彼らは別舎へと向かう。

とそこで



「ノーラ。悪い、トイレ行ってくるから先に行ってくれ。」


「え、ええ。もし遅れたらそう伝えておくわ。」


神崎はトイレへと入る。

そして


「おい。いるのだろう?出てきたらどうだ?」


急に神崎は誰もいなさそうなトイレで呼びかける。

…誰もいないのだから出てきやしないと、普通ならそう思うだろうが


「…やっぱり神崎さんには敵いませんね。いつ気付いたんですか?」


そこにいつからいたのか、フードをかぶった青年がいた。

身長は神崎より5〜10cm低いくらい。

彼は猿飛(さるとび)甲斐斗(かいと)。あの猿飛一族の末裔である。


「もう一人はどうした?」


「ええ。木下さんはまだ潜入捜査を続けていますよ。このホテルで地味な格好で。」


もう一人いるらしいが、どうやらここで潜入捜査中らしい。

しかし驚くにはまだ早い。何故なら


「で?ノーラを狙う奴らの動きは?」


「ええ。今のところは仕掛けてはこなさそうです。ですが内部では活発化しはじめたようです。」


「…向こうはまだ準備途中って認識でいいか?」


「そうですね。先日神崎さんから聞いて調べた雷も、交換条件で放つ用意があると言われればきついかもしれませんね。特にあの五大家系とか。」


神崎が軍部に述べた情報の一部は実は彼が調べた物である。彼は潜入捜査からハッキングまでお手の物である。

それよりも…なんとノーラは狙われていたらしい。

それは無論あの回復魔法が理由だ。第二次英露戦争で彼女がいなければ戦線は崩壊していたと言われるレベルだったのだ。

その上今は日本にいる。

彼女を狙っているのはアジア連邦やロシア帝国であるから、絶好の機会ともいえるだろう。

であるから、実は彼がノーラの家に入り浸っているのはそう言う事情があったからなのだった。


「俺が側についていればそう言うことはないだろうが…」


「それでノーラさんは安全でしょうが、危ないのはあの慢心している名家出身の彼らです。もしかしたら敵対するかも。

しかも神崎さんは今年から教師でしょう?ノーラさんが無防備になっていそうですけど。」


「それは大丈夫だ。俺がなんとかしよう。すまんな。」


「いえ。お気になさらず。」



…とそこで


「ああ。お前らにはいつも迷惑をかけるな。」


「気にしないでください。この宿泊行事…もしかしたら、があるので気をつけて下さい。」


「おう。」



神崎との話を終えた甲斐斗はすぐに消える。

彼がどこに行ったのか、神崎は分かっているようだ。


そして神崎もトイレを出る。

出る前に


「やっぱりか」


と残して。

しかしその会話は時間にしてわずか2分。

しかもさっき神崎がトイレに入る時防音膜と進入不可膜を同時に貼っていたため中の音は全然聞こえていない。


そして神崎は


「《瞬間移動》」


10階のそのトイレの外から1階エントランスへと、あらゆる物理法則を無視して移動する。

先ほどはかけていなかった眼鏡を掛けて。






一方その頃、宿舎の食堂。


「…だそうですよ。木下さん。」


そこには先程パーカーについたフードで顔を隠していた猿飛と、いかにも地味でどこにでもいそうな女性が。

そう。彼女こそ先程の話に出ていた木下その人である。


「そう。先輩が。」


木下(きのした)刹那(せつな)。それが彼女の名前である。


「それにしても…どうしてこんな地味な格好でいるんですか?潜入捜査を終えたと言うのに。素の方が可愛いと俺は思いますけど。」



そう。実は潜入捜査は終えているのだ。けれど何故彼女がまだいるのか。


「だって…甲斐斗だけずるいじゃない。先輩と何度もあっているんでしょう?私なんて先輩が卒業してからと言う物全然会ってないのよ⁉︎」


「はははっ。仕方ないじゃないですか。だって木下さんは警視総監殿の娘さんでしょう?現警視総監殿は軍部嫌いですから。」


そう。彼女の父は木下(きのした)八木慧(やぎとし)。現警視総監である。

大の軍部嫌いとして知られており、不正や癒着を決してしないという、珍しい清廉潔白な者である。

しかし娘としては不満が溜まっているようで


「そう!あの**(悪口)。軍部にいる先輩と同じ任務につきたいと言っても全然聞いてくれないの!」


ちなみにここはキッチンのバックヤード。

こんな機密事項をホテル関係者のいるキッチンで公に話せるはずがないから当たり前ではあるが。


「まあまあ。…それでもそんな格好してて良いんですか?神崎さん来るのに。」


「ええ。先輩以外の男に告られたくないし。…しかもこの格好で嫌味言ってくる人ってのは所詮そのレベルなのよ。」


「ああ。」


「それよりも!あんたも手伝いなさいよね。仕事。」


「は?なんで?」


そこにはいかにも平和な空気が漂っていた。


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