銀眼の執事
館に戻ると、入り口に見知らぬ高身長の男性が立っていた。シャツにネクタイをきつく締め、ベストを纏っている。
「お嬢様、お食事のご用意ができました。」
ティナに深々とお辞儀をしている。
俺も挨拶しようとしたが、彼の銀色の瞳が俺に憎悪を抱いていると感じさせた。
(俺が何かしたか…?)
ティナは気付いていないのか、笑顔でお礼を言う。
案内されるまま、食卓へと向かった。
「なぁ、ここには何人いるんだ?」
ティナに聞いたつもりだったが、案内した男性が代わりに答える。
「全部で7人ですよ。イザベラ様、ティナ様、鍛治職人のディオード様、シェフのマルク様、諜報員1名、執事の私とナツキ様です。いまは4人ですね。」
執事という男性と歳も近そうだし親しくなれればとも思ったが、完璧な敬語に困惑する。
「…。俺は人質だし敬語使わなくていいぞ。名前なんて言うんだ?」
「私の名前はバロックです。雇われの身ですので。」
心のこもっていない淡々とした返しに、仲良くなる作戦は泡と化した。
4名が座れるくらいのテーブルにティナと俺の食事が用意されている。
バロックはティナが座れるように椅子を引く。
その目が優しいことに気が付いた。
つまり、俺が邪魔だってことなんだな。
気まずさを感じつつも、豪華な食事に目を奪われた。
故郷では領主でもないと食べられないような大きな肉に具沢山のスープがある。
「ナツキお兄ちゃんの歓迎会なんだよ」
ティナはそういうと、グラスを持った。
そこにバロックがワインを注ぐ。
「…?!子どもが酒飲んじゃだめだろ?」
「子どもじゃないもん!レディーだよ!」
ムッと頬を膨らませるところは子どもにしか見えない。
そこで殺気を感じ、横を見る。
どうやら主人を子ども呼ばわりしたのを相当怒っているのか、ワインボトルを持つ手が微かに震えている。
「…そうか、悪かったな。」
歓迎会という名の気まずい食事がこうして始まった。




