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『吸血姫様』は百合百合したいっ!!  作者: 牛
序章 『吸血姫様』は―――
6/100

第六話

 ジリリリリリリリリ。


 目覚ましの音が鳴り響く部屋の中。


 ベッドの上で私は夢見心地でぼんやりと虚空を見つめていた。


 昨日のアレは夢だったんだろうか。


 しずくちゃんのスレンダーな腰、やわらかなお尻から太腿。


 自分の手に残るしずくちゃんのやわらかな肢体の感触を思い出そうとする。


 わきわき……。


 ……柔らかかったな……。


 うへへへへへへへ……じゅるり。



「何を朝っぱらから妄想してるんですか、この色ボケお嬢様」



 声と共にスパンと小気味の良い音を立ててスリッパで叩かれる。



「とっても痛いんだけど……」


「お嬢様が朝からキモいことしてたからついつい手がでちゃいました、ホホホホホ」



 このメイドは……。


 いっぺんそのでかい乳、思う存分揉んでやろうか。


 でも昨日しずくちゃんの控えめなお胸もめちゃくちゃ揉んだけどね。


 あー……あれは良かった。


 うん。


 とっても気持ち良かったな……。



「早くしないと学校、遅刻しますよ?」



 く……時間さえあればそのフカフカを揉みまくってあげるのに。


 今日もこの生意気メイドのフカフカお胸を揉むのはやめておいてあげよう。


 今の私はこの手に残る昨日のしずくちゃんのフカフカのお胸で十分満足しているのだ。


 でもいつの日か思う存分、そのフカフカお胸を揉んであげるから覚悟しとけよ?


 とりあえず今日も元気に一日がんばりますか。


 と、意気揚々と家を出たのは良いのだけれど。


 その日は何だか体の調子がいまいちしっくりこなくて保健室のお世話になってしまった。


 これはアレか。


 月一のアレだろうか。


 私はそこまでキツイ方ではないのだけど、遥香は月に一回はしんどそうな顔をしている日がある。


 しかし今日の体のしっくりとこなさ加減はそういうのとはちょっと違う気がするんだよなぁ……。



 カチカチカチ……。


 秒針を刻む音が保健室に響く。


 ガラガラガラガラ。


 授業中だというのに保健室の扉が開く音が響く。


 私と同じく体調を崩した子でもやって来たのだろうか?


 かと思うとシャッと私のベッドのカーテンが開かれる。


 白衣を着た保健委員の若先生が私の顔を覗き込むと。



「入来院さん。御来客ですよ」



 先生の後ろからひらひらと手を振る少女の姿。



「へ……? し、しずくちゃん?」



 思いもよらない探方者に驚いたのもあったけど。


 なんでこんな時間にしずくちゃんがやってくるのかという疑問や、昨日の今日であんなことをしてしまったしずくちゃんの顔を正面から見るのが恥ずかしかった。


 たぶんきっと私の顔は真っ赤に火照ってしまっている。



「先生、ちょっと先輩と二人だけでお話ししたいことがあるので、席を外していただけますか?」


「え? それはちょっと……」



 しかししずくちゃんは尚も食い下がる。


 しずくちゃんの顔を横目で見ていた私はしずくちゃんの眼が妖しく深紅に光ったように感じた。



「……はい。じゃあしばらく保健室開けるから……」


「お願いしますね」



 そう言ってフラフラとおぼつかない足取りで保健委員の先生は保健室から出て行ってしまった。



「何……今の……」


「それも含めて先輩とお話に来たんだよ」



 言いながらしずくちゃんはニッコリと微笑む。


 そして私の寝ているベッドの横の椅子に腰かけ何から話そうかと思案した後。



「結論から言うと先輩は吸血鬼……。そしてボクはその眷属。で、今のはその力の一端、『魅了』の力」



 しずくちゃんは単刀直入にそう切り出した。


 え……いきなり何言ってるのこの子。


 まさかの電波ちゃん?



