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第十話 ノーラside

ノーラ編です

〜ノーラside〜


…丁度この季節だったでしょうか。

私が日本に来る決意をしたのは。






12年前。まだ私が12歳の頃。

私達リサンツ家も戦争に駆り出されていました。

それは英露戦争。

2178年〜2182年の四年間行われた戦争です。

当時戦争の(おわり)が見えず、イギリスが日本とアメリカに同盟国として助けを求めるその少し前。

私達は戦争の駐留軍と共に戦線へ繰り出されていました。

私が12歳という若さで戦場へ繰り出されたのは父がイギリスで有名な魔術師であったからです。

ちなみに私は父の軍で戦うこととなっていました。

…今となっては後悔しかありませんが、あの時は幼いということもあり戦争の恐ろしさを知らなかったのです。

私は初戦ということもあり、ワクワクしていました。


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戦争は国家間の争いであるから人間同士の殺し合いだと、今なら分かりますが本当に軽率でした。

私はその日吐くことになったのは言うまでもありません。

初めて殺人を犯したから。その時の手に付着した血は今でも忘れられないほど、ドロッとしていました。

しかも殺し方も残酷でした。

心臓に一突きと脳幹に一突き。

どちらも魔法で作成した氷でできたレイピアを用いました。

それでもあの感触を思い出すと今でも吐き気がします。

毎年ヨーロッパで行われる慰霊祭には黙祷の為に足を運んでいるのですが、罪の意識が消えることはありません。

そしてそれから月日が流れ、敵方では多くの戦死者が出ました。私達の軍は辛うじて生きてはいるものの失明してしまっていたりと、被害は甚大(じんだい)でした。

そうしていくうち、私が13歳の誕生日を迎えたのは戦場のど真ん中でした。

しかし戦場に豊かさがあるはずもなく。

そういうわけで私の誕生日はお祝いの言葉で終わりました。

…早く終わらないか。そういう苦しみしか心に残っていなかったことも覚えています。

丁度その頃に私は「妖精戦姫」と呼ばれるようになりました。

いつも精神状態が危うかった私は毎日のように回復魔法を自分にかけていました。きっとその成果でしょう。

そのおかげで失明等の重症患者の治療も可能になりましたが、その回復した人と同じくらいの敵を(ほふ)りました。

そうして、もうそろそろ心が折れるというところで、援軍が来るという情報を耳にしました。

なんでも同盟国である日本やアメリカ統衆国から人員が派遣されるようでした。

それを聞いた私はそれまで耐えようと。そう決心したのを覚えているのですが、その日から援軍が到着するまでの間のことはほとんど覚えていません。

それは突然耳に届いた情報でした。「父が瀕死の状況だ」と。

私はすぐさま駆けつけてなんとか治癒魔法をかけたのですが、父の目は覚めませんでした。

しかし唯一の救いは父の心臓が動いていること、脳が死んでいないことだったのでしょう。

もし父の死が確定していたら私は自殺に走っていたに違いありません。

ですから記憶があやふやなのです。

やること全てが(うわ)の空だったのでしょう。

そして援軍が到着するという日。

そこまで私は戦争に参加してから実に1年と6ヶ月を費やしていました。

ああ、やっと解放される。

そう思った矢先に絶望が襲って来ました。

なんでもロシアの別働隊が対アメリカ戦力の為スペインの一部を攻略しそこに駐軍。

そしてアジア連邦に協力を持ちかけ、日本軍がこちらに来られないと、実に八方塞がりな状況に陥れられたのです。

…しかしそれでも援軍は少し来たため、少しの戦力回復にはなるでしょう、と。


ですが気を抜いてしまったのでしょう。

私は大きなミスを犯しました。

…背中を斬られてしまったのです。

その時はなんとか回復魔法で出血を抑えましたが、今でもその傷痕は残っています。


それから一週間経ったでしょうか。

私達は援軍が来るまでの辛抱だと、身体に鞭打ち、なんとか耐えていました。

けれど、あの傷が思ったよりも深く、私は敵を目の前にして意識ある中で倒れてしまいました。

しかし敵は近接戦闘型。

私も一騎打ちで戦っていたので、私は死を覚悟しました。

まだ成人していないのに。神様は理不尽だ。

そんな思いを抱き、死を恐怖している自分に嫌気がさしました。

何故なら私もなんの罪もない方達を殺していたのですから。まさに因果応報と言えるでしょう。

そして剣が空気を切る音がしました。

ああ、死ぬのだ。そう思って目を閉じたのを覚えています。

………そして何分経ったでしょうか。

私は未だ斬られていません。

目を開けてみれば、そこには多くの敵方の死体が。

思わず辺りを見回すと、そこに一人の英雄(かいぶつ)がいました。

それは血に塗れ、元々白だと思われる装備は赤い鬼と化していました。

しかし黒塗りの日本刀だけは汚れ一つついていませんでした。

それは近づいて来て


「大丈夫だ。もう何も怖くない。」


そう言って来ました。



……そこからは私は彼に泣き付きました。



父が意識不明な中、泣きつけるほど安心できる人物は彼しかいないと。

その時は彼をまるで父のように思い、色々と甘えたのを覚えています。


…その戦場には今では桜の花が咲いています。日本が寄贈したものです。




丁度彼と一緒にいた時期。彼と一緒に桜の花を見てみたい。そう思っていましたが、あれは初恋だったのでしょうね。

それが丁度10年前の今頃の話です。

戦場の後処理を終え、複合軍の日本人たちが去っていく中、父が目覚めるまで残ってくれた彼の背中は、今でも覚えています。

去り際に付けていたネックレスをくれましたね。

彼の素顔はいつも兜で隠れて見えませんでしたが…どんな顔なのですか、貴方は。

ですが叶いませんね。…貴方はいつの間にか戦場で死んでしまったのでしょう?…神速の戦鬼さん。


私はそうして、彼の墓を後にします。

毎年行なっている墓参りですが…今日私がここを訪れたのは実は違う意味でした。

…ごめんなさい、初恋の人。私、気になる人が出来てしまいました。…貴方はこの恋路(こいじ)を応援してくれるのでしょうか?



が、頑張るぞぉ…(´・ω・`)…


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