第二話
赤い花が咲く。
私の胸から腹にかけて。
白一色の制服を真っ赤な鮮血の色に染めあげながら。
私は少女に真白な刀で袈裟懸けに切られていた。
なぜこんな事になったのか。
どうしてそんなことになっているのか。
その理由は全然わからない。
いや、もうそのことを考えることすらできないと言うべきか。
意識があっという間に遠くなっていく。
小さな少女が何か言葉を告げている。
けれどその言葉は、もう、聞き取れない。
……。
ジリリリリリリ……。
けたたましい音が部屋中に鳴り響く。
ふかふかの温もりを残したベッドからもぞもぞと這い出して私は目覚ましのアラームをオフにする。
そしてもそりと起き上がり「ふぁ~」と一つ欠伸をしながら伸びをする。
何か変な夢を見ていた気がするがどんな夢だったか思い出すことができない。
何かとても、とても大切な夢だったような気もするのだけれど。
今はもう遠く記憶の彼方。
まぁいいかと思い直し部屋の衣装ダンスを開け真っ白な制服を取り出す。
そして等身大の姿見鏡の前に立ちながらパジャマをするりするりと脱ぎ捨て、着慣れた制服に袖を通していく。
パジャマ姿からあられもない姿、そこから下着姿へ。
下着姿から制服姿へと変わっていく自分の姿を見つめながら思う。
相変わらずこの背徳感はたまらないなと。
自惚れではないがこの姿を動画配信サービスで配信するだけで再生数は数万いくと思うね。
垢BANされそうだけれども。
ボサボサの髪を櫛で撫で付けフワリとかきあげると美少女JKお嬢様の出来上がり。
その姿を鏡で見惚れていると。
コンコンと小気味よく扉を叩く音がなる。
「入っていいわよ、遥香」
眼鏡をかけた如何にも地味を地で行っている少女が扉を開けて入ってくる。
「また自分の姿に見惚れてたんですか?」
「いいえ。私は私に見惚れてたんじゃないの。女の子という概念に見惚れてたのよ」
「相変わらず訳の分からない馬鹿ですね」
やれやれといった感じで遥香は大きくため息をつく。
そんな遥香に私は擦り寄り後ろから両手で胸を鷲掴みにした。
「ひゃ……ちょっと……やめ……て……」
「女の子の胸のふかふかはこんなにも気持ちいいのに、その良さがわからないなんてなー。遥香は全然っわかってないっ! じゅるり」
「それはもうわかってますから、あ、ちょっと、ブラがずれちゃいますから……」
遥香は真っ赤な顔をしながら大きな胸をもみくちゃにされる。
この少女は姶良遥香。
私の幼馴染の同級生にして家付きのメイドである。
だから、私のする事には逆らうことはできないのだ。
たとえこんなセクハラまがいなことだといえども、こうされることが仕事なのだ。
たわわな胸を揉みながら私は遥香のうなじに顔を近づけると、ほのかに甘い香りが鼻孔をくすぐる。
うん、とってもいい匂いだ。
これぞ女の子のって感じだね。
お役目に逆らうことができないメイドを好きなようにもみくちゃにする。
こんな至福な環境に生まれてきてよかったなと赤く朱色に染まっていく遥香の顔を見つめそのふかふかの胸を揉みながら。
女の子の脳を痺れさせるような甘いフローラルの香りをクンクンと嗅ぎそう思う。
あー……し・あ・わ・せ。
遥香のふかふかと香しいやわらかな匂いを堪能すること数分。
私は満足して遥香を弄んでいた手を解放する。
「はぁ……気持ちよかった」
「はぁ……はぁ……ほ、本当にお嬢様は馬鹿ですね。毎朝毎朝飽きないんですか?」
真っ赤に染まり切った顔でズレたブラを器用に直しながら遥香はぼやく。
これが私達の毎朝の日常。
やめろと言われてもやめられないルーティーン。
「いいじゃない減るもんじゃなし。いやむしろ私がそこまで大きく育てた、みたいな?」
「そんなことありませんっ! これは遺伝ですっ! 決してお嬢様が育てたわけじゃありません!」
遥香は真っ赤な顔をして大きな胸を抑えている。
まぁ確かに遥香のお母様も大きなお胸だったけれども。
でもよく言うじゃない?
お胸は揉まれれば大きくなるって。
だから遥香の大きなお胸は私が育てたと言っても過言ではないだろう。
「早く支度をしないと遅刻しますよ、お嬢様」
「はっ。そうだった! それに今日から麗しのしずくちゃんを観察するという日課が加わったんだった!」
「どんな日課ですか、それは」
やれやれとかぶりを振りながらも律儀に遥香はたずねてくる。
「それはー、しずくちゃんを学園内で観察することだよ!」
「それってただのストーカーですよね?」
その言葉がグサリと私の心をえぐりとる。
いやまぁたしかに私としずくちゃんはまだ接点も何も無い関係だけれども。
でも熱烈にアプローチをしていればいつかは……ぐへへへじゅるり。
そんなたわいも無いことを話しながら食卓へと向かい私達は共に同じテーブルで朝食をとり。
執事が運転する高級車に乗って学園へと通学する。
車に乗ること数十分。
遥香に誘われるように車から降りると。
「ご機嫌よう、入来院様」
クラスメイトから声をかけられる。
「ご機嫌よう」
私は軽く会釈を交し教室へ向かって歩を進める。
その道すがら私は目的の人物を見つけ視線をさ迷わせる。
霧島しずくちゃんだ。
しずくちゃんはクラスメイトと思しき少女と楽しそうに笑い合いながら1年生の教室の方へと消えていった。
嗚呼、何故私は2年生なのだろう。
今からでも留年させてくださいと担任に直訴すべきであろうか?
入来院家の力を使えば今から私を留年扱いにすることなんてお茶の子さいさいなのかもしれない。
しかしそんなことをしてもしずくちゃんと同じクラスになるとは限らないのだけれど。
自分のクラスに入るなりご機嫌ようと声をかけられ、私はご機嫌ようと返事を返す。
遥香は私の従事者として後ろを黙々とついてくる。
私が自分の席に座ると遥香は一礼し自分の席へと向かっていった。
この学園の生活は万事が万事こんな感じだ。
形ばかりのクラスメイト。
まるで社交界のような堅苦しい毎日。
そんな日々が私を妄想の日々に誘われていったのは当然と言えるだろう。
私だって年頃の娘だ。
JKだ。
庶民的な女子高のようにクラスメイトとスキンシップするような仲でいたいし、キャッキャウフフな仲になりたい。
なりたいのだ。
でもそれは、良家のお嬢様という世間体が許さない。
はぁ……お嬢様って本当に面倒くさい。
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