悪辣の参謀
激しい濁流の音を聴いて、思わず笑みが零れる。
将軍とその忠臣をまとめて片付ける、そして俺が将軍へと繰り上がる。 そういう筋書きだ。
高台に逃げたとしても別に伏兵を用意している。
逃げ場はないはずだ。
そもそも危険を犯して大蛇討伐に参加する必要もない。蓮条家のいかにも無垢で騙されやすそうな男を盾にして手柄を貰えば良い。
一旦通常ルートを外したが、また彼らに合流すれば問題はない。
横にいた少女が何やら奇妙な術を使っていたが、あれが通達のあった魔法というものなのだろうか。懸念があるとすれば、魔法がどのようなものなのか実際に見ていないことだろう。
だが、まぁ、あの若さだ。主導権は奪えるだろう。
蓮条達が向かったであろう方角をひたすら部下とともに駆け上がる。
すると、前方に戦っている蓮条の姿が見えた。
「クソッ!取り巻き倒す人たちどこに行ったんだよ?」
刀一振りで大蛇を次々と絶命させていってるが、標的に辿り着くまでの消耗戦で苛立っているようだ。
俺が将軍を倒すために大蛇討伐部隊の人数を予定よりも大幅に減らしたから怒るのも無理はない。
こちらが到着した合図に赤色の煙を打ち上げる。
すると純粋な彼らは嬉しそうに顔を輝かせる。
このまま俺が指揮を取れば良い。
彼らは優秀な駒だ。
すぐさま部下に彼らを支援するように指示をだす。
「遅れてすまない、別の所で戦ってたんだ。このまま人数で押し切って直進する。」
蓮条と少女と緋和田の3人は素直に頷いてくれる。
とても扱いやすそうだ。
「雀部さん、将軍はどちらに…?」
緋和田が聞いてきたが答えは用意している。
「あぁ、大きな蛇が出てね、部下を守るために自ら先陣を切って戦っているよ。また合流するはずさ。」
疑う気配すらなく3人は納得したようだ。
そして戦いながら目標地点へさらに突き進んでいった。