流浪の鍛治職人
翌日、目が醒めると聞いたことのあるような一定のリズムで金属がぶつかるような音が聴こえてきた。
ティナはまだ就寝中だ。
起こすのも悪いと思い、一人で興味本意に音の方へ進んだ。
いつでも逃げれそうな隙があることに少し笑ってしまう。どの道、大蛇討伐に戻るのでその必要もないんだが。
館を出てすぐ側に鍛冶場があった。
覗きこむと、大柄の50代くらい男性がいた。
腕は俺の倍以上の太さがありそうだ。
真剣に作業をしているのか俺に気付く様子はない。
手際の良い職人技に思わず見惚れてしまう。
昨日、執事が言っていた鍛治職人のディオードさんだろう。
声をかけるか迷っていたところ、ようやく俺に気づいたようだった。
「弟子入り希望か?なんてな。ガハハハハッ!俺はディオードだ。」
あまりの豪快さに驚いたが悪い人ではなさそうだ。あの執事みたく嫌われている気配もない。
「蓮条夏軌です。隣の倭の国、天之宮から来ました。」
「おう!話は聞いてるぞ!ヤマタノオロチを倒して、残りをまた倒しにいくんだろ?あの武器はどうだった?いま戦闘靴も作ってやるからなッ」
刀がとても良かったというと満足気に、靴をどうするかについて話が進んだ。
風の魔石を嵌め込み速く動ける靴にするか、頑丈な攻撃出来る武器を仕込むか悩むところではある。
話し込んでいるとティナが眠た気に目を擦りながら現れた。
「おはようございます。戻ってたんですね、ディオードさん!」
「おう!新しい素材が採れてな!試してるわけさっ。」
ティナは俺に向かって、先に行くなんて酷いと頬を膨らませていた。
夕方頃に完成するらしい。
それまでは明日の出立に備えて買い出しに行くことになった。
山を降りたところに村があるから、そこで足りないものを買うのだそうだ。
「ナツキお兄ちゃん、馬には乗ってるよね?」
本でみたから乗れるはずだと馬小屋に案内する。
あの執事は馬の世話までしているようで、過労で倒れないかふと心配になった。
「立派な馬だな…」
故郷の馬よりも一回り大きい。
しかも3頭もいる。
俺が乗ったことを確認すると、ティナは軽々と別の馬に飛び乗った。
「一緒に乗りたかったけど、荷物多くなっちゃうもんね」と少し残念そうにしている。
そうして、ゆっくりと山道を散歩しながら村についた。
路面で果物や装飾品が売られており賑わっている。
「何を買うんだ?」
ティナはメモを取り出す。
「食料と解毒ポーションとマクさんの写真集の新刊!!」
最後のは聞かなかったことにした。




