第六十九話
真夏の暑い日差しも過ぎ去り、秋の涼しさを感じる日々。
相変わらず私の周りは騒がしかった。
「そのリモコンよこせなンだわ。吸血鬼ぱーんち!!!」
「小賢しいですよ。この幼女『吸血鬼』」
私達が学園から帰ってくると居間では幼女『吸血鬼』と元『聖女』がぎゃーぎゃーやりあっていた。
カーミラがローレライさんに殴りかかるもローレライさんの周りに張られているよく分からない何かに阻まれて手の先すらもかすりもしない。それどころか光る紐で拘束されていた。
どうやらいつものようの居間のテレビのチャンネル件争いをやっているらしい。
「あーもう。こんなくだらない事で『存在』を削らないで欲しいんだけど……」
ローレライさんの力もどうやら自身の『存在』を削って発動させているそうだ。
その威力が高いのは『聖女』の資質たる所以らしいのだけど。
私はスタスタとローレライさんの背後に歩いていきため息をつきながらローレライさんの手からリモコンを取り上げる。
「のぞみ!! おまえもカーミラのじゃまするのか?」
「のぞみ様。私は悪くないですよ。この幼女『吸血鬼』が悪いのです」
「はいはいはいはい。だいたい事情は分かってるから」
ローレライさんがテレビをポテチを食べながら見ていたら、後から起きだしてきたカーミラがチャンネルを変えようとして揉め事になったんだろう。
この二人がリモコンもって争っているのは大抵こういう理由なのだ。
二人の部屋にはちゃんと自分達用のテレビを設置しているはずなのだけれども。
何故か二人は居間で間食しながらテレビを見たがるのは謎すぎる。
とりあえず。
「居間のテレビは交代で使ってください。そんな無駄な小競り合いで『存在』を消費しないでくださいね」
「無駄とはなんだ、のぞみ。これはこいつとカーミラとの聖戦なンだわ!!」
「交代で使うなら私は構いませんよ。癪ですけど。めんどくさいですしね」
そんな言葉が返ってくる。
カーミラのことはスルーしておくとしてローレライさんに任せておけば大丈夫だろう。
「それはそうとのぞみ様。『存在』の事でお話が」
「え? 何か分かったの?」
ローレライさんは名目上、私達の『存在』を回復させる為に働いてもらっていることになっている。
あくまで名目上であって、情報が手に入らなければそれでもいいや的なノリだったのだけれど。
「そうですね。分かったような。分からなかったような。そんな感じですね」
「んー……それじゃ晩御飯食べた後に『吸血鬼会議』するからその場で聞くよ」
「承知しました」
ローレライさんは軽く私にお辞儀をすると拘束していたカーミラを解放し自室へと戻って行った。
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