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『吸血姫様』は百合百合したいっ!!  作者: 牛
第一章 『百合百合』したい。
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第十六話

 春も終わろうとしている日の昼下がり。


 真昼の太陽がジリジリとカフェテラスを照り付ける。


 私としずくちゃんはお洒落なカフェでのんびりとお茶を啜っていた。


 しかし会話があまりにも弾まない。


 そもそもしずくちゃんと話すことって『しおり』のこと以外なさすぎてどうしたものかと。


 そう。これがコミュ障お嬢様の実態なのである。


 そんな訳で、私は黙々とメニューにあるスイーツを上から順番に頼み黙々と胃袋に収めていた。



「先輩、ボクとのデートがただのお食事会になってるよ?」



 イチゴのショートケーキをパクついていたしずくちゃんはフォークでイチゴを突き刺して口に運ぶ。


 そんなこと言われてもなぁ……何を話せば良いのやら。


 しずくちゃんは『しおり』の話をすると沈んだ顔になるのは目に見えているし。



「それに、見られてるよ、ほら、あそこの物陰から。遥香先輩と飛鳥先輩」


「え、まぢで?」



 しずくちゃんに言われた方をみやるとそこにはサングラスで変装した遥香と飛鳥ちゃんの姿が。


 この暑い中よくやるねぇ……と思いながら、私はコップのアイスティーを勢いよく飲み干す。


 うん、おいしい。


 次はフロート頼んじゃおうかな。


 カップの中の氷をカラリと鳴らし、私はコップを置いてその辺を歩いていた店員さんに追加オーダーをする。


 あー、あの店員さんも可愛かったなー。


 引き締まった腰に主張するようなお胸のライン。


 スカートのフリルから見える曲線美を余すことなく追及し、実体化させた衣装は称賛に値する。


 このカフェの店長は女の子の素晴らしさをよく分かっている。


 惜しむらくは、このカフェにはしずくちゃんよりも可愛い子がいないことだ。


 まぁ私にとって、『最推し』はしずくちゃんであり『最愛』の人はしずくちゃんなのだからしょうがないともいえるのだけれども。


 だから、ごめんね、名も知らない可愛い店員さん。


 私はあなたを『推す』ことはできないんだ。



「先輩……相変わらず脳みそ病んでない?」



 私が何を考えているのかまるで見通しているかのように的確なコメント。



「そんなことはないよ!」



 私に冷たい視線を浴びせかけるしずくちゃんを見つめながら声を大にして言う。


 その声が大きすぎたのか少しお店のお客さんの視線が集中してしまったけれどそんな事は構わない。


 今のしずくちゃんは超かわいいのだ。


 いつもの白い制服姿も似合ってて可愛いのだけれど、私が新調してあげたお人形さんのドレスのような洋服も凄く似合っている。


 初めの方こそ「少し、動きづらいかな」とか言っていたけれど、なんだかんだで気に入っているみたいだ。


 ドレス姿のしずくちゃんも捨てがたいけど、このカフェの衣装を着たしずくちゃんを想像するだけでもあと紅茶10杯はいけるね。


 は……そうかその手があったかと、思い立ったが吉日。


 私はレジの方へと向かいこのカフェの店長さんと交渉することにした。


 金ならいくらでも出す。だから、今から半日は貸し切りにして欲しいと。


 そして、このカフェの衣装を一着買い取らせて欲しいと。


 店長の女性は胡散臭そうな目で私を見ていたが、私の手に持つプラチナカードを目にした途端に手の平をドリルの如く返しはじめた。



「衣装はお嬢様にもお似合いになる服はございますが、それで良いでしょうか?」


「いいえ。衣装を着るのはしずくちゃん。あそこで座ってるとってもキュートな女の子だよ」


「ふむ……これはこれは……我が社としても是非ともスカウトしたい逸材ね」


「それはだめですー。その分、手間賃をカードから引き落としといて良いから。それじゃよろしくね」


「か、かしこまりました。お嬢様!」



 店長の女性の号令一過、店は『本日、予約のみ』の看板にたてかえられ。


 しずくちゃんはというと店員の子達に両脇を抱えられて店の着替え室へと連れさられて行った。


 フフフ……。いやー楽しみだなぁ。


 どんなしずくちゃんが見られるのか私はとても胸がトキメいていた。


 ―――



「なーんてことを思ってるんでしょうけど。やはりあのエロお嬢様は頭のネジが吹っ飛んでますね」


「その状況を分かるくらいだから、姶良さんも頭のネジが程よくぶっ飛んでると思うよ?」



 そもそもなんでこうなった。


 お嬢様が珍しく外に一人で出かけるというので遥香は護衛として遠巻きに見ていたら。


 見慣れない白い髪の少女と二人きりでお嬢様はデレデレしまくりで。


 そしてその様子を見ていた多良見さんに出会ってしまった。


 あまり会話を交わすことのないクラスメイトと学園の外で出会うことほど気まずいものはない。


 しかも目的もどうやら、お嬢様の監視と一致しているから、ごきげんよう、はいさようなら、というわけにもいかない。


 はてさてどうしたものかと考えているうちに二人はカフェテラスに入っていったので遥香達も二人で席をとり隠れてのぞき見をする。



「姶良さんはさー、のぞみとつきあってるわけじゃないんでしょ?」



 そんな事を聞かれ遥香は何言ってんだ? コイツという目を向けながら。



「私はお嬢様のメイドであり下僕でそれ以上でも以下でもありませんよ?」


「ならなんでそんなに気になってるの?」


「それは、どこぞの馬の骨が良家のお嬢様をたぶらかして海外逃亡とかよくある話じゃないですか」


「いや……それはあまりないんじゃないかな?」



 多良見さんは知らないのだろうか? 最近この国の皇室で似たような話が話題になっている事を。


 おかげで、ネット界隈の流行語が『俺、お金ないンだわ。だから国税貢いで欲しいンだわ』とかなんとかなっているという事を。



「どこぞの馬の骨がまっとうな人物なら良いんです。それは諸手を挙げて大歓迎です。でもそれがもし良家の血筋を狙ってきただけの下衆の輩だったら?」


「それは心配しすぎじゃないのかな?」


「そんなことがあるから私は心配してるんです。この国には忖度で動いていることが多すぎるんですよ」



 そんな話をしていると遥香達の目の前でその忖度を地で行く行動を、当のお嬢様がやり始めた。


 どうやら、このカフェは貸し切り専用になるので他のお客様は出て行ってくださいとのことだ。


 とりあえず、どうしたものか。


 あの二人が出てくるまでは、ここはお互いの事を知ることが得策だろうか。


 しずくという名の少女の事も気になるのだけれど。


 最近、多良見さんはお嬢様に馴れ馴れしくも『のぞみ』呼びしているというのもある。


 これは一度はっきりとさせておくべきだろう。


 遥香はそう思い飛鳥と二人で長い長い立ち話を始めることになった。


 このカフェで行われ始めた狂気に満ちたお祭りを他所に……。

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