第六十八話
「なんで、コイツが屋敷にくるンだわ!」
形式的な契約の手続きを終えて屋敷の居間にローレライさんを連れて行くと、真夏の大冒険に興じていたカーミラと出くわした。
「なんでとは失礼ですよ、幼女『吸血鬼』。私はこの屋敷に雇われたのです」
「雇われた? つまり召使いってことか? ならカーミラの下僕なンだわ」
カーミラは机の上に乗って小さな胸をはる。
「いえいえ。私が雇われたのはのぞみ様のみ。他の方のいう事は聞きませんよ、めんどくさいですから」
「とまぁそういうことなんで、お互い仲良くして欲しいなぁ……と」
私はローレライさんとカーミラの間に入り仲裁を試みる。
しかし。
「そもそも、おまえがカーミラの数百年分の『存在』をふっ飛ばさなければ苦労はなかったンだわ」
「それはまぁ上司に怒られるのも嫌でしたし。めんどくさかったんですけど」
「めんどくさいで『存在』をふっとばされたカーミラの身にもなれなンだわ!!」
「もう過ぎた事ですし、不毛ですからやめませんか? めんどくさいですし」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬ」
お互い険悪な雰囲気を残して、二人は居間から出て行ってしまう。
「よかったんですか? お嬢様」
私の傍に黙って付き従っていた遥香が問いかけてくる。
「まー。しょうがないんじゃない。ローレライさんを雇わないと私達は『眠り』に堕とされてたんだし」
「それはまぁ……そうですね」
それに、いつ『聖女』並みの『存在』が『吸血鬼』の私達の元にやってくるとも限らない。
そんな『存在』に怯える位なら『聖女』を味方にして子飼いにしておくのも悪くない手段だと思う。
これでこの屋敷には『吸血鬼』*3、『眷属』*2、『聖女』*1……と。
よくもまぁこんなに人外ばかり揃ったものだと思う。
もしかして私達がその気になれば国家転覆とかいけちゃうんじゃないだろうか。
やらないけれど。
まぁこれからもこの屋敷は忙しない毎日に悩まされるのだろうなー。
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