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『吸血姫様』は百合百合したいっ!!  作者: 牛
第二章 『百合百合』させて?
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第六十二話

 私は焦っていた。


 原因は、カーミラが夜な夜な『存在』を啜りに外出していることもそうだが。


 あれだけ大口を叩いていたローレライさんと全く連絡が取れなくなってしまったからだ。


 始めのうちはまたいつもの面倒くさがりな性格で先延ばしにしているのかと思ったのだけど。


 それにしては長すぎる。


 あああああああああっ!


 もう、あのめんどくさがりの『聖女』様はいつになったら連絡をよこしてくれるのか。


 ローレライさんとの連絡が途絶えて早二週間が経とうとしている。


 夏の日差しは柔らかみを増し、そろそろ学園も始まる時期だというのに。


 そろそろ街にはカーミラ好みのJK達が闊歩するようになってしまう。


 そうなったらカーミラは今よりももっとたくさんの人々の『存在』を啜ることになるだろう。


 それだけは阻止しなければならないのだけれど。


 しかし『存在』が残り三年弱になったとはいえ、カーミラの『始祖』の能力は厄介すぎる。


 相変わらず私はカーミラの『魅了』の音色に操られることも少なくない。


 幸い、私はカーミラから『存在』を啜られることはないのだけれど。


 なんでも私はカーミラのタイプではないらしい。


 ほっとしたような、地味にイラっとくるような話ではあるが。


 カーミラのタイプはしずくのような白髪白磁の少女なのだとか。


 日本にはそんな子めったにいませんけどね。


 はー、ほんと、いつになったらローレライさんから連絡来ないんですかね……。


 私は終わり行く夏の日差しを見つめながらそんな事を考えていた。



 ―――



 飽きましたね。


 公園の片隅で凶悪な結界の呪法を組み上げながら、『聖女』はそんな事を考えていた。


 だいたいなんで、下賤な『吸血鬼』達の為に『始祖』を封印しなければならないのか。


 いやまぁ、元々は彼女自身ががやらかしたへまが原因なのだけれども。


『聖女』という肩書ではあるけれど、ローレライは人のために働くという事が何より嫌いだった。


 しかもその事で理を得るのが敵対する『吸血鬼』。


 ので、カーミラを封印すること事態が非常にめんどくさくなったのだ。



「『始祖』の『存在』は残り少ないようですし放っておいても良いんじゃないですかね。だいたい私、休暇中ですし。めんどくさいことしなくてもいいのではないですかね」



 そんな事を自分に言い聞かせて、組み上げていた結界の呪法を途中で霧散させ、途中だった日本の休日をエンジョイすることにした。


『聖女』モード、超速終了のお知らせだった。


 ローレライ=S=レフィルは稀代の才能を持つ『聖女』だった。


 しかしとてつもなく、めんどくさがりで。


 なおかつ自分の理にならない事には、意欲がわかない。


『聖女』としての力は他人の為には使わず、自分の為にしか使わない。


 そんな堕落した『聖女』なのである。


 ピロンと携帯のメールボックスに着信が一通。


『吸血鬼』のメイドさんからの『始祖』封印の督促だ。


 けれど、ローレライはメールを開くこともせずに。


 そのメールをゴミ箱送りにしてしまう。



「私は私の為にしか、動かないんですよ。『聖女』なんてめんどくさいことしたくないんです。期待させちゃってごめんなさいね」



 クスクスと微笑みながら軽い足取りで、結界が霧散した公園を後にする。


 今日は銀座でブラブラしよう。


 どこかの運動界隈の会長のように。


 何故か彼女は銀座をブラブラすることに生きがいを覚えていた。



「さーて、今日も日本観光を楽しみますかー」



 ―――


 ―――『眠り』は嫌だ。


 深い『眠り』はカーミラ自身から『記憶』を奪い去ってしまうから。


 丸い月をの下、ふよふよと空をさ迷いながらカーミラは『存在』を奪えそうな乙女を探す。


 深い『眠り』から覚めた時、カーミラは自分自身が何という名前の『吸血鬼』であることすら曖昧になっていた。


 彼女をの『目覚め』を待ち望んでいた『眷属』達に聞いても、その記憶はあやふやで。


 ある『眷属』は彼女は『マーカラ』だと言った。


 またある『眷属』は彼女は『ミラーカ』だと言った。


 そして、またある『眷属』は彼女は『カミル』だと言った。


 ようするに『主』の『目覚め』を待ち望んでいた『眷属』達ですら、深い『眠り』の中で『主』の『名前』すら失ってしまったのだ。


 だから彼女は『カーミラ』として誰でもない自分の為に生きる事にした。


 自分の為に、自分好みの少女を見つけ、百合百合して生きる事にした。


 幸い、『眠り』が深かったのもあって、『存在』は数百年分あったので、能力は使いたい放題。


 そのはずだったのに。


『聖女』に全てを駄目にされてしまった。


『聖女』―――アレは一体何なんだ。


 ただの人間のはずなのに『始祖』の力が通じないどころか『存在』を数百年分一瞬で無に還された。


 もう二度と『聖女』に近づいてはならない。


 けれど、何故か『聖女』という言葉がカーミラの心の奥底でしこりのように気になって仕方がない。


『聖女』は『始祖』にとってどういう存在なのか。


 自分自身に問いかけても答えなど出るはずがなくて。


 カーミラは暗がりを歩いていた少女をみつけ、『始祖』の音色を使って操ることにする。


 音色を聞いた少女は目も虚ろに幽鬼のように操られカーミラに頭を垂れ首元を差し出してくる。


 少女の体に牙を突き立てると、カーミラは彼女の呻き声を聞きながら、カーミラは『存在』と生き血を啜っていく。


 少女の体をまさぐりながらカーミラは柔らかな肢体を堪能する。


 やはり、『存在』をすするなら少女の体が一番だ。


 そんな事を考えながら。

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