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「何を言われるかと思ったら呆れるを通り越して失望した」
「エリカは本当に甘いよね、まだ失望するとこあったなんて逆に驚いた」
「返す言葉もないので素直にお願いします」
「この下りもう何回したことやら。 いいよ」
「ちょっとメグミ、それは言い過ぎ…… っていいの!?」
「マジで?」
「何その反応?」
いや、一番グチグチ言ってきそうなメグミがあっさりいいよなんて言うからだろ。
「どんな心境の変化? メグミなのに」
「だよな、メグミなのに」
「2人してなんなのよ、私なんだかんだ言って協力してあげてたでしょ? それにどうせ最終的には全部ぶち壊しになることだもん。 もうどうなるか見ててあげるわよ」
「怖いこと言うなよ、まだどうなるかわかんないのに」
「いや、柚月自分から破滅に向かってるって自覚ある? もしだよ、もし今の柚月を沙良が好きになったって女の子の柚月のことどうするつもり? っていうどデカ過ぎる壁があるわよね」
「それは……」
考えたくないから考えてない! なんて言えるほど割り切れてないしなぁ。 とりあえず今どうするかで手一杯だ。
「ほら無計画、そもそも嘘つき始めた時点でそうだよね? ちゃんと考えてたらこんなことになってないもんね」
「全くその通りで」
「そんなんじゃ慰めてくれるのエリカくらいしかいないわよ」
「だから私を引き合いに出すな!」
はぁ、なんとかエリカとメグミに協力をしてもらえるってことでいいんだよな? あっさりいってくれて助かったけど。
「んあー! 柚ちぃじゃん、こんなとこにいたのー!?」
「あ、うるさいのが来た。 売店なんかで話してるからよ、余計なこと言って巻き込まれる前に行くよエリカ」
「ちょッ!? 私的には知らないとこで余計な何かしてるんじゃないかってのがよっぽどムカつくのに!!」
メグミはエリカを連れて離れて行った。 俺もその後に続こうと思うとガシッと肩を掴まれた。
「柚ちぃ、今ヒマ?」
「ヒマに見えるか?」
「見える見える! おーい、あたし柚ちぃと校内デートしてくから帰ってていーよ」
ミコトはギャルグループに手を振って俺にしがみついた。
「デートって俺は忙しい」
「ダメダメ、お付き合いしてもらいます」
ミコトは俺の手を引きスタスタと廊下を歩いていって誰もいない多目的室に入るとドカッと机にパンツを見せながら座った。
「パンツ見えてる」
「あ、ほーんと。 まぁそんなのはどうでもいいや」
「いや、気が散るんだけど」
「パンツにどうしても目が行っちゃう? いやーん」
いやーんするならその前に隠せばいいのにってこいつには羞恥心がそんなになかったわ。
「ところでさ、そんなことよりあたし面白いもの見つけちゃったんだ」
「面白いもの?」
そう言うとミコトは俺に携帯を見せた。 そこには……
「これどこで!?」
「見ればわかるでしょー?」
この前沙良と行った時のカフェで俺と沙良が映っている画像だった。
なんでこいつが?? ってそんなのこいつもそこにいたからしかないだろが!
「油断したねぇ柚ちぃ、もうちょっと気をつけなきゃあ。 まぁ3人して何か隠し事してるとは思ってたけどこういうことか」
「こういうこととは?」
「やだなぁ柚ちぃ、柚ちぃはこの画像にある通りよく女の子の格好して外歩いててここに写ってる謎の美少女と遊んでるってことでしょ? 様子を見るに奇跡的に相手は柚ちぃを男の子って知らないで遊んでるか知ってて敢えて遊んでるってとこ! どぉ? あたしの推理!」
当たってる…… 見抜かれたミコトに。 どうしよつ格好のネタだ、マズイデスヨコレハ。
「ははーん! ぐうの音も出ないようですな、ところで……」
来るか脅し……
「超おもろいじゃん!!」
「は?」
「柚ちぃが美少女騙くらかして1発ヤルって寸法だよね!?」
「…… いや違うぞ」
「違うの!?」
あらぬ方へ誤解してるかもしれんミコトにもう隠し事は無駄だとこれまでの経緯を話した。
「ほぉーほぉー、ふぅん」
「てことで俺はただ純粋に沙良が好きになって沙良を傷付けたくないからなんとか上手くだま…… いや丸く収めたくてさ」
「さ、さ……」
最低か…… もう何度聞いたことか。
「サイッコーにサイコじゃん柚ちぃ!」
「へ?」
「言ってることとやってること全部ちぐはぐでそれでいてまだイケると思ってるなんて! あはははッ! 最低通り越してるよ」
「いや俺そんなサイコ野郎じゃないんで。 普通に最後は沙良と笑って付き合えるようになりたいと思ってるんだけど」
「どんなどんでん返しそれ? 超ポジティブ思考じゃん、いやでも見直した!」
「見直されたの初めてだわ、エリカとメグミには呆れ果てられてんのに」
「柚ちぃ可愛い顔してとんでも野郎だったんだからねぇ。 エリカ達はそう言うだろうけどこんな面白そうなことしてるなんてズルいぞ!」
ミコトは俺のおでこを人差し指でグリグリと押した。
「あのさミコト、このこと黙っててくれな」
「イヤだ」
「え?」
「イヤだって言ったんだよ」
俺の言うことがわかってるのか被せ気味に否定しやがった、嫌って黙っててくれないのか? 嘘だろ!?
「頼む! お願いだ!!」
「イヤったらイヤ」
俺の悲願を打ち砕くようにミコトは手で俺の胸をドンと押した。
「そうだなぁー、どうしても黙ってて欲しいなら明日から女の子として学校に通ってきてよ」「は? それって……」
それってもう俺の学校生活終わりじゃん。 第一そんなことしたら噂が広まってどこからか沙良の耳にも入るんじゃ。
「…… それは無理だ」
「その子にバレたくないから?」
「うん」
「その内バレるかもしれないのに?」
「うん」
「今は嫌われたくない」
「うん」
「そっか、でも言うこと聞かないんじゃねぇ」
ああ、こいつにここまでバレてこんな風に言われたら明日から学校中に広まりそうだ。
「なんて嘘だよんッ!」
「…… はぁ!?」
「今のはあたしに黙ってた罰〜! そのうちホントの罰が柚ちぃに下るかもしれないけどさ、あたしがそんな面白そうなこと壊すわけないじゃん」
「驚かすなよ、終わったと思ったじゃねぇかよ」
「ある意味凄いよね柚ちぃ、どう考えても詰んでるのにさ! あ、それとあたしも参加させてよその沙良って子騙すの」
「騙すって言い方やめろよ、俺はそういう気持ちで沙良に嘘ついてるわけじゃないし」
「うーん、まぁいっか! それでそれで……」
こうしてミコトにまで全部バレてしまった。




