第一話
ひらりひらりと舞い落ちる。
桜の花が舞い降りる。
花びらたちが舞い落ちる中。
紅い、紅い血が滴っていた。
私が抱きしめた少女の首筋から、紅い鮮血が。
白い制服の襟を真っ赤に染め上げながら。
月明りの下、ひらひらと舞う桜の花がまるで血の様に思える。
私は無言で真っ白な髪、そして同じくらい透き通る白い肌の小柄な少女の首筋に突き立てた牙から滴る生き血を啜る。
「良い……良いよ……先輩……。もっと……もっとボクの血を啜って……」
衣服を開けた少女の艶めかしい声音につられるように、血を啜りながら私は少女の体を撫でまわす。
細いウェスト、引き締まったヒップ、スレンダーな太腿。
少女の体はとてもやわらかで。
触った箇所から弾力に富んだ肌が反発してくる。
女の子のぷにぷにお肌とはこういうものだというのを実感させてくれる。
ゆっくりと控えめなバストに直で手を這わせながら揉みしだく。
「ん……先輩……」
私は血を啜りながら白磁の肌が徐々に真っ赤に染まっていく少女の体を楽しむ。
少女の声も私に体を縦横無尽に触られ、次第に艶を帯びてくる。
少女はその声を聞かれまいと唇を嚙みしめて声を押し殺す。
その姿が、甘い血が、少女のスレンダーな肉体のスベスベの感触が、甘美な少女の声が私の脳内を快感に満たしていく。
「美味しいよ……しずくちゃん……」
血を啜りながら、少女の体を思いっきり抱きしめる。
「先輩……先輩……せんぱ……い……」
少女は熱に浮かされたように、私のことを求めて呼び続ける。
甘い甘い声色が。
少女から香るラベンダーの香水の匂いが。
柔らかな少女の体の感触が。
その全てが私の脳内思考を麻痺させていく。
女の子……良い……。
こんなに可愛い女の子の体を、めちゃくちゃに。
弄ぶように触ることができて幸せ……。
そうだよ!
百合ってこういうものだよねっ!!
月光に輝く桜の花びらが舞う中。
私は薄暗い校舎の陰で背徳感に満ちた心を昂らせていた。
―――
百合。
それは端的に言えば清らかな女の子同士がイチャイチャラブラブする行為。
それは、いと尊きものなりけり。
それは、私が最も崇高とする行為。
それは、神が与えたもうた禁断の果実。
そう、だからこそ。
私、入来院のぞみは女の子と恋がしたいっ!
もちろん男の子とではなく、女の子とである。
それはもう真面目も真面目、大真面目。
女の子のうなじやニーソックスの絶対領域ライン、お胸のふかふかに細いウェスト、ほのかに香る甘い匂い。
女の子を司る全てが私は愛おしくてたまらない。
際どい服を着て自分のボディラインを姿見鏡に映して妄想に浸るのも日常茶判事。
幸い自分の体はとても女の子然として作られていることに、神に感謝の念を忘れない。
神様、私を美少女として生まれさせてくれて本当にありがとうございます。
がしかし、それはそれでである。
両親からお嬢様として英才教育を受けてきた入来院家のご令嬢が。
学園のみんなからは才色兼備と謳われ、立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花と言われているこの私が。
日々クラスメイトたちや自分の体を見つめながらあんなことやこんなことの妄想をしているなんて誰が思うだろうか?
いや、いない(反語)
まぁ幼馴染でメイドの姶良遥香だけはその事を知っているのだけれど。
あー今日こそ白馬に乗ったお姫様が私の目の前に現れないかな。
そんな事を思いながら入学式でおろしたての新品の制服に身を包んだ少女達の品定めをしていると。
いた。
ステージの上。
新入生挨拶を読んでいる少女に私の目は釘付けになる。
身長は150cmくらいのやや引き締まった体。
ショートカットでその端正な顔つきは一見美少年を思わせる。
少女はまだ育ちきっていない幼い声で挨拶をしている。
真っ向正面どストレート。
私がその少女に心を奪われるのは必然と言うべきだったのかもしれない。
これは運命だ。
神が私に与えてくれた天啓だ。
その日、私、入来院のぞみは。
彼女、霧島しずくに『恋』をした。
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