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『吸血姫様』は百合百合したいっ!!  作者: 牛
第二章 『百合百合』させて?
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第五十話

 世の中には『ステイホーム警察』なるもの達がいる。


 誰も頼みもしないのに、マスクをしていなかったら、マスクをつけなさいだの言われたり。


 ちょっとその辺を出かけようかなと思って出かけたら、『今は必要な外出? 違うでしょ?』とか問い詰められたり。


 屋外で集団で集まっていたら、『ステイホーーーーーム!!!』と叫びながら追いかけまわしてきたり。


 そんな傍迷惑な『存在』達がいたりするのだ。


 非常に残念なことに。


 そして今、夜の闇が迫る黄昏時。


 入来院のぞみこと私はその非常に残念な『存在』と邂逅していた。


 元々はそんな『存在』に会う為に、こんな時間に出歩いていた訳じゃないのに。


 私が会いたかったのは長い亜麻色の髪の外人。


 先刻出会った『人間』のはずの女性の事がどうしても気になってしまったのだ。


 カーミラもしずくちゃんと一緒に出かけるなら行くとか喚いていたけれど、邪魔なので置いてきた。


 ―――比喩抜きに本気で邪魔くさかったので。


 それはそうとして、今の状況である。


 これもまた非常に面倒くさい。


 どうしたものかなと、その『ステイホーム警察』の表情を伺っていると。


 思いっきり睨みつけられてしまった。



「ほら、キミ!! 手を出してっ!!」



 私はしょうがなく手をさし出すと『ステイホーム警察』はその手に持っていた消毒スプレーをシュッシュと振りかける。


 うう……なんでこんなことに。


『ステイホーム警察』に絡まれてる場合じゃないんだけどなぁ。



「で? 何でキミはこんな時間にマスクもつけずに何で出歩いてるの? もう夜だよ? わかってる? 今は緊急事態宣言中っ!!」



 はいはいはいはい。それはもう分かってますとも。



「はい、マスクして、マスク!!」



『ステイホーム警察』は鞄から取り出した新品の不織布マスクを私に手渡す。


 はいはい、マスクでもなんでもつけますから。


 だからもう、私を解放してーーー!!



「ほら、それじゃもう家に帰る!! いいねっ?」


「はーい……」



 私は心の底であっかんべーをしながら『ステイホーム警察』と別れ、長い亜麻色の髪の外人を探し始める。


 うーんやっぱりもう宿泊先かどこかに行っちゃったのかなぁ……。


 そう思い始めて首を捻っていると。



「ステイホーーーーーームっ!!!」



 そんな事を叫びながら、私に向かって『ステイホーム警察』が猛スピードで疾走してきた。


 なんなの、なんなの、なんなのーーーーー!!!


 もうやだ、おうち帰るーーー!!!


 私は涙目になりながらお屋敷の方に向かって駆けだすのだった。



「はぁ……はぁ……あんなのがこの日本に存在するなんて」


「正直、ああいう人の方こそ、ステイホームしてた方がいいよねー」



 しずくちゃんはふよふよと私の顔の横を漂いながら苦笑いをする。


 はぁ……まったくもってその通りだよ。本当に。



「あら、またお会いしましたね? そこの『吸血鬼』さん」



 背後から不意に声をかけられる。


 私はその声に振り返ると。



「あっ! あーーーーーっ!!」



 と、一際大きな声を出して声の主を指さす。


 そこには亜麻色の髪をした外人の女性の姿。


 見つけた!! 変な『存在』に絡まれたけどやっと見つけることができた。



「それはそうと。日本では、『ステイホーム』ですか? こういう方が流行っているのですか?」



 なんてことを言う片手には私を追いかけてきていた『ステイホーム警察』の姿。


 なんか泡拭いて昏倒してるんですけど―――。



「は……?」



 私が戸惑うの露知らず、女性は目を回している『ステイホーム警察』をその辺の芝生にぽいっと投げ捨てる。


 べしゃり。


『ステイホーム警察』は頭から芝生に落下し、きゅうと倒れ込んだ。


 ちょっとおおおおおおお!!!



「あなたそれ、犯罪だからああああっ!!」



 私は女性の手を取ると全力でその場から逃げ出した。


 逃げ出すしかなかった。


 息も絶え絶えになってその場を走る事、五分程。



「あのー、そろそろ良いんじゃないんですか? 走るのめんどくさいんですけど」



 そういうと女性は私の手を振り払う。


 私自身もマスクをしていたので息があがってきていたので走るのをやめ、少女と向き直る。



「はぁ……はぁ……そもそも、あなたね。あんな犯罪まがいな事……」


「だって、くどくどくどくど、日本の事もよく分からない私に説教たれて。とってもめんどくさいじゃないですか?」


「まぁ、たしかに面倒くさい人ではあるのだけれども」


「ああいうめんどくさい人って私嫌いなんですよ」



 いや……嫌いだからって、その人をノシていい理由にはならないのだけれども。


 そんなのがまかり通ったらそれこそ日本は無法国家だ。


 というか、こんな女性が大手を振って歩いていること事態、結構問題あると思う。



「ま、いいんですけど。私こう見えてVIPですから」


「は?」


「私はこの国の国賓なんですよ。だから崇め奉りなさい、この『吸血鬼』風情が」



 そんな事を言いながらフフンと鼻を鳴らす女性。



「えっと……とりあえず私も一応、国のあらゆる機関にコネクションがあるお嬢様……なんですけど」


「え?」



 私の言葉に今度は女性が口を開けてパクパクと言葉にならない声をあげる。


 お互いにお互いの姿を見つめ合ったまま私達の時間が止まってしまった。

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