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『吸血姫様』は百合百合したいっ!!  作者: 牛
第一章 『百合百合』したい。
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第三十六話

 あくる日の朝。



「ごきげんよう、飛鳥ちゃん」



 珍しく教室に入る前に飛鳥ちゃんを見かけたので、声をかける。



「うん、ごきげんようって……何? その小さな人形さん」


「は?」



 思いもよらないその言葉に私は問い返す。



「いやいや、のぞみはなんで頭の上に白いドレスのお人形さん乗せてるのかなーって……」



 飛鳥ちゃんは私の頭の上の方をまじまじと見つめながらそんなことを言う。



「―――やはり、私たちの事が見えているようだな」



 私の後ろをふよふよと浮いてついてきていたしおりは事情が全部分かっているかのような口ぶりで言う。



「それは腹話術……じゃないよね? なんかそっちのお人形さん浮いてるし」


「ああ、腹話術などではない。そもそものぞみにそんな器用なことできると思うか?」


「ううん。できないんじゃないかな?」



 二人はとっても失礼なことを言っていた。


 なんだよー、二人して私の事を馬鹿にして。


 私だって腹話術の一つや二つできるんだからね!!


 私はそう思い、頭の上に乗っていたしずくちゃんを空いている手で掴み、腹話術をしようと試みる。


 しかし。



「なにするのさ先輩!! 乙女のスカートの中に手を突っ込まないでよ!」



 おもいっきりしずくちゃんに叱られてしまった。



「のぞみ……無理なものは無理だ。諦めろ」


「そうだね。完全に、腹話術になってないよ?」



 飛鳥ちゃんとしおりに生暖かい視線を送られながらそんなことを言われる。


 それでもなお私は何とか腹話術を成立させようとしずくちゃんとギャーギャーやっていると。


 廊下ですれ違うクラスメイト達に入来院さん達は何をやっているのかと奇異の目で見られてしまう。


 は……そうだった……。


 皆には、しずくちゃんとしおりは見えてないんだった。


 これじゃ私、変な子じゃないか。


 いや、もう学園の『百合姫様』なんて言われてるから手遅れなのかもしれないけれども。


 これ以上、変な噂を加えられても困る。


 非常に、困る。



「と、とりあえず、話は向こうでしよう!!」



 飛鳥ちゃんの手を引きながらそう告げて。


 私と飛鳥ちゃんは空き教室へと向かうのだった。



「飛鳥、おまえはもう『人間』とは言えないな……」



 しおりとしずくちゃん達は飛鳥ちゃんに一通り、自己紹介をした後。


 飛鳥ちゃんのことを見つめそんなことを言う。



「『存在』が『偽人』と交じりすぎているようだ。だから『眷属』の私達が認識できるようになったんだろう」



 なるほど、わからん。


 私はしおりが何を言いたいのかよく分からなかった。


 交じり過ぎたらなんで、しずくちゃん達が見えるようになるというのか。



「えーと、つまり……?」



 私はしおりに問い直す。



「今の『多良見(たらみ)飛鳥』は『多良見(たらみ)飛鳥』でもあり、『多良見(たらみ)明日奈』でもあるという事だ」



 ……だーかーらー……。


 言い方がいちいち回りくどくてわかりにくいんだってば。


 それに答えが答えになってない!!


 非難の視線をしおりに向けながら、次の言葉を促す。


 しおりは、コホンと咳払いをして。



「今の飛鳥は『人間』や『偽人』というより、『眷属』や『吸血鬼』に近しい『存在』なのだろう。だから私たちが見えるのだと思う」



 よろしい。


 はじめっからそう言ってくれていれば分かりも良いってものなのに。



「それにしても……『眷属』? ……だっけ? しおりは」


「ああ。『吸血鬼』の忠実な『従者』だ。まぁ今は『主』のいない『眷属』だがな」



 そう言ってしおりは自嘲する。



「それで、のぞみと姶良さんは『吸血鬼』と」


「はい……『吸血鬼』でごめんなさい……」


「いやいや、のぞみ。何で謝るのそこで?」


「いや、だって、飛鳥ちゃんの血を吸っちゃったし……」



 そればかりか、『明日奈』の『存在』も啜ってしまった。


 それはもう、本当に大量に。


 えっちなこともいっぱいしちゃったし……。



「あー……でもアレは気持ち良かったし、それは気にしないでって事で」



 ―――やっぱり覚えてるんだ。


『明日奈』から飛鳥ちゃんに戻すためにやったこととはいえ、自分の心がチクリと痛む。


 っていうか、『存在』が『明日奈』と交じってるってことは―――。



「とりあえず、しおりの話でなんとなく納得いったというかなんというか」



 飛鳥ちゃんは苦笑いしながら続ける。



「ほら、昨日、気付いたらなんかバンドでギタボ(ギターボーカル)なんかやっててさ。まるでお姉ちゃんみたいに」



 そう言うと背中に持っていたギターを手に持ち。



「私、そんな音楽得意だったっけ? とか思ってたんだけど、なんかこんなに上手にひけるしさ。なんだか私が自分じゃない記憶がごちゃごちゃで」



 ギターを流れるようなしぐさで弾きながら飛鳥ちゃんは続ける。



「だから、しおりの話でようやく分かったよ。私の中にお姉ちゃんがいるんだね」


「そういうことだ」



 しおりはそう答えると言うべきことは全部話したぞという顔を私に向ける。



「……そうだね。『眷属』に『吸血鬼』な私達だけど、これからも仲良くしてくれる?」



 飛鳥ちゃんはギターの弦をピックで響かせると。



「うん。これからもよろしく。のぞみ。可愛い『眷属』ちゃん達も」



 満面の笑みでそう応えた。

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