第七十七話
ひらひらと。
窓の外で黄色い葉っぱが舞っている。
それを見ているだけでもう秋も深まってきたのだなぁと思い知らされる。
そんな光景を背にローレライさんは優雅に遥香が淹れた紅茶を啜っていた。
私も向かいの席で紅茶を啜る。
「で、話って何でしょう? ローレライさん」
「いえ、こんなに楽しちゃってていいのかなーなんて思いまして。めんどくさいことは嫌いなんで、何もないならないでいいんですが」
「はぁ……。まぁ何かあった時に働いてくれればいいですよ?」
ローレライさんが所属していた組織が私たち『吸血鬼』をいつ消しに来るかわからないし。
ローレライさんはそのための強力な用心棒だ。
「その何かがあるかもしれないから、めんどくさいんですよね」
ローレライさんはため息をつきながらそんなことを告げる。
まぁ普通、何かありますよねー。
『眠り』に落とせってと依頼した『吸血鬼』に当の『聖女』が雇われるということになっているのだから。
組織としてはこの状況は面白くないはずだし、次の手を考えているのかもしれない。
「とはいえ、人材不足の組織ですから、次の手は分かってはいるんですが。めんどくさいことに」
「そうなんですか?」
「はい、たぶん私の知人がめんどくさい刺客として送り込まれてくるでしょうね」
「強いんですかその人?」
「どうですかね? お互い本気でやりあったことないですからね。めんどくさかったですし」
紅茶を啜りながらローレライさんはゆったりとお菓子を頬張る。
「あのー……勝てる見込みは?」
「一応ありますよ。かぎりなくめんどくさいですけど」
うーん……。
自分たちの命がかかってるのにめんどくさいで済まさないでほしいなーとか。
決して安くはない給料を払っているんだから、働く時くらいしっかりしてほしいなーとか、
思ったりもしたけれど、まぁその考えも、ローレライさんには筒抜けなんだろう。
『聖女』は思考を読むことができるらしいし。
「まぁ、のぞみ様は安心してて良いですよ。そんなめんどくさいことにはならないと思いますし」
「そうですか……」
優雅に午後のひと時を過ごす『聖女』を見つめながら。
私はこれが堕落してる『聖女』なんだなぁと見つめるしかなかった。
縮小更新中です。
それでもこつこつ話を続けます。




