暗雲の大蛇
いよいよ決戦の朝を迎えた。
青天井の快晴だが、目的地は霧が立ち込めていると思われる。
もう一度持ち物を確認し、馬に乗った。
ティナはどうやら緊張しているようで同じ場所をうろうろしたり、杖を振ってシュミレーションしているようだった。
今回の出陣は相当気合いを入れたようで、人数もかなり多い。
緋和田さんを見つけたので合流する。
俺たち3人組と他チーム15人でボスを叩きに行き、残りの人はその道を切り開く作戦だ。
ちなみに雪山で魔女と戦った家臣たちも、父が率いて取り巻きの大蛇を討伐予定だ。
指定の時間となったのか、号令がかかった。
岩枹将軍が全体の指揮を執っている。
もともと尊敬していたことに加え、攫われた俺を全力で探してくれていたと聞き、とても信頼している。
将軍のかけ声とともに全員が武器を掲げ、気迫のこもった号令に応えた。
そして先頭から順に出陣していく。
俺たちは真ん中あたりだ。
住民たちの応援に囲まれながら俺たちも動き出した。
2時間ほど進んだだろうか、あたりの草木が不自然に枯れている。
奥が霧でよく見えない。
前方から一人が駆け寄ってくる。
「蓮条様! 前に4つ首の大蛇が現れ、岩枹将軍が交戦中です。迂回して先に進んで欲しいとのことです。」
一瞬聞き間違いかと思った。
中央で俺の少し前にいたはずの将軍が先陣を切って突撃しに行ったらしい。
一緒にボス戦まで体力温存する予定だったはずだ。
「指揮官はだれが…?」
伝令を伝えに来た男性は少し困った表情を浮かべながら、答える。
「雀部様です。岩枹将軍が一人で行ってしまったので 十首の大蛇討伐部隊の指揮官が交代しました。」
雀部…。話したことが何度かあるが、いかにも裏がありそうな何を考えているのか読めない男で、あまり好きではない。だが、この状況下で反対する理由はない。
「わかった。迂回する。」
俺はティナと緋和田さんにも伝え、指示に従った。
敵を避けボスのところに行く目的通り、そこまで敵はいない。
毒だまりが増え、ティナが何かの魔法をかけながらひたすら進んだ。
そして俺たちは岩枹将軍がなぜ一人で突入したのかもっと気にするべきだと後悔することになった。