「先輩がおもいっきり失礼な事考えてるのはわかる。けどこれが『現実』だよ」



『現実』って言っても……。


 吸血鬼……。


 吸血鬼かぁ……。


 そう反芻し吸血鬼に関する知識を検索する。



「……吸血鬼ってアレでしょ、太陽とかニンニクや十字架に弱いっていう」


「そう。その吸血鬼」


「でも私はこのとおり太陽の下でもピンピンしてるんだけど」



 ニンニクマシマシラーメンだって食べられるし、十字架だって見るのは平気だ。


 というかこの学園自体カトリック系だからミサの時間もあるんだよね。



「そもそも吸血鬼にそんな弱点なんてないよ」



 しずくちゃんはクスリと笑いながらそう告げる。



「眷属のボクだって、そんなもの怖くもなんともないしね」


「眷属……?」


「そう眷属。分かりやすく言うと吸血鬼の部下その一みたいなもの」


「ふーん……」



 とりあえず、しずくちゃんが普通じゃない子だというのは理解した。


 ちょっとどころじゃない電波ちゃんだという事を。


 それにしても吸血鬼……。


 私って吸血鬼だったんだー……。


 って、そんな事を言われてもはいそうですかと受け入れられる訳もないのだがー……。



「私は今まで普通の人間だと思って生きてきたんだけど」


「先輩がいつどこで吸血鬼になったのかは、ボクにも分からない。吸血鬼を増やす方法は眷属のボクには知らない事だからね」


「それじゃ私が吸血鬼だってなんで分かったの?」


「まずはその牙」



 ……まぁ確かに普通の人間にはこんな血を啜る牙なんてついてないよね。


 昨日、家に帰って鏡を見たら上の八重歯が二本突き出ててちょっと慌てたもの。


 今まではそんなに目立つような八重歯ではなかったはずなんだけどなぁ。



「そしてその瞳。先輩の瞳には『魅了』の力が宿っている」


「え……そうなの?」



 私の瞳に『魅了』の力なんてあったらハーレム生活一直線じゃん。


 これは天が私に与えた百合百合ハーレム生活への第一歩かな?


 今度クラスメイトに使ってみよっと。



「あとは何よりボクの眷属としての勘かな」


「勘って……」


「吸血鬼や眷属は同族に会うと血が騒ぐんだよ。ボクが先輩を見た時にときめいたみたいに」



 ときめいた……。


 ときめいたって……。



「もしかして私がしずくちゃんを始めて見た時に『恋』をしたような感情を抱いたのって……」


「それはたぶん吸血鬼と眷属で惹かれあったのかもしれないね。でも―――」



 しずくちゃんの最後の言葉はよく聞きとることはできなかったけれども。


 何だ……。


 しずくちゃんは運命の人だと思ったのに。


 人生で初めて『恋』をしたと思ったのに。


 いや、そんなことを聞かされた今でもしずくちゃんは運命の人だと感じているけれども。


 でもそれが自分の体に流れる吸血鬼の血によるものだとしたら残酷だ。


 うーん……まぁ良いか……。


 この胸の高鳴りは自分の意志だという事にしておこう。


 今のところはそうしておこう。



「それで。他に聞きたいことはあるかな?」



 しずくちゃんは一息ついてニコニコと笑顔を振りまきながらベッドの横の机に頬杖をつく。


 く……。


 やっぱりこの表情、好み過ぎる!


 しずくちゃんは私の好みド直球ストレートなんだなと思い知らされる。



「えーっと……私の身の回りで起こってること。あれってどういうことなの?」



 とりあえず、私の身の回りで起こっている理解不可能な現象について訊ねてみる。


 今、私のクラスの『長与みのり』という人物が存在しないことになっている。


 その代わりに『指宿みやび』という人物が存在している。


 それが何を意味しているのか。


 しずくちゃんは笑顔から一転、一つ小さなため息をついて答えを紡ぐ。



「吸血鬼やその眷属に殺された人は、存在そのものを消し去られる。そしてその代わりになる存在が生まれる。それが偽人(ぎじん)


「……つまり、『長与みのり』ちゃんは存在を消されて、『指宿みやび』という偽人(ぎじん)が生まれたっていう事?」


「簡単に言えばそういうことになるね。まぁ偽人(ぎじん)とはいうけど、大して害はないよ。ただ、そこにあるだけの存在。消えた人間の代わりに存在しているだけの存在」


「……でもそれって……」


「うん。自分の意志なんかほとんどない。消え去った人間の陽炎のようなもの。それは吸血鬼や眷属の操り人形。そんなの人間っていえない」


「そう……だね……」



 そんなの人間なんて呼ぶことは出来ない。


 出来やしない。



「黒衣の少女……『しおり』は何故かこの学園で偽人(ぎじん)を増やし続けている。ボクはそれを止めるためにやって来た」



『しおり』……。


 しずくちゃんと瓜二つの顔を持つ少女……。


 二人は何か関係があるのだろうか?


 そう問いかける前に。



「先輩は気付いてる?」



 逆にしずくちゃんに問いかけられる。



「何を?」


偽人(ぎじん)が増えているのは先輩の周りばかりだっていう事を」



 しずくちゃんは私の両目を見つめながら悲しそうな瞳でそう告げる。



「……何それ」



 それってつまり……私が知らないうちに私の周りは偽人(ぎじん)だらけになってたってこと?


 私が知覚できているのが『長与みのり』ちゃんだけで、他にも……他にも犠牲者が……。



「うん……ボクが知ってるだけで十人は超えてる」


「そんなにっ!?」


「だからボクに一つ考えがあるんだ」


「考え……?」



 私はしずくちゃんのその提案に驚くと共に、歓迎するほかなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 吸血鬼と百合の組み合わせはなかなか面白かったです。
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