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『吸血姫様』は百合百合したいっ!!  作者: 牛
第二章 『百合百合』させて?
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第五十一話

「ふむふむ。バカンス……ですか」



 真ん丸お月様が空に登って来たころ。


 私と亜麻色の髪をした外人女性は二人その辺にあった公園のベンチに座って話をしていた。



「そうなんですよー。ちょっと私がへまをやらかしたからって雑務処理につぐ雑務処理。来る日も来る日も残業残業残業―――」


「はぇー……」



 女性の愚痴に相槌を打ちながら私は、社会人って大変なんだなーとか思ってしまう。


 こういう人のことを世の中では社畜というんだろうなぁ。



「だから、仕事ばっかりの毎日が嫌になって、上司のサインを真似して休暇申請出して高飛びしてあげたんですよ。あははは」


「え……?」


「いやー、日本って最高ですね。権力に対して、とっても忖度してくださるし。このまま永住しちゃいたいくらいですよ」



 前言撤回。


 この人、めちゃくちゃ駄目な大人の人だった。


 こんな大人にだけはならないようにしよう、うん。



「とりあえず、あなたが日本にバカンスに来ただけでよかったです」


「そうですねー。私はお仕事上、『吸血鬼』の事は放っておいたらまずいんですよ」


「はぁ……お仕事ですか……」


「そうなんです。私、これでも『聖女』を生業としておりまして。って言われても分からないですよね。『聖女』って言われても」


「んー……まぁ『聖女』っていうと職業ってイメージはないですね」



 私の肩の上に乗っているしずくちゃんもうんうんと頷いている。



「『聖女』という仕事があるんだなぁって思ってくださればいいですよ。詳しい事を話すのは色々めんどうくさいので」



 それにしてもこの人と話をしていると、事あるごとに『めんどうくさい』というフレーズがでてくるなぁ。


 これは相当な面倒くさがり屋さんなのかもしれない。



「それはそうと、『吸血鬼』さんのあなたは何で私を探しておられたのですか?」



 今度は自分が探りを入れる番だとばかり、女性は私に問いかけてくる。



「んー……まぁ、『人間』であるはずのあなたに正体を看破されたことが一つですね」



 そんなに自分達は『吸血鬼』然としているのか心配になってしまう。



「ああ。その点ならご心配なく。『聖女』は特別な『存在』なので」



 その言葉に内心ほっとしながら、『聖女』という『存在』に疑念が湧いてくる。


『聖女』。


 一般的に、神の恩寵を受けて奇跡を成し遂げたとされたり、社会(特に弱者)に対して大きく貢献した、高潔な女性。


 ここで彼女の言う『聖女』は前者を指すのだろうか?


 つまり何かの奇跡的な力を振るう者。



「では、何故、あなたは『吸血鬼』というものが『存在』しているのを知っているのですか?」



 これが第二の疑念。


 私の予感が確かならば。


 この女性は。


『聖女』という『存在』は。



「少しおしゃべりがすぎましたかね。これが上司にバレると色々めんどくさいことになるのでお話はこの辺にしましょうか?」



 私の質問に対してあはははと笑みを浮かべながら。


 しかしその瞳は笑っていない。


 そう。


 きっと『聖女』という『存在』は『吸血鬼』の敵なのだ。


 だからあの時、彼女はこういったのだろう。


『そんな汚らわしい『存在』と一緒にしないで頂けますか?』と。


 私達はこの女性には関わってはいけないのだろう。


 彼女がバカンス中で本当に良かった。



「さてさて。私はこれから銀ブラとでもしゃれこむつもりですが。あなたはもうお帰りになった方が良いですよ」



 この人、本当に仕事が嫌になってバカンスに来ただけなんだなぁ……。


 そんな事を思いながら。



「私達ももう帰りますよ。まだ学生なんで」



 私はペコリとお辞儀をして家路につこうとすると。



「あ、そうそう。いないとは思いますが、念のために聞いといたほうが良いですね。あなたに金髪で朱色の瞳の『吸血鬼』のお友達はいないですか?」



 そんな事を背後から問いかけられた。


 ―――金髪で朱色の瞳の吸血鬼―――?


 ―――それって―――。



「あ……えっと……いない、ですね。私の知ってる『吸血鬼』は遥香……昼間に一緒に居た子ぐらいです」



 私は振り返らずに咄嗟に口から出まかせを言う。


 たぶん、バレてはいないと思う。


 もう視線は合わせていないし。



「今はバカンス中だったんじゃないんですか?」


「いやー、これでも『聖女』なので。仕事の事も少しは頭の片隅にあるんですよ? すごくめんどうくさいんですけど」



 めんどうくさいなら聞かなきゃいいじゃないか、本当に。



「それじゃ、私はこれで」


「はい、お引止めして悪かったですね。お優しい『吸血鬼』さん」



 私はその言葉を背にパタパタと走り始めた。



「しずくちゃん、あの人、つけてこないか見張ってて」


「うん、わかった」



 しずくちゃんが後方を目視しながら私は家路への道をわざと遠回りして帰ることにした。


 はぁ……。


 カーミラ……あの子はいったい何をやらかしたっていうんだろうか。


 とりあえず、カーミラは家から出さない方が良いっぽい。


 外出する時はウィッグやカラコンつけさせなきゃなぁ……。


 そんな事を思いながら。


 私が屋敷へと帰り着いたのは、真ん丸のお月様が真上に登ろうとしていた時間だった。


 屋敷に辿り着いた私を待っていたのは遥香のお小言だったのは言うまでもない。

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