26
「ああん、柚ちぃ動かないでよぉ」
「あ、これも付けてみる?」
「わあ、まつげバサバサ! うちらより可愛いんじゃない?」
「そうだ! 制服貸してあげようよ、それで校内歩いちゃわない?」
「あーでも柚ちぃ170センチ以上あるからあたしらの制服じゃキツキツかも」
「お前ら好き勝手しやがって」
前と同じで俺はミコトのギャルグループでおもちゃにされていた。 だから嫌なんだよこいつら。 それより……
「パンツ見えてんだけど?」
「え?」
真正面にいるミコトが思い切り脚を広げてるから。 隠す気ないのかよこいつ!
「可愛いっしょ? このパンツ」
「やめなよミコト〜、柚月見せパンわかんないみたいだし」
見せパンでもパンツはパンツじゃねぇか……
「ありゃま、柚ちぃには刺激が強いかな? てか女の子って感じだから警戒心まったくなかったわ、あはは」
「確かに! 前もそうだったけど超美人じゃん。 こりゃ男でも落ちるわ」
「もう散々弄らせたからいいだろ?」
「いやん、今度は制服着てもらいたいの!」
「また今度な! 今日は終わりだ」
ギャーギャー喚くミコトグループを見てここが売店で良かったと思う。
だって実とかに見られたらアウトだからな。 ちょっと化粧の感じが違うけどこれは柚さんだ、だからさっさと化粧を落とそうとメイク落としを取り出したところで俺はしくじっちまった。
「あれ、柚ちぃなんでメイク落とし持ってんの?」
だよなぁ…… そうだよなぁ俺のバカヤロー!!
ミコトは俺のメイクを落とそうとして自分のメイク落としを持って不思議そうな顔で俺を見ていた。
ここからミコトグループが思うことは俺がこいつらに感化されてもしかして普段から化粧とかしてる? とか……
「こ、これはお前が顔弄らせてねって言うから自分で準備してたんだよ」
「え? 柚ちぃが??」
ぐぐぐ、強引だったか?
「やぁーもう! 弄らせる気満々かよ柚ちぃ! 可愛いんだからぁ」
「あれだけブーたれてたのにね」
「いやいや柚月も男なんだしさ、うちらに囲まれて嬉しいんだって。 だって触り放題だもんね〜」
「なんだなんだ柚ちぃ実はこれを狙ってたのかぁ、可愛い顔して油断出来ませんなぁ、うりうりぃ〜!」
ふう、誤魔化せたか。 前から感じてたけどギャルってなんか押しが強いな、俺にはちょっと馴染まない。 沙良やエリカも見た目はほんの少しそれっぽいけどこんなんじゃないし。
「はぁ〜」
「そうそう、メイクを落とした後にも美容液を塗ってしっかりケアしてって、んん?」
し、しまった、習慣って恐ろしい。 何気に家でやってることと同じことしちまった。
「おやおや〜、随分手慣れてますなぁ」
せっかく誤魔化せたと思ったらこれだ。
「い、いやそれは普段からやってるから。 肌弱いから気をつけてるんだ」
「そっかぁ、だから柚ちぃは肌綺麗なんだね」
「女子より綺麗だよね」
「あはは、うちら盛りに盛ってるからね」
正体バレてないやつと絡むと息が詰まるな。
「じゃ俺帰るわ」
「そんな逃げるように帰らなくてもいーのに。 あたしらが可愛がってあげるからさ」
そうして帰ろうと売店から出ようとするとバッタリと……
「げ…… エリカ、メグミ」
「あ、おい〜ッス! エリカとメグミもこっち来なよ、これ見て見て。 柚ちぃめっちゃ可愛くしてあげたんだよ」
会っちまったよこの状況で。
「へぇ、私らがダメとなると今度はミコト達? だったら知ってる?」
「あーーーッ!」
「うえッ!? 柚ちぃ今日一番の大声あげてどしたん?」
メグミのやつ今言おうとしたな!?
「な、なあエリカ、この前のことは」
「なんのこと? ああ、私はタイプじゃないって言ってたっけ?」
「いやだからそれは」
「あ〜! そんな険悪ならあたしが柚ちぃ貰っていいかな?」
「別にいらないし。 ねえエリカ?」
「あ、うん……」
「ほら、こう言ってるしお好きにどうぞ」
そう言って2人は行ってしまった。
俺学校内以外でも沙良とのことがあるんだけどどれだけ悩み事増やすんだよ……
「おい、全然効果ないんだが?」
「かあ〜ッ! ダメだね柚ちぃ鈍感過ぎ、あれはまだ脈アリな感じだよ」
「でも行ったけど?」
「そりゃあアッサリと行くわけないじゃん、柚ちぃはエリカに別に好意はないんでしょ?」
「まぁそうだけど…… 友達だよ」
夏休み何回か遊んで俺はエリカとメグミをただの知り合いから友達になったんだと思ったのにミコトを適当に誤魔化すために言った一言で全て台無しになるのかよ?
思えば誰かに嘘つく度にしっぺ返しを食らってるような気がするけど俺も今後に引いたら悲惨なことになるのは目に見えてるし。
「おやおや思ったよりションボリ?」
「別に。 忙しいから行くわ」
「へーい。 じゃあまた明日ね柚ちぃ」
そして校門を出て少し歩いていると前から見たことあるシルエットがふたつ見えた。
あ、あれは…… 沙良にミカ!? なんでこうも立て続けに。
俺は2人に気付かれる前にポケットからある物を取り出した、前みたいにアイライナーで描いたホクロなんて明るいところじゃバレるからとメグミがくれた付けボクロだ。
いやー、あいつは気が利くなぁ。 今じゃ敵対心しかないみたいだからなんとかしなくては。 なんて考えていると……
「あれ、もしかして柚月のお兄さんですか?」
「はい?」
付けボクロを付けた瞬間に話し掛けられた。
おいおい沙良、俺がそっくりだからって男が苦手なお前から話し掛けるなよ、こっちは2人がここに居る時点でビックリしてるんだから。
「あ、やっぱり!」
「どうも」
隣に居たミカはペコリと頭を下げた。
「沙良ったら男の子苦手なのに柚月のお兄さんなら大丈夫みたいね」
「あ、ええと…… まあね!」
「それよりどうしてこんなとこに?」
「ちょっと柚月を驚かそうと思ってサプライズです」
「ほ、ほぉ〜」
そういや夏休みに言ってたな、突撃で遊びに行こうかなと、それが今だったみたいだ。
「ところで柚月は…… って」
沙良が何か言い掛けたが途中でミカにコソコソ耳打ちする。 なんだ?
「あ、いえ、その柚月ってまだ学校にいます?」
ああそうか、俺が知ってるわけないと思ってるな、そんなに仲良くないって言っといたし。 だったらこうだ!
「多分帰ったんじゃないかな? あいつ俺が帰ると大体家に居るし」
部活とかやってないしミコトらに絡まれなければとっくに帰ってるもんな。 沙良は部活帰りだろうしいなかったらそれはそれで仕方ないかって感じで来たんだろう多分。
「やっぱりかぁ〜」
「だから連絡なしで行けばそうなるって言ったじゃんバカ沙良」
「ごめーん!」
なんかちょっと可哀想だけど俺がここで沙良の柚月になれるわけないのでここは諦めて帰ってもらうしかない。




