揺蕩う魔女
ねえ、貴方は自分が住んでいる世界が好きかしら?
今を楽しいと感じているかしら?
生きるという実感は湧いているかしら?
それらを判断するのは難しいわね。
だって感情なんて、その時その時で変わってしまうんだもの。
今目の前に咲く花はどう見えるかしら?
楽しい気持ちでいれば綺麗だと思うだろうし、疲れていれば癒しにも思えるのかしらね?落ち込んでいれば何も思うことなんてない、そんな風に感じられることもあるでしょうね。
勿論、違う事を考えている人もいるでしょうね。
だけどそれが「貴方がオカシイ」という証明になる訳ではないの。
千差万別、十人十色、種々雑多…勿論人でなくとも、貴方が認知していないだけで世界には五万と数多の種族が住んでいるわ。
貴方が知っている種族はどんな種族かしら?
エルフ?それともドワーフ?精霊?天使に悪魔…獣人に亜人かしら?機械や人形もいるわね。
他にも神々と呼ばれる存在や一括りに"魔族"と称される種族も存在するでしょう。
だから貴方の感覚が他と違っても、なんの問題も無いのよ。
貴方は貴方の為に、貴方という個性を持って生きればいい。
……え?さっきから何の話をしているのか?
ふふ、知りたい?
私の手には今、大きな本があるの。
この本は私の世界。
『楽園・フラウテス』と呼ばれる第二の人生を生きる資格を持った魂達が住む世界よ。
世界に生み落とされ、生きてきた故郷を離れ、それでも尚自分の願いを果たす為に、まだ生を渇望し、歩もうとする魂達の箱庭。
それこそ多種多様、種種の命達がそれぞれに思いを馳せているでしょうね。
今度こそ、明るい未来の為に。
今度こそ、自身の過去の為に。
今度こそ、己の欲望のままに。
……ねえ、貴方ならどんな願いを望む?
貴方は一度死んで生まれ変われるなら、聞き届けてくれる願いを持つとしたら、どんな願いをするのかしら?
私はね……。
……ふふふ、秘密よ。
私はオフィーリア。
この楽園を作り出した時の魔族の番人。
本があれば何処へだって迎えに行ってあげる。
楽園に興味があれば、第二の人生に希望を持つことができるのならば……ね。