第九十六話
我だ。
聖典・アポカリプスだ。
しずくとかいう小娘としおりとかいう小娘は我にめちゃくちゃな設定を書き足しまくり、我の作り出した世界、『ネバーエンディング』へと旅立っていった。
しずくという枷がなくなったカーミラとかいう、ちんちくりんの『吸血鬼』が何か我に書き記しているが、まぁさして気にする程の内容でもない。
おそらく、どこからどう見ても変態なおじさんや、語尾がうるさいおっさんを邪魔者として書き足しているのだろう。
カーミラが書き足すたびに、『どこに目をつけとるんじゃああああああああああああああああああああああ』だの。
『ただいま絶賛ワシが迷惑をこうむっとるんじゃあああああああああああああああああああああ』だのと叫ぶ柄の悪い男が生成されていく。
我の中の異世界を映し出す映像が日に日にうるさくなってしまってかなわない。
どうせならこの小娘も異世界に連れて行ってもらえれば、良かったのだがな。
人生うまくいかないものだな。我、人じゃなくて本だけど。聖典だけど。
そもそも問題、『ネバーエンディング』に物語を付け加えて『ワールド・エンド』にするというのも無茶苦茶な話だと我は思う。
キャスト達は終わらない物語の中を永遠にさまよい続ける存在なのに。
それを強制的に付け加えたページから終わりのある物語に話を作り替える。
そんな無茶苦茶なことふつうは考えたりしない。
いや、普通はそんなことできるはずがないのだ。
それが可能だったのはローレライ=S=レフィルが稀代の才能を持った『聖女』だったからだ。
……やることはめちゃくちゃだが、思いつくことは天才的だ。
普通、思いつかないだろう。こんなめちゃくちゃなこと。
そして、今現在、我の作り出したい世界の中はというと。
しずくの書き足した設定によって、物語の核と化した輝夜がのぞみたちと対峙していた。
このまま、輝夜が世界を諦めるのも良し、諦めずに足掻くのも良し。
我は、この異世界をあるがままに、続けようと思う。
それが、聖典・アポカリプスの作り出した異世界なのだから。
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