第九十一話
私は輝夜にお城の一室をあてがわれ、目立たないようにと洋服から和服へと着替えさせられた。
和服……うーん、昔、七五三とかで着たことあったけど着慣れないなぁ。
真のお嬢様ならこういう服も着こなすんだろうけれど、私はどうにも洋服やドレスの方が性に合っている。
「そーいやさー、あのマツタケ……じゃなかった、政宗ってどういう人なの? 知り合いみたいだけど」
茶室で茶をすすりながら私は輝夜に問いかける。
茶室から見える光景はいかにも日本庭園といった感じで、日本の古き良き観光地のようだ。
この辺の光景はきっと、しおりが想像した部分なのだろうなぁ。
「政宗君はそうだねぇ……。風紀の乱れを一切許さないが信条のいいお殿様、かな?」
「風紀の乱れを許さない……ね……」
それって百合百合なことは一切許しませんってことかな? かな?
そりゃそうだよね、あの厳格な性格のしおりが生み出した理想の将軍様像なのだから。
とりあえず、遥香とミィアは政宗とやらの元に置いておけば心配ないっちゃないのか。
それにしてもこの後どうするかなぁ。
「輝夜はこれから私がどうすればいいのか知ってる?」
「そんなこと、物語のキャストの一人のボクが知ってると思う?」
「ですよねー……」
まぁ期待はしていなかったけど。
アポカリプスはミィアの持ち物なのだし、そもそも問題そのミィア自身も自分の魔法に巻き込まれているあたり脱出方法を知っているのか微妙だ。
「ただ一つ言えるのは、今この異世界は『ネバーエンディング』の名の通り『終わらない物語』だったはずなのだけれど、『終わりのある物語』になりつつあるってことだね」
「え?」
輝夜の言葉に私は耳を疑う。
『ネバーエンディング』……それはミィアが発動した魔法の名前。
それが『終わりのある物語』になり始めている?
つまり、それは『ワールド・エンド』。
果てにあるのは『世界の終わり』。
終焉を迎える世界に生み出された彼らは世界が終焉を迎えたらどうなってしまうのだろう。
「もし、この『物語』が終わりを迎えたらあなたたちはどうなるの?」
「さぁ? 本来『物語』は延々と続いていくものなのだけれど、終わりを迎えたらどうなるのかなんてわからないよ」
そんな事を話していると不意に空間が揺らぐ。
私と姫は何が起こったのか分からずに周囲を見回すと。
「やあ。私はソーセージおじさんだよ」
変なおっさんが私たちの目の前に立っていた。
スルー……。
「ソーセージおじさんだよ」
ムシムシ。
あんなの見なかったことにしよう。
「ソーセージ、お・じ・さ・ん・だ・よ?」
「……」
「ソー・セー・ジ……」
「……無視できるかぁあぁぁぁぁあ!?」
私は変なことを言っているおっさんに向かって飛び蹴りを入れる。
「私は……ソーセージ……ばたり」
なんなのさ、いったい、この人は。
誰の仕業かは大体察しが付くけれど。
カーミラめ……こんなわけのわからんことをしよってからに。
私は変なおっさんを足蹴にしながら、こんなわけのわからん世界は終わりにしてしまった方がいいかもなんて思ったりした。
でもなぁ……輝夜みたいな良い人もいるからなぁ……。
悩ましい……。
縮小更新中ですー。




