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『吸血姫様』は百合百合したいっ!!  作者: 牛
序章 『吸血姫様』は―――
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第五話

 休み時間にクラスの名簿一覧を調べる。


 そこには『長与みのり』という名前は存在せず。


 代わりに『指宿みやび』という名前しか存在しない。


 その事に遥香も含めたクラスメイト達は違和感も抱かずただ受け入れている。


 それが現実であることかの様に。


 昨日までの私の現実を否定するかのように。



 何が、どうして、こうなったのか分からない。


 本来存在するべき人間が、別の人間になり変わられて存在しているなんてことがあるなんて。


 その事実が存在していなかったかのように世界は回っている。


 そして何故かその事実を私だけが知覚できている。


 その理由は何なのか。


 その原因は何なのか。



 それはきっと『昨日の惨劇』。


 それくらいしか思い浮かばない。


 この不可解な現象は、『霧島しずく』ちゃん。


 この少女に事象は集約されると私は思う。



 だから、私は放課後になると同時に教室を飛び出し、一年生の教室を巡る。


 小柄な少女の姿を探して。


 けれど、その姿を見つける事は出来なくて。


 試しにその辺の一年生に霧島しずくちゃんは知らないかと訊ねてみても、暖簾に腕押し。


 そんな子の事は知らないの一点張り。


 私はため息をつきながら、先日紅い血にまみれた校舎の裏までやって来た。


 そして桜の花と青い青い空を見上げる。



「はぁ……いったいどこにいるんだろう、しずくちゃん」



 そう呟くも答えは返ってくるはずもなく、澄み渡った空へと吸い込まれてゆく。


 私は一つため息をつくと、校舎に背を預け座り込む。


 しばらく青い空を眺めていると。



「おや……キミは消したものだと思っていたんだけどな……」



 そんな言葉が桜の木の陰から聞こえてくる。


 木陰の方に視線を移すといつからそこに居たのか黒い衣を纏った少女が一人。


 霧島しずくちゃんの姿がそこにあった。



「しずくちゃん……?」


「消し損ねたものは、しっかりと処理しないとね」



 クスクスと微笑みながらしずくちゃんは私に向かって歩み寄ってくる。


 鞘に納めた刀に手をかけながら。


 動かなければ……。


 この場から動かなければ斬られる。


 頭ではそう理解しているのに腰が抜けてしまい体に力が入らない。



「ほら……消えちゃいなよ」



 しずくちゃんの言葉と共に白い刀が抜き放たれ。


 私の恐怖を煽りながら私に向かって振り下ろされた。


 振り下ろされてくる刀がスローモーションのように私に迫ってくる。


 迫りくる刀を私は何とか身を捻り寸前の所でその斬撃を躱す。


 私のその行動にしずくちゃんは目を見開き、私に問いかけてくる。



「……キミは何だ? 吸血鬼か? 眷属か?」



 しずくちゃんは私に向かって更に刀を一閃、二閃とゆっくりと振り下ろしてくるけれど私はその斬撃をスレスレの所で躱していく。


 そして、私はだんだんと理解してきていた。


 しずくちゃんはゆっくりと刀を振るっているんじゃない。


 私が、私の感覚が、視覚神経がしずくちゃんの刀をゆっくりと見せているのだ。


 それは野球選手がボールを打つときにスローモーションに見せているが如く。



「まぁどっちでも良い……。我が刀にて塵芥となり伏せろっ!!」



 言葉と共に放たれた袈裟懸けの一閃をひらりとかわし、私はしずくちゃんから距離をとる。


 というか私、こんなに身体能力高くないはずなのだけれども。


 一体全体どうしてしまったというのだろう、私の体は。



「キミは……いったい……」



 困惑の表情を浮かべながら尚も私を斬り伏せようとしてくるしずくちゃんを見つめ、私は告げる。



「ねぇ、こんな事やめよう、しずくちゃん?」


「しらばっくれるな!」


「しらばっくれるなって言われて……も……あれ……?」



 ふいに体からふっと力が抜けていくのを感じる。


 あ……やばい……ここで意識を失ったら、絶対に斬られる……。


 どんどん遠のいていく意識の中、私としずくちゃんの間に白い制服を着た小柄な少女が一人立ちはだかった。


 私に刀を向ける少女と瓜二つの顔を持つ少女が。


 私が探し求めていた白い制服姿の少女が。


 薄れていく意識の中見たのは、黒いしずくちゃんと白いしずくちゃんの姿。


 しずくちゃんが……二人?


 まったくもって訳が分からない。


 けれどそんな状況にもかかわらず。


 温かな布団の温もりに包まれるように。


 私は遠のいていく意識に身を委ねた―――。



「……」


「……目が覚めた?」



 目を覚ますと周囲はすっかりと暗くなっていて。


 月明りのさす中、私は白い制服に身を包んだしずくちゃんに膝枕をされていた。


 空からは桜の花びらがひらひらと降ってくる。


 あー……制服越しだけどふともももちもちしてて気持ち良い……。


 そんな事を考えながら私はしずくちゃんのふとももに頬ずりする。



「ひゃっ……ちょっと……やめて……。先輩……」


「良いではないか、良いではないか~……」



 言いながらなおもしずくちゃんの体を堪能しようと手を伸ばそうとする。


 けれど、手足がうまく動かない。



「あ……れ……?」


「それは力を使った反動。力の元を補給しないと駄目だよ」


「力? 何の事?」



 しずくちゃんの顔をみつめるとしずくちゃんは憂いを帯びた視線で私を見下ろしていた。



「先輩の力の源……それはボクの血……。だから……」



 少女の瞳に妖しい光が灯る。



「吸っても良いよ……ボクの血を」



 蠱惑的な表情でしずくちゃんは衣服を開け、私を誘惑する。


 その誘いを私は断ることなどできず。


 さしだされた彼女の白い首筋に私はそれが必然であるかのように二本の歯を突き立てていた。


 桜の花びらが舞う中、私は少女の体を抱きしめる。


 小さな少女の赤い血をすすりながら。


 私は少女の体を弄ぶ。


 少女の引き締まった腰を、やわらかなお尻を、控えめな胸を順番に。


 流れる様に触り、弄ぶ。



「あ……良いよ……もっと……もっと……ボクの血を吸って……」



 少女の艶っぽい声に当てられ、私の行為はますますエスカレートしていく。


 月の光が輝く中。


 ひらりひらりと。


 桜が舞い散る空の下。


 少女の髪から香る甘い匂いに誘われて。


 私の口は。


 少女の白い制服は少女の鮮血によって紅く紅く染まってゆく。


 私は、私の行為に身をゆだねる少女の体をひたすらに貪っていった。

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[良い点] 最低限の文章のルールが守られていること。 キャラの個性がはっきりしていること。 文章構造レベル2〜3の世界観を守っていること。 [気になる点] 1つ目。 段落を開けすぎていて読みにくいで…
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