第七十一話
それは遥香に襲われた日のことだ。
あの時、しずくちゃんの能力は飛躍的に上昇していたんだっけ。
「つまり『眷属』と契ることで『存在』を回復させることができるってこと?」
「正解です。のぞみ様。というわけで、思う存分、百合百合しちゃって『存在』を回復させてください」
「それはそれで嬉しいんだけれども……それじゃカーミラはどうなるの?」
「『眷属』のいないカーミラは諦めてください」
「いやいやいや、それは冗談ですよね? ローレライさん」
「いえ、普通に真面目に言ってますよ。冗談なんてめんどうくさい」
はいはい、そう言う人でしたね、あなたは。
とりあえず、私達が『存在』を回復できる方法が見つかったのは良いことだけど。
カーミラだけは『存在』を回復できないのは……。
うーん……私としずくちゃんの組合せで『存在』が回復できるのなら、カーミラとしずくちゃんの組合せでも行けるのでは……。
「のぞみ様。この行為はあくまで主従関係がないと成り立ちません。カーミラとしずくではダメなのですよ」
私の思考を読んだかのような適切な解説に私はぐんにょりする。
そうしたらカーミラ、完全に積んでるじゃないか。
「カーミラは『始祖』ですからね。それ相応の『従者』が必要なんですよ。めんどくさい話ですね」
ローレライさんの言葉を聞いてカーミラは無言で席を立ち自分の部屋へと戻って行ってしまった。
カーミラはしずくちゃんを慕っているけれども、しずくちゃんはカーミラに対しての従者ではない。
あくまでしずくちゃんは『姉』ポジなのだ。
私にとってカーミラは小憎たらしい幼女『吸血鬼』だけれども。
でも、それでも……。
「しょうがないなぁ……」
「また、何か、ろくでもない事を考えてますね? お嬢様」
遥香の言葉に、私はフフリと笑みを浮かべながら。
「まー、私は、自分がやりたいことをやるだけだよ?」
「しょうがないですね。今回ばっかりは大目に見ますよ」
「お互いに、ね」
そう言って私と遥香はクスリと笑みを交わした。
相変わらず、私は馬鹿なんだなぁと思う。
けれども、それが私なのだからしょうがない。
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