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「うわ、激ヤバ! 近くで見ると超可愛い」
「ありがと、沙良でいいよ」
「あたしもミコトでいいからさ、ちょっと抱きついていい?」
「え? わッ、うわッ」
押し倒す勢いでミコトは沙良に抱きついたので転ぶ寸前で踏ん張った。
「わお! 転ぶと思ってたのに」
「ごめん沙良、こういうキャラなの」
「元気良さそうだなって思ってたから大丈夫」
メグミは呆れた顔で沙良に謝るとキッと俺を睨んだ。
ごめんよ、けどこいつにもバレた以上連れてけってうるさかったしさ。 それにミコトは別に引っ掻き回すようなことしないって約束してくれたし。
今日は兄貴はいることになっていてうちの親は居ない、2人揃って出掛けたからだ。 なんて都合がいい、そしてミカは用事があるため来られなかったようだ、これもなんて都合がいい。 これで俺に不審を抱く可能性がグッと下がったような気がする。
「へえ、ここが柚月の家」
「え? エリカは柚月の家で遊んだことあるんじゃなかった?」
「うッ!?」
「うッ!?」じゃねぇーよ! エリカしっかりしてくれよ。
「あーん! エリカってばあたしに負けないようなキャラ作りしようとしてるの〜? 急に天然不思議系キャラに転身?」
「な、なんですってぇ!?」
「沙良気にしないで、学校ではこの2人いつもこうしてよくコントしてるから」
「はぁ〜エリカが。 意外」
ある意味フォローしてくれるのがメグミとミコト2人に増えて良かったと思うべきか。
「それよりいつまでも玄関に立ってないでみんな入れば?」
「そだね! 汚いところですけどどーぞどーぞ!」
「ミコトが言うな」
「あははッ、私の友達も同じようなこと言ってたよ」
どうやら沙良もミコトのキャラを受け入れたみたいだ。 けど問題はここからだ。
「カヅキ先輩いるんだっけ?」
「うん、部屋にいると思うよ」
「あらあらぁー、こんな可愛いJKが4人もいるのに柚ちぃのお兄ちゃんは出迎えもしないなんて照れてるのかな?」
「カヅキ先輩はムッツリ部屋に籠るタイプだからね、いつもそうじゃん」
「へぇ、そうなんだ」
…… ムッツリ籠るタイプとか余計だろメグミ! まぁ俺がここにいたら顔出せるわけないからいいけど。
「こ、ここが柚…… ぶへッ」
「エリカ!?」
「この子便秘が長引いておかしくなってるから」
「うげぇー、お腹の中臭そう」
「メグミ、ミコト!? あんたらなんて…… ううう、ヤバいトイレ行ってくる」
「ええ、エリカ大丈夫?」
「うああッ! エリカ、そこトイレじゃない!」
何故かエリカの方が危うい存在になっている。
「トイレはこっち」
「わかってる、別にトイレに行きたいわけじゃないもん、私なんかテンパってるから余計なこと言いそうで」
「もう言ってる気がしないでもない」
「だから一旦落ち着こうとしてんでしょうが。 って私男の子の家なんていつ…… いつぶりだろう!」
「いや、なんのためにみんなと離れたんだ? つーかトイレにちゃんと行っとけよ、お…… 私戻ってるから」
危ねぇー、こいつとバカしてると素が出てバレちまう。
「柚ちぃどこ行ってたのよぉー、何もない部屋なんだから」
「悪かったわね」
「ねぇ、学校では柚月どんな感じ? 凄くモテそうだけど」
「うーん、そうねぇ」
頼むぞメグミ、ついでに言うとカヅキの男前アップなエピソードとかも追加してくれるとありがたい。
「学校で柚ちぃはねぇ、超可愛いくてみんなから弄られてるよ!」
おい、メグミに聞いてたのにお前が喋るんじゃねぇよ、それにその言い方だと弄られキャラじゃねぇか!!
「意外だなぁ、柚月って私からするとカッコいいってイメージが…… あ! 悪い意味じゃないからね、柚月は美人ってことだから」
「ぷッ……」
「ふふッ」
「え!? え!! なんか変なこと言った??」
「私のイメージ崩すのやめなさいよ!」
ふう、こいつら……
「うんうん! わかる!」
「へ?」
「急に来た」
「ちゃんと手洗ったぁ?」
「確かに柚月はこんなんだけどたまにかっこいいよね」
お前は不自然なんだよエリカ!! つーかいきなりなんだこいつは?
「あ、こんなに騒いで柚月のお兄さんうるさいって思ってないかな?」
「あー、それじゃお待ちかね! カヅキパイセン呼んでこよっか」
「ええ!? ミコトもう兄貴呼ぶの?」
まだ心の準備も出来てねぇのに。
「カーヅーキパイセーン!」
「ちょッ! ミコト!!」
ミコトの後を追って部屋を出ると俺の部屋から2つまたいだ部屋に移動した。
「お、おい!」
「ほらほら早くしないと!」
「ああもう! わかってるって!! つーかなんでいるんだよ? 戻れって」
「あたしが無理矢理連れて来たみたいな感じが自然でしょー? あたしのことは気にしないで着替えたら」
俺は仕方ないのでミコトがジーッと見守る中急いでメイクを落として着替えた。
「ほおーん、柚ちぃ男バージョンそれも私服なんて初めて見たけどなんか地味」
「仕方ないだろ、化粧品とか女物の服に金使ってんだからこっちは適当だ」
「あははッ、めっちゃ本末転倒!」
「うるさい、早くしろよ」
そう言うとミコトは俺の手を握って無理矢理連れて来ました感を出して部屋に戻り……
「お、カヅキ先輩お邪魔してます」
「どうもー」
「あッ、ええとこの前はすみませんでした」
と各々を見るとペコリと頭を下げた沙良、その瞬間エリカとメグミは俺を見て愕然としていた。
なんだ? と思うと2人が目の脇を指差していた。 あ! ホクロ!!
そう思った時沙良が頭を上げるのでヤバいと思ったらエリカが「カヅキ先輩ー!!」と言ってバッと俺に抱きついた。
「え!?」
「あらら」
「はぁ、ごめんね沙良。 エリカってカヅキ先輩見るとああだから」
「え? ああ、そうなんだ」
沙良に苦笑いされてる、くそー! ホクロを忘れるなんてミコトが急かすから悪いんだぞ!!
俺は一旦エリカを引き離して先程の部屋に戻った。
「そんな小細工してるなんてあたし知らなかったぁ、ウケたからいいけど」
「良くない!」




