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リベニカの花瓶  作者: イソジン
5/5

かいごう

2部に入ります

1、看守は秩序を護るもの

2、看守は正義を司るもの

3、咎人は人にあらず


朝からこんなのを3回大声で読まされる。

昨日夜まで勉強をしていて睡眠が足りなかったのか、僕は大きな欠伸をした。

「気を引き締めろ」

看守長は今日も狼のような目をして、心臓に突き刺さるような声で怒鳴る。

45°の礼をして大声で詫びる。

今日はたまたま僕だったが毎日こうして1人怒鳴られている。



貧乏な家庭に生まれた自分がこうして一人前の仕事につけたのは、全て母のおかげだった。

母は様々な仕事をして僕を学校に通わせてくれた。そのおかげかこうして看守になれたのだ。

僕はこの仕事に誇りを持っていた。この仕事は民を守る仕事だからだ。

外で働く兵隊や自警団みたいに派手な仕事ではないが罪人をしっかりと見張り、時には更生させたりする。そんな仕事だ。

だからと言ってはなんだが、朝に読まされる3番の「咎人は人にあらず」というのはなんだが納得が行かなかった。


しかし、そんな言葉がぴったりな罪人が今日やってくるらしい

この前、町で大騒ぎになった貴族の奴隷市場での大量殺人の犯人。

僕は不謹慎だがどこかワクワクしていた。そんな大勢一気に殺すなんてどんな屈強な男なんだろうかと。それに自分としては奴隷市場ってのは好きじゃなかった。あの薄気味悪い貴族共、そして捌けない悪人として裏世界を牛耳っていたあのリベニカを刺し殺したらしい。貧乏人界隈で救世主と一躍有名人になっていた。


「なあ、ベル。どんな奴が来るんだろうな」

「聞いた話だと腕が4本ある2m級の男だってよ」

同期のベルに聞くと笑いながらそういう。噂とは怖い。そんな人間いるはずがないのにイメージだけが1人歩いていくからだ。


僕とベルは所の入口でそいつが来るのを待っていた。

門から馬車が来る。

中から看守の先輩が降りてきた。

「…ベルにキーマンか」

「先輩!、あいつどんな感じっすか??」

「あー、いやなんか違うわ」

先輩は拍子抜けしたような顔でそういう。

コツコツと靴と馬車の荷台がぶつかる音がして犯人の足が見える。

囚人が着るスカートに似た布に負けないほどの白く、そして細い足。長く結んだ髪に息を飲むほどの綺麗な顔だち


降りてきた犯人は自分と同じぐらいの歳の女だった。

驚きとあまりの綺麗さに視線を外すことも出来ず見つめていると彼女はそれに気づいたのかニコッと笑って見せる。その美しさとは裏腹に目はなにか暗いものを見ているようなそんな気がした。

一瞬にも永遠にも思える彼女とすれ違った数秒間。僕の中に湧き上がる感じたことの無い気持ち。とても苦しいだけどウキウキとしたこの感覚。


呆然としている僕の横で同期のベルはベシベシと肩を叩く。

「おい!おい。ヤベェなあれ。めちゃくちゃ綺麗だ…あの子が人殺すとか有り得んのか?」

「…あ、ああ。あんな綺麗な子が人なんか殺すわけない…。僕は信じないよ…」


心はどこかに飛んで行ってしまったようで、僕は何も考えられなくなってしまった。その日のことはそれ以上思い出せない。


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