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俺は沙良を傷付けせっかくコツコツと積み上げてきたものもぶち壊して沙良に嫌われた。
「柚月待った?」
「待った。 帰ろうかと思った」
「んもぉー、女の子にそう言われたらそこは待ってないよでしょ?」
「いやエリカ、こんなお通夜ムード漂う中でテンションおかしくない?」
「だからいつも通りな感じに振る舞ってるのに」
「柚ちぃフラれたんだって? あはははッ、当たり前だよねぇ。 でもその間楽しめたんならそれで良くない? 沙良ぴょんでめちゃシコ! なんちゃってぇー」
「あんた最低か! 柚月の気持ちも少しは考えてやりなよ」
「だってそうなるってわかってるんだから割り切って付き合うしかないでしょーに。 あたしは楽しめたよ柚ちぃ、なんだったら今度はあたしと遊んでみない?」
こいつらなんだかんだで俺の不幸を見たいだけだよな、隠す気まったくないミコトは置いておいてエリカやメグミも似たようなこと思ってんだろ?
「でもさ柚月、まさか本気で沙良と付き合えると思ってた? 私らがフォローしなきゃカヅキだってのもまともに演じられなかったのにね。 ミコトの言う通りいつかこうなるって私達も前から言ってたよね?」
「メグミンなかなか辛辣ー!」
「うるさいなお前ら、全部悪いのは俺って言いたいんだろ? そうだよこうなって自業自得だよ」
「柚月……」
エリカが落ち込んでいる俺の肩に手を置いた。
はぁ、実も恋が叶わなかった時はこんな気持ちだったんだろうか? つーかなんでここで実を思い出すんだよ。
それからクリスマスが過ぎ、年が明け沙良に嫌われてしまってから半年が過ぎた。 俺は2年生に進級して沙良のことも思い出すとなかなかくるものはあったけど過去のことになろうとしていた。
そんなある日の昼休み……
「暑くなってきた」
「もうちょっとで7月だしな。 ってどんだけ汗かいてるんだよ」
「なあ実、俺って女装したらモテそうじゃね?」
「おお、俺好みな女になったりしてな!」
「やっぱキモいからなしだわ」
「んだよそれ!? モテそうって言えばエリカとお前ってまだ付き合ってないの?」
またそれか、別に付き合おうとかあいつ言ってこないし。
「なんで付き合うわけ?」
そう言うと背中がバチィインッと音がするくらいの勢いで叩かれた。
「いってぇ!」
「お前本人後ろに居るのにそりゃないだろ」
「居たのかよ」
「居るしッ! サイテー柚月」
いつの間に居たんだよ、気付かなかった。 怒って腕を組んでるエリカとまたやってるみたいな顔をしたメグミが立っていた。 なんか沙良の一件からすっかり気に掛けられてるな。
「はいはい最低です」
「アハッ、良い音で叩かれてんじゃん柚ちぃ」
ミコトまで来やがった。
「ミコトとは付き合ってないんだよな?」
「ミノムシ聴こえてるよん」
「そのあだ名やめてくれよぉ〜」
「やーよ! 柚ちぃ、もうエリたんで我慢したら? ちっとは可愛い方じゃん」
「何その妥協した言い方!? てか全部ムカつく!!」
「暴力反対! きゃーッ!」
ミコトが逃げるとエリカが追い掛けていった。
「ホントうるさいねミコトったら」
「柚月の周りって一気に女っけ多くなったよなぁ、ちくしょー」
「メグミは行かないの?」
「うん」
「まさか俺が目当てで」
「違うわミノムシ」
「お前もかい!」
「柚月知ってる? 明後日鈴鹿女子のバスケ部またうちに練習試合にくるんだって」
何…… だと? そしたら当然沙良も。
「目の色変わったわね」
「おお! また鈴鹿女子来るのか!! てことは沙良ちゃんも来るんじゃね!?」
「あら、沙良のこと知ってるのミノムシ」
「だからやめろって! まぁ俺にも鈴鹿女子の知り合い1人や2人いるさ」
お前偶然会っただけだろ! しかも大昔に。
「柚月も一瞬会ったことあるだろ? 去年の練習試合に。 あの子だぜ、俺の知り合い! 超可愛いんだ」
「ほぉー……(すっとぼけ)」
沙良が来るんだ、あれから会ってないし連絡も取れなかったけど来るんだ…… てか来るかな?
「ちょっと来て」
メグミが俺を引っ張り廊下に出た。
「なんだよ?」
「あれから私達も沙良と連絡取れないの、柚月と共犯になると思われてるだろうし。 でも柚月ほどは嫌われてないかもしれないけど」
「そうかよ」
「でも来るかどうかはわからないから過度な期待はしない方がいいんじゃないの? 気を持たせといてあれだけど」
「俺も来なかったりしてって思ってたけどさ」
というか来てもどうすればいいかわからないけどさ、今更仲直り出来る可能性も低いだろうし俺ともし会ったらあの時の怒りが湧いてきて更に怒らせたりして。
「でももし来たら?」
「まったくわからん、半年以上も会ってないし会ってもどうしたらいいか」
「だったら何もしないの?」
「なんでそんなこと俺に言うんだよ?」
「沙良を想って黄昏てる柚月ウンザリだしいい加減にしてほしいのよ、エリカもあんたを気に掛けて可哀想だし。 それでダメならダメでキッパリ諦めて次に進みなさいよ? やり方は間違ってたけど柚月が沙良を好きだってのはわかってるからさ」
つまりケジメをつけろってことか。 にしても来たからって部活なんだし会う時間なんてないかもな。
明後日なんてモヤモヤしているとあっという間に過ぎて遂にその日がやってきた。
「ミノムシ可哀想だね! 鈴鹿女子が来るから見に行くって言ってたのに風邪で休むとかって」
「でも柚月にはちょうど良かったんじゃない?」
「そうそう、女装してたなんてバレたらいいネタだしね」
「それよりなんでお前らまで来るんだよ?」
てっきり俺ひとりかと思ってたらエリカ達もついてきた。
「そりゃ柚ちぃに散々脅されてあたし達仕方なく話し合わせてただけですって沙良ぴょんに言いに行くからに決まってんじゃん」
「ミコト意地悪言わないの! 私らも謝ろうと思ってさ。 悪いのは柚月だけじゃないよ」
「エリカはホントに甘いなぁ。 まぁエリカが行くなら仕方ないから私も行ってあげるわ」
「なんかありがと。 そんな気してた」
「あー! お礼言うの恥ずかしかったからって開き直ったな柚ちぃ!」
そして体育館に着いた、ところで肝心の沙良は居るのかな? と思ってバスケ部の試合を見ると居た! ちゃんと来ていた。
俺が沙良を見たと同時に試合中だったが沙良もこっちに気付いて目が合った。
「沙良、パス行ったよ!」
「え?」
沙良の肩にボールが当たって相手のボールになってしまった。
ああ、やっちまった。 これでやらかしがまた増えちまったじゃん……




