第八十四話
屋敷の門の前に本が転がっていた。
ミィアという少女が持っていた聖典アポカリプスだ。
ボクたちが、駆け付けた時にはもうすでに、時すでに遅しだった。
「術者まで巻き込まれるとか何ともマヌケな話ですけどね。めんどくさい」
ローレライさんは聖典を拾いながらため息をつく。
「助ける方法はないんですか?」
ボクはローレライさんの持つアポカリプスに月並みな質問をしてみる。
「ないな。我の異空間結界は完璧だ。抜け出すスキはない」
「完璧。フフフフ、面白すぎて鼻で笑うのもめんどくさいですよ、アポカリプス」
「なんだと?」
ローレライさんはそういうと聖典『アポカリプス』の最後のページを開くとそこに、無数の白紙の紙を召喚し接着剤でつなぎ留め始めた。
「あのー、一体なにをなさってるんでしょうか? ローレライさん?」
アポカリプスはおそらく自分の身に何が起こっているのか分からず恐る恐る言葉を口にする。
「なに、簡単なことです。発動したのは最終頁『ネバーエンディング』。それを無効化するなら『ネバーエンディング』が最終頁にならなければいいだけの話です」
「おまえ、何かむちゃくちゃなこと言ってないか!?」
「黙りなさい、本風情が。本とは何か? 日々の記録が記録されていくものです。だから、ページが追加されても何ら問題がないはずなんですよ」
「で、その継ぎ足したページの続きはどこの誰が書くのだ?」
「私が書くと思っていますか?」
「デスヨネー……」
ボクはうんざりとした顔でローレライさんからページの継ぎ足された聖典アポカリプスを受け取る。
「とりあえず、毎日欠かさず日記のように書いてください。そうすれば、そのうちのぞみ様たちの脱出の糸口が見えてくるはずです。めんどくさいでしょうけど」
因みに聖典を開いている間、先輩たちの行動は本の上に現れる球体に映し出されるので様子がまるわかりである。
今はなんか中世の田舎町で先輩たちは頭を抱えて苦悩してた。
「それでは、皆さんで、のぞみ様たちが無事帰還できるように物語を紡ぎましょう!! 私はしませんが」
あ、はい、そうですか。
まぁ、あのめんどくさがりのローレライさんが、段取りだけつけてくれただけでも御の字かな。
ボクはそう思うことにした。
縮小更新中です。




