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「じゃあまた今度ね」
「うん、今度は柚月の家で女子会する?」
「あ、あは〜、考えとく」
時刻は16時ちょい過ぎ、あれから何事もなく沙良は帰っていった。 どっと疲れた、俺の家での女子会は兄貴がキモいから無理ということにしておこう。
兄貴を持ち出す度に相対的に自虐へと繋がっているのがキツいところだ、沙良の好感度がどんどん低くなってそう。
とはいえ乗り切った、これで沙良も満足してくれたろう、なんせ一回は俺の家に来たんだ。
それにしても…… ナプキンの件以外なんもなかったなぁ。 それは当たり前なんだけど本当に何もなかった、沙良の家でのあったようなこととはいかないまでも何かしら期待はしてたんだけど。
てか何を期待すんだよ? 何かあったらまた沙良が悩んでしまうだろ、そしたらまた逆戻りだし。
その後の夏休みは結構沙良と遊んだ、ギクシャクしたのを取り戻すかのように沙良からお誘いがあったのだ、その内何度かエリカとメグミも交えて。 そして次第にエリカとメグミとの仲も良くなっていったがエリカとメグミから「いつ打ち明けるの?」と言われ続けた。
「よぉ久しぶり!」
「いてッ」
夏休み明けの朝、教室に行くと実のラリアットが飛んできた。
お前が好きな柚さんに暴力行為とはこいつはいつまで経っても柚さんから好かれることはないな、まぁ何があってもそんなことはないけどな。
「お前変わってないなぁ」
「ああ?」
そんなことを言う実を見ると若干肌が日焼けしていた。
「海にでも行ったのか?」
「おう、やっぱ少しは肌焼かないとナヨっちくて女が寄ってこないと思ってさ」
「関係あんのかそれ?」
海か、沙良に誘われたけど俺が沙良と海なんかに行ったら即バレだからな。 だからどうしても行けなかったんだよなぁ。
「お前も少しは日に焼けろよ」
「焼けたくても赤くなって元通りだから焼け損なんだよ」
「可哀想なやつ」
男を好きになってしまったやつに可哀想と言われるとは。
「柚月〜!」
甲高い声で肩に手を掛けられたやつを見るとミコトだった。
「で? どうだった、あたしのアレ少しは役に立った?」
「アレ? アレッて何?? それよりミコト、俺ってどう?」
「どうって? 地味じゃね?」
「ガーーーンッ!!」
「それより柚月〜!」
実がいる時に込み入った話やめろよなまったく。 そう思ってると俺の耳にミコトはそっと呟いた。
「エリカとヤッた?」
「はぁ!?」
「あははッ、その様子じゃまだなんだ?」
「まだも何もそんなんのためじゃないし」
「またまたぁ〜ッ! ん?」
今度はミコトが肩に手を掛けられる、エリカに……
「ミコト〜ちょっといいかな?」
「ありゃエリカ、何か用?」
「わかってるんじゃない?」
「あはッ! じゃあまた後でね柚月」
ミコトはエリカに廊下に連れて行かれた。 面倒な奴だけどミコトがいて助かったのは事実だ。
そして新学期の授業中うたた寝しそうになるとポケットに入れていた携帯が振動したのでコソッと携帯を取り出し見てみると沙良からメッセージだった。
『授業チョー退屈』
そうか、沙良も同じ気持ちかと思って表情が緩んだ。 それから沙良としばらく授業中メッセージのやり取りをしていた。
「柚月」
「うん?」
授業が終わってトイレに行こうとして廊下に出るとミコトが話しかけてきた。
「ねえねえ、授業中ずっと携帯弄りっぱなしで誰とイチャイチャしてたのかなぁ〜?」
「どうせエリカって言わせたいんだろ」
「いやぁー、エリカにどうだったって聞いてみたけど態度から察するにそうじゃないみたいなんよねぇ、どゆこと?」
「俺が知るわけないだろ」
「あ、誰がエリカとメグミの連絡先教えてあげたんだっけ?」
この野郎弱みにつけ込みやがって。
「ただ単にエリカは俺の好みじゃなかった、それだけだ」
「うわぁ〜…… うわ」
俺の言うことにわざとらしく引いてみせたミコトはもう一段回引いた反応をした。
え? 何?? と思ってミコトの目線の先を確認するとなんと俺の斜め後ろにちょうどエリカとメグミが立っていた、うわぁ〜……
「柚月、それちょっとありえなくない?」
メグミが静かに怒りを込めて言っているような口調だった。 対するエリカはメグミの服の端を摘んで少し震えていた。
「うわッ、修羅場じゃん」
サラッと軽く言うミコト…… お前のせいだろがいッ!!
「最低」
エリカはポツリと呟いて俺の横を通り過ぎて教室に戻った。
「ほんと最低、なんでこんな奴に協力してあげてたんだか」
メグミも俺の横を通り過ぎる時ボソッと言った。
「協力? なんの協力??」
「今聞くことそれか?」
茫然と立ち尽くす俺は何か興味津々なミコトに邪魔されて状況をどうしようかという思考すら出来なかったままその日の授業が終わった。




