第六十七話
「面白くないんですよね」
開口一番出てきたのは不機嫌そうな言葉だった。
「何が面白くないっていうと。残り数年まで減った『存在』を奪い合うどころか、手に手を取りあって仲良くしましょうっていう所が、面白くないですね、はい」
「それのどこが悪いんですか?」
あなたはカーミラの封印を放棄したのだから、別にカーミラがどう扱われようが口を挟まれる筋合いはないのだけれども。
「問題、大ありですよ。めんどくさいことに。私はまだカーミラを封印できていないのかと上司から矢のように催促がきますし」
「それ、自業自得ですよね?」
ローレライさんが遥香と連絡を絶たなければこんな事にはなっていないのだから。
「そうですねー。そうともいいます。だから、あなた達、『眠ってもらいません』かね?」
「は? なんでいきなりそんな事になるんですか?」
「上司にあなた達の事も報告したんですよ。そしたら速やかに『眠らせろ』だそうです。めんどくさいですよね」
まずい。
遥香の話によるとローレライさんは、たった一言の呪いでカーミラの数百年分の『存在』を無かったことにしたという。
今の私や遥香がそんなものくらったりしたら確実に『眠り』に堕とされる。
「ローレライさんは何で『聖女』なんてやってるんですか?」
話題を変えて時間稼ぎを試みることにする。
「そうですね、めんどくさい話ですが、それが一番お金になるから。ですかね」
ほうほう、お金ときたか。
「ちなみに年収おいくらですか?」
「えー、それ聞いちゃいますー? ちょっと減給されてるんですが年収1500万で、公務員待遇です」
ふ、そうですか。1500万。楽勝。
「ならば私と契約しましよう。年収2000万で衣食住三食昼寝付きで入来院家に雇われませんか?」
「え、なにその好物件。逆に怖い」
「身の回りの世話なんかをしてくれるメイドもつけちゃいますよ、どうです?」
「ぜひぜひよろしくお願い致します、お嬢様!!」
『聖女』の掌が猛スピードのドリルのように翻った。
ふ……ちょろい。
所詮、世の中お金が全て。
生きるも死ぬもお金が全て。
世知辛い世の中だなー。
「それじゃ、私、退職届けだしてきますね、めんどくさいですが」
「あ、はい。よろしくお願いします。退職してきたら私の屋敷を訪ねきてください。
そうして、ローレライ=S=レフィルは私の屋敷の雇われ『聖女』になった。
縮小更新中です。
それでも楽しんでいただければ幸いです。