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リベニカの花瓶  作者: イソジン
1/5

知らない

三部作で書きます

一、彼は愛し方を知らない


二、彼女は恋を知らない



私が生まれた家は、家とは呼べないものだった。日常的な暴力とあいつの顔色を伺いながら過ごす日々。

食事と呼べるものもない。

「金がねぇ」

あいつがそう怒鳴ったあと一通り兄弟をぶん殴り、上の兄弟を連れていく。その兄弟は帰ってくることは無い。

その後帰ってきたあいつは酒瓶を持っていた。

自分が生まれた時には5人いた兄弟も今や1個うえの兄を残すのみだった。

しかし、その兄もさっき連れていかれた。

幼いながら次は自分だと思った。

だから殺した。あいつが兄の代わりに買った酒を飲んで寝ている時、首を包丁で切った。

一瞬、目が開き首を抑える。私を睨みつけパクパクとする。

好きとか嫌いではない。自分が殺されないように殺すのだ。1度使った刃物は軽かった。躊躇はない。

一刺し、二刺し、、、

床が真っ赤になるまで包丁を突き立て、気づいた時に目の前にあったのはただの肉片だった。



20年が経ち、私は奴隷商として成功した。昔の自分のような子供を買取、あいつのようなやつに金を支払う。

買い取る値段の10倍で売れるのでそりゃ成功する。

金を持つと世界は変わる。

今まで叩かれる私を見ても見向きもしなかった連中が、ごまを擦りながら寄ってくる。

金が全てじゃないなんて詭弁だ。好きな物はなんでも手に入る。なんでもだ


噂を聞いた。有名な名家に非常に美しい娘がいると、私は買い物をするふりをしてその噂を確かめに行った。


その名家はここら辺では聞いたことがない人がいないほど有名だ。

これも噂だが、元々は中央の都市に住んでいた貴族だったが身分を捨て、街の貧しい人々のために様々な支援を行っているらしい。偽善に反吐が出る。そんな善意は生まれてからこの方苦労を知らない奴にしかできないだろう。貧乏人をバカにしているに過ぎない。

ちょうどその家の前に着いた時、鐘がなる。

綺麗な格好の使用人が数人出てくると食べ物を配り始める。

鐘の音に反応したのか、その使用人の服には遠く及ばない、ボロ切れみたいな布を身につけた貧しい人がワラワラと湧き群がる。まるで公園の鳩だ。

その光景を見ていると1人、一際目立つ美しい少女がいる。

年齢は15、6だろうか。一目でわかる。彼女が例の美しい娘だ。

慈愛の表情、綺麗な髪、白い服に負けないほどの透き通る肌、それは異彩だ。

人間を見て初めて生唾を飲んだ。

「急がなくても皆さんの分ありますので」

声は遠くにいても届くくらい澄んでいる。

「ああ、欲しい」

気持ちの悪い声がする。

「ああ、手に入れたい」

気持ちの悪い衝動が駆け巡る。


ちらっと太陽に照らされ自分の横顔が映るガラスが目に止まる。

そこに映った私は自分を殴っていたあいつの顔によく似ていた


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