表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『吸血姫様』は百合百合したいっ!!  作者: 牛
第一章 『百合百合』したい。
26/100

第二十六話

 夕暮れの迫る教室の一角で。


 私は一人の少女と体を重ねる。


 少女の体に牙を突き立て血を啜る。


 それはかつての友達だったはずの少女。


 それは今、『明日奈』と自称する『偽人』。



「ぁ……良いよ……のぞみ……もっと……」



 私は『明日奈』の『存在』を啜り尽くしたはずだった。


 けれど。



「もっと……もっと……私を犯してっ!!」



『飛鳥』ちゃんに戻ったと思ってもすぐにその姿は乱れ『明日奈』へと『存在』が改変されていく。


 もっと……もっと……『明日奈』の『存在』を吸い尽くさないと。


 私はもはや全裸に近い姿になり果てている少女の肢体を味わう。貪っていく。


 始めは優しく扱っていた体も次第に乱暴に、手荒くなっていた。


 そして私の体も次第に熱を帯びてくる。



「はぁ……はぁ……」



 グラリと一瞬視界が真っ黒に染まる。


 何だか息が苦しい。


 いやそんな事よりも今は『飛鳥』ちゃんの事に集中しなくては。


 そう思いなおし『飛鳥』ちゃんを見つめる。


 しかし。



「の……ぞ……み……犯してぇ……」



 駄目だ……いくら『明日奈』の『存在』を吸い尽くしても『飛鳥』ちゃんに安定しない。


 どうして―――。


 どうしてっ……!!


 私の頬に一筋の水滴がしたたり落ちる。


 私はいつの間にか泣いていた。


 初めてできた友達を元に戻すことができないなんて。


 それどころか彼女を『偽人』に追い込んでしまったのは自分だったなんて。


 どうしようもない無力感に苛まれる。



「も、もう一回っ……!!」



 全裸姿の『明日奈』に自分の歯を突き立てようとしたその瞬間。



「もう止めようっ!! 先輩……っ!!」



 後ろからしずくちゃんに抱きしめられて、私は固まってしまった。



「……の……ぞみ……犯し……て……」



 全裸の『明日奈』は私が『存在』を吸い絶頂を繰り返したからか、すやすやと寝息をたて始めた。


 ああ……もうっ。


 なんで、上手くいかないんだろうか……。


 やはりシスターの少女が言った通り、『飛鳥』ちゃんを『明日奈』という『偽人』にしているのは私自身が原因だからなのだろうか。


 私に『飛鳥』ちゃんを元に戻すことはできない?


 でも、それでも……。


 私は……。


 私はっ……!!



「『飛鳥』ちゃんは大切な友達なんだよ……」


「うん……。だからもう今日は終わり。友達が壊れちゃうから」



 私の背でしずくちゃんは優しく囁いた。


『明日奈』に服を着せた後。


 私としずくちゃんは校舎の屋上へと向かっていた。


 今日は何だか、そのまま帰るような気分ではなかった。


 屋上の扉を開け屋上へと躍り出る。


 フェンスの所まで私はスタスタと歩いていき、はぁと一つため息をつく。


 星がきれいな夜だった。


 満天の星の下、私達はぼんやりと街を眺める。



「先輩……」



 私の隣では人間サイズのしずくちゃんが私の顔を心配そうに伺っている。


 いつもなら無理やりにでも笑顔を作って大丈夫だよって言いたい所なのだけれど。


 それすらできない位に精神が滅入ってしまっていた。


 そのせいか何だか足元もおぼつかない。



「……えっちなことしてもいいよ?」



 は?


 ……いま、なんと?


 私がしずくちゃんの顔をまじまじと見つめていると。


 しずくちゃんは気恥ずかしそうに顔をそっぽ向けながら。



「二度は言わないよっ」



 そう言ってシュルシュルとドレスの上部を開けさせ始めた。


 私はその音に誘われるように、手をしずくちゃんの透き通るような白い胸にあて。


 しずくちゃんの首筋に牙を立てる。



「ぁ……」



 かすかな喜びにも似た声をしずくちゃんは漏らすと私の体を求め始める。


 私はしずくちゃんの血を一頻り啜った後、彼女を屋上の地面に押し倒し、肢体を味わい始める。


 しずくちゃんは私にされるがままぼんやりと星空を見上げていて。


 しずくちゃんの紅い瞳から一条の涙が流れる。


 しずくちゃんの寂しさを埋めるように、私はますますしずくちゃんへの行為に夢中になっていく。



「あ……ん……んっ」



 その声と共にしずくちゃんの体が一際大きく跳ねる。


 そんなのお構いなしに私の手はしずくちゃんの体を這いまわる。



「先輩……」



 しずくちゃんはうわ言のように私の事を呼ぶ。


 私はしずくちゃんを見つめその口を塞ぐ。


 人生二度目のキス。


 体を重ねながらの接吻。


 それはとても蠱惑的で……。


 頭の芯までしびれてしまいそうな快感が走る。


 しずくちゃんも同じ気持ちだったのか、お互いの口を舌が縦横無尽に行きかう。



「ん……はぁ……はぁ……」



 口を離すとお互いの唾液が入り混じったものが、ツツーとしたたり落ちる。


 私は更に、しずくちゃんの白い髪、胸や腰やふとももに口づけをしていく。


 その間も手で、しずくちゃんの肢体を味わう事を忘れない。


 私の体もしずくちゃんの体を全身で感じ、昂ってくる。


 やがて、しずくちゃんは。



「先輩……っ、先輩……っ!!」



 私の事をうわ言のように呼びながら、達してしまった。


 吐息を漏らしながらしずくちゃんは私に告げる。



「ありがとう……。先輩―――」



 その言葉を残して、しずくちゃんの体はうっすらと虚空に消え去ってしまった。



「え……?」



 私は何が起こったのか分からず、ただ茫然と。


 今もなお私の手に残る少女の温もりを感じながら。


 そこに横たわっていたはずの少女の姿を見つめていた。


 いつまでもいつまでも―――。


 そんな私の頭上ではいくつもの星達が、美しい光の帯を作っていた―――。

評価、ブクマありがとうございます!

今後もお気軽にブックマークなどしてくださると幸いです。

感想は、面白そう、つまらないでもなんでも結構です。

評価も、気軽に★1個でも構いませんので付けてくだされば嬉しいです。

それが書く気力になりますので!

是非ともよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