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『吸血姫様』は百合百合したいっ!!  作者: 牛
第二章 『百合百合』させて?
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第四十九話

 さんさんと照りつける太陽の下。



「それで、昨晩はカーミラと同衾したと?」


「あ、はい。なんかすみません―――」



 喫茶店でアイスティーを飲みながら私は遥香に平謝りを重ねる。


 今日はたまには運動がてら外出しようという事になって、遥香と二人と『眷属』ちゃんで出かけることにした。


 因みにカーミラは屋敷でお留守番である。


 今頃、客間で『真夏の大冒険』を楽しんでいるんではなかろうか。


 たぶん。きっと。おそらく。


 まぁ二人で出かけることにしたのは、お互いに緊急事態宣言で自粛生活に疲れていたというのもあったし。


 昨日の事をカーミラに邪魔されずにじっくりと話がしたいという遥香たっての願いもあった。



「とりあえず、先輩は同衾しただけで、カーミラには何もしてないよ、遥香先輩」



 やれやれとため息をつきながら私の肩の上でしずくちゃんはかぶりを振る。



「同衾以上の関係をもっていたら、のぞみ。わかっているだろうな?」



 遥香の肩の上に乗るしおりは腰に差した黒刀に手をかける。


 いや、怖いから。


 その目と仕草は怖いから、やめようね、しおり?


 私は内心冷や汗をかきながら、手を振り振り。



「も、もう二度としないから。だから安心して」


「なら、良いんですけどね。はぁ……でもお嬢様はお優しいですからね」



 遥香はそう言いながらため息をつく。


 カランカランとコップの中の氷をストローでかき混ぜながら。



「そもそも。カーミラが邪魔なら私達のところに連れてくれば良かったんですよ」


「(・〇・)!!」


「何を今更、それに気づいた的な表情をしているんですか? 馬鹿なんですか?」



 いやまぁ。


 正直そういう手もあるのかなぁなんて思ったりはしていたのだけれども。


 遥香自身もそこまでカーミラの事は快く思っていないんじゃないのだろうか?


 でもまぁ遥香がそう言ってくれるなら。


 今度雷が鳴った日はカーミラのことは遥香に任せよう。


 そうしよう。


 そんな感じで小一時間程時間をつぶしたところで。


 私達は喫茶店を後にする。


 家路に向かう道すがら。



「あのー……もしかしてですが。あなた達、『人間』ではありませんね?」



 正面からやって来た長い亜麻色の髪の碧眼女性にそんな事を問いかけられた。



「はぁ……またこのパターンか―――」



 ため息と共にそんな言葉が漏れ出てしまう。


 何故最近、こうも外人の同族に出会ってしまうのだろうか?



「先輩、この人、『人間』だけど、『人間』じゃない」



 え? 『人間』なの? でも『人間』じゃないって?



「あら、そちらの小さい子達は『妖精』の類ですか? それとも『眷属』?」



 ―――この人、『人間』のはずなのに、しずくちゃんたちも『視え』てる。


 私達と女性の間に無言の緊張が走る。


 が。



「あー……そんなに緊張しなくて良いですよ? 私めんどうくさい事したくないので。見逃してあげます」


「黙って聞いていればっ!!」



 しおりが腰の黒刀を抜きがけにその身を人間サイズに戻して女性に斬りかかる。


 しかし、女性の体に刀が触れる直前で、しおりの体が硬直してしまう。



「なっ……おまえはっ!!!」


「だから、私、めんどうくさいことって大嫌いなんですよ。―――要らない力をつかわせないでくださいますか?」



 女性が涼やかな顔をして手をしおりにかざすとしおりの体はそのまま私の方へ吹き飛んできた。



「先輩っ」



 私としおりの体がぶつかる直前にしずくちゃんも身体を人間サイズに戻ししおりの体を受け止める。



「すまん……しずく」


「良いって良いって。でもこの人の力って『吸血鬼』に近いんじゃないの……?」



 しずくちゃんの言葉を聞いた女性はいかにも心外だという風に口を開く。



「『吸血鬼』? そんな汚らわしい『存在』と一緒にしないで頂けますか? 私はれっきとした『人間』ですよ」



 そう言って、女性は私達を一瞥すると、蔑んだ瞳を向けながら。


 そんな馬鹿な……。


 しおりの黒刀を弾いただけではなくてその身を弾き飛ばすぐらいの力の持ち主が『人間』?


 そんな訳、あるはずが―――。



「まぁせいぜい『吸血鬼』は『吸血鬼』らしく、棺桶の中で大人しくしていてくださいね―――」



 そんな言葉を残して女性は去って行った。


 私達はその姿をただ茫然と見送るしかなかった。


 結局、しおりは単に弾き飛ばされただけではなくて、体力の大部分を持っていかれていた。


 ので、しずくちゃんが肩を貸して、家路に着く。



「お……おまえ! しずくか?」



 客間でしおりを休ませようと部屋に入るなり。


 カーミラがしずくちゃんの姿を見上げながらキラキラとした瞳を向けていた。


 って、あれ?


 そういえばカーミラが二人の『眷属』ちゃんの人間サイズの姿を見るのは初めてだっけ?


 そんなことを私が考えていると。


 カーミラはひしっとしずくちゃんの腰に両手を回し。



「しずくはカーミラがもらうことにしたンだわ」


「は?」



 なんか妄言が聞こえたので私は問い返す。


 っていうかそんな風にしてても仲の良い少女と幼女にしかみえないよ?



「しずくはカーミラのものにするといったンだわ!!」


「いやいやいや。しずくちゃんは私の『眷属』だし。それに何でしずくちゃんなのさ」



 べつにしおりでもいいじゃないか。同じ顔なんだしと付け加えると。



「しずくの白い髪と白いドレスがいいンだわ。しおりは黒くてダサくて嫌なんだわ」


「……黙って聞いていれば、カーミラ……。そもそもこれは和服と言って、この国の由緒ある礼服なのだぞ」



 体力が消耗しているにもかかわらずくどくどと説教を垂れ始めたしおりを尻目に、私はカーミラをしずくちゃんから引きはがしぺしっと打ち捨てると。



「いーやーだー!!! しずくはカーミラのものなのーーーーー!!! カーミラはしずくと百合百合したいンだわーーーーー!!」



 カーミラは駄々をこねて泣き始めた。


 なんなんこのロリ『吸血鬼』……。


 寝言は寝てから言いましょうね。本当に!!

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