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『吸血姫様』は百合百合したいっ!!  作者: 牛
第一章 『百合百合』したい。
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第四十一話

 ひらり。


 ひらりと。


 舞い落ちる。


 桜の花が舞い降りる。


 延々と、永遠に近い時間の中。


 同じ時間を。


 同じ瞬間を繰り返しながら。


 私はその季節にただ一人とり残されている。


 永遠にこの世界を夢見ながら私は眠り続ける。


 叶わない願いを胸にしながら。


 私の『存在』が尽きるその日まで眠り続ける。


 それが、『人間』の『存在』を啜ってきた私の『罪』だから。


 だからこの世界で消え去っていく―――。


 ―――そのはずだったのに。



「―――どうして、あなたは戻ってきてるんですか?」



 私は振り返らずに恋い焦がれる存在に声をかける。



「―――なんでだろうね?」



 そんな軽口を叩きながら、その存在は私の胸を揉んできた。


 ので、私は軽く肘打ちをお見舞いしてあげた。



「お嬢様はっ! ムードってものを知らないんですか? ムードってものを!」



 肘打ちをくらいながらも私の(自分で言うのもなんだけれど、豊満な)胸をもんでいるお嬢様をみつめながら。


 私は深くため息をつく。



「そうはいってもねぇ……。眠ってる本体にセクハラされなかっただけ、良かったと思え? 的な?」


「なんでそこでドヤ顔なんですか? それにそれはしおりが許さないでしょう?」


「そうともいう」



 今の行為に悪びれた様子もなくひらひらと手を振りながらお嬢様は告げる。



「はぁ……もういいです。で。何で戻ってきたんです?」


「いやまぁ……。私って、遥香に愛されたんだなぁって……」



 今更な事を言われてしまった。


 というか。


 このお嬢様は愛もないのに私が身体を許していたとでも思っていたのだろうか。


 ……それはもう深く敬愛していましたとも。


 親しくなりそうな人間は全て排除してきましたし。


 でも。



「この世界に居ても、あなたも眠り続けるだけですよ?」



 お嬢様には、忠実な『眷属』やお友達がいるじゃないですか。


 私はそう視線でお嬢様に告げる。



「―――私は、遥香と、百合百合したいんだよっ!!」



 いきなり何を口走っているんだろうか、このお嬢様は、と思ってしまう。



「確かに、しずくちゃんとも百合百合したいけどね……」



 けれど、漏れ出たお嬢様の本音に少し私は笑ってしまい。



「私は、遥香とも百合百合したいんだよ」



 眼鏡のレンズの奥が薄っすらと滲んでしまう。



「……馬鹿なんじゃないんですか?」


「うん、私は、馬鹿だから―――」



 彼女はそう言うと私の事を抱きしめながら。



「だから、もう―――、一緒に、眠ろう、遥香―――」



 パキンと世界にひびが入り。


 桜の舞う季節が終わりを告げていく。


 代わりには。


 辺り一面、色とりどりの花が咲き乱れる花園。



「―――本当に、馬鹿なお嬢様ですね―――」



 私はお嬢様と手に手を取り合いながら。



「私は学園の『百合姫様』だからね―――」


「―――なんですか、それ―――」



 お嬢様も私の手をしっかりとつかみながら。



「遥香……また、いつか―――」


「はい。また、会いましょう―――お嬢様」



 花園の中心で。


 ゆっくりと私達の意識は深い混沌に飲まれていく。



「「(せわ)しない、あの世界で―――」」



 ―――


 深い『眠り』についていた。


 春の優しい香りを受けながら。


 夏の穏やかな風を受けながら。


 秋の生き物たちささやきを受けながら。


 冬の陽だまりのような温かさを受けながら。


 私は深い『眠り』についていた。


 けれど、その『眠り』は寂しいものではなくて。


 隣を見れば、いつも大切だった人が居る。


 そんな眠りで。


 隣で眠る少女も、きっと同じ気持ちのはずで。


 今も幸せに眠り続けている―――。


 そんな、幸せな夢だった―――。

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