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一難去ってまた一難、沙良とミカに出会ってしまった。
「そっかぁ、柚月はいないのかぁ」
「まぁ仕方ないよ」
アポなしで来れば普通に考えて沙良が部活やってたら帰りに俺と学校で会うなんて無理なんだけどな。
まぁ本人も薄々そう思ってたみたいだしここはお引き取り願おう、俺としては沙良の顔見れてラッキーだが沙良本人はガッカリしていた。
「なんかごめんな、せっかく柚月に会いに来てくれたのに」
「はい……」
「あ、そうだ! エリカとメグミはまだ居たりして!?」
ミカが余計な一言を言った。 マズい、今2人に会わせたら怒ってるから俺のことバラしちゃうかも。 それだけはダメだ!
「エリカとメグミももう帰ったと思うけど」
そう言うと2人ともキョトンとして沙良が口を開く。
「ええと……」
「カヅキでいいけど」
「あ、じゃ、じゃあカヅキ先輩」
先輩…… 沙良に先輩と呼ばれるのも悪くない。 俺は柚月だけどさ。 にしても沙良のこの初々しい感じめちゃくちゃいい!
「カヅキ先輩は2人と仲良いんですか?」
「たまに柚月に会いに家にあいつらも遊びに来るからさ、それにさっき帰るとこ見掛けたし」
「そうなんですか」
俺の予想だとまだ2人は学校に居るかもしれない、ここで行かれたら終わりだ。 ここはなるべく穏便且つホッコリして帰ってもらおう。
「2人とも柚月と仲良くしてやってくれてありがとな」
「え?」
「柚月って取っ付きにくそうな…… まぁそれは俺に対してか、でもうちの家族にもよく沙良ちゃんとかミカちゃんの名前出して楽しそうに喋ってるからさ。 本当仲良いんだなって」
いやぁ、失言だらけだったけどこういうセリフはポンポン出てくるなぁ。 もはや嫌われる未来しか見えてこないけどまだだ、まだ終わらんよ。
言うと沙良はガッカリ顔から少し赤くなって「そっかぁ」と笑みを溢した。
「なんか柚月に会いたくなっちゃった」
な、何ぃッ!? 前言撤回、失言だった。
「カヅキ先輩」
「はいなんでしょう?」
ドキドキ……
「少し柚月に会ってってもいいですか?」
「……」
「ええ? これから行くの?」
ほらやっぱり…… ミカなんとかしてくれ。
「うん、ちょっとだけだから。 いいですかカヅキ先輩?」
「う、うん(泣)」
ヤ、ヤバい! 空前絶後のヤバさだ! 今のメグミならザマァwwwと抱腹絶倒しているだろう。 どうする、どうすれば……
「やったぁ! 柚月ビックリするかな!?」
「そりゃいきなりお兄さんと来たらね」
盛り上がっちゃってるよ。
俺がゆっくりと歩き出すと2人は後ろからついてきた。
ここからやっぱり連れてくのやめたなんて言えないし。 かと言って家に連れてっても沙良が待つ柚月なんていないし。
俺は出来るだけ遅く歩いていたが家までもう少しという距離まで来た。
もうダメだ、ここまで来てしまったら俺はもうあの手を使って諦めさせるしかない。 これをやったら沙良にドン引きされるか嫌われるかどっちもかもしれないけど沙良が好きな柚月は残る。 ぶっちゃけそんなの意味はないけどこの場を凌ぐには……
「沙良ちゃん」
「はい?」
突拍子もなく話し掛けると沙良は何かな? という感じで笑顔で返事をするので少し気が引けた。
「沙良ちゃんって可愛いね!」
「へ? あ、どうも……」
「??」
そんなことをいきなり言うので2人は少し不審がった。
「柚月が夢中になるのなんとなくわかる気がするよ」
「ええと、カヅキ先輩って彼女さんいましたよね?」
「ああ、ついこの間別れちゃってさ」
そう言うと2人はなんとも微妙そうな顔をする。 まぁだからなんだよ? って思うよな。
「それは…… えっと、すみません」
「沙良、帰った方が良くない?」
コソッとミカはそう言うが聴こえてるよー…… それでいいんだが。
「なんか沙良ちゃんと少し似ててさ、見てると思い出してきちゃって」
「わ、私にですか!?」
なんてとんでもな嘘だ、我ながら適当過ぎる。
俺は少し沙良に近付くと2人はその分後退る。 ぶっちゃけ傷付くその対応、でももう少し。
「さ、沙良…… 帰ろう?」
「あ、その…… うん。 カ、カヅキ先輩! ごめんなさいッ!!」
そして2人は小走りで俺の元から去って行った。
「ふ、ふふふ……」
なんとかなったのと沙良とミカにドン引きされたかもしれないという複雑な感情が入り乱れた悲しい笑いが出てきた。
悲しいがこれはこれで良しとしよう、沙良の顔も見れたわけだし。 それに早いとこエリカとメグミと仲直りしないとまたこういう機会があったら次はなさそうだ。
というかミコトとエリカとメグミのことまであると考えると頭が痛くなってきた。




