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「なんだかんだ言ってなんか沙良と女子会ってドキドキするね可愛いし」
「俺は腹痛くなってきた」
「あれー? 柚月にも女の子の日あるんだ? なら大丈夫じゃない?」
「いや緊張」
「メグミも意地悪ばっか言ってないで何買っていいか決めてよ」
沙良達と遊ぶ当日俺達はコンビニに行ってお菓子とか買おうとしていた。 エリカは普通に選んでいるのだがメグミときたら……
「やっぱ女子会といえばお酒でしょ」
「お前酒飲むのか? 沙良に嘘つく罪悪感とかあるくせにそっちの罪悪感はないのか?」
「失礼な、酔わせて判断力なくして柚月の失言に気付きにくくする最良の手じゃん」
だからそっちの罪悪感ないのかと聞いてるのにまったくこいつは。
「メグミお酒強いもんねぇ」
「強いもんねぇってダメだろ」
「意外と柚月真面目ー! 私もちょっとは飲めるよ」
「そういう問題じゃねぇだろ、大体沙良の親がそんなの許すはずないだろ」
「せっかくいい方法なのに。 酔わせる手はダメかぁ」
ムスッとメグミは酒を戻した。 何考えてんだかこいつは。
そして適当なお菓子を選んで沙良と待ち合わせの駅に行くと沙良とミカはもう駅で待っていた。
「きゃー沙良! 久しぶり!」
「エリカ、メグミ久しぶり、会いたかったよぉ。 こっちは私の友達のミカだよ」
「今日はよろしくね」
「わお、流石鈴鹿女子。 沙良といいレベル高いわ、メグミでいいからね。 エリカも適当にそう呼んでいいよミカ」
「ちょっと雑! それでいいけどさ。 よろしくミカ」
「うん。 てか沙良」
ミカが俺を見て沙良にコソコソと話している。 この前会った人じゃん! とか言ってないよな?
「うんうん、でしょー? そっくりだよね」
「ああ、柚月ね。 もう慣れっこだよね柚月」
「え? うん」
「あ、コソコソごめん。 それと沙良が言ってた通りほんとに美人でビックリ。 よろしく、ええと……」
ふぅ、なんだそっちか。
「柚月でいいよ、こっちこそよろしくねミカ」
そうして軽く自己紹介した後そこら辺でショッピングしたりご飯を食べたりして沙良の家に向かった。
沙良の家に行く途中……
「柚月!」
エリカが俺の服をグイッと引っ張って他の3人と少し離して静かに喋った。
「今日は急用が出来たとか言って帰った方が良くない?」
「え、このタイミングで?」
「だって私見てらんないよ、いつ柚月が男だってバレるか」
「だからエリカとメグミに前もって相談したんだろう?」
「それはそうだけどさ」
そんなことを話しているとメグミが勘付いてこちらに寄ってきた。
「もうここまで来たら覚悟を決めるしかないわよ、バレる覚悟をね」
「ちょっとぉー、バレる前提やめてよね」
「お前今までのちょっといい雰囲気ぶち壊しにする気か?」
「バレたくなきゃ2人ともそのソワソワやめなさいよ」
「ゆーづーき!」
途端に沙良が詰め寄ってきた。
「3人でコソコソずるいー! 私とミカも混ぜてよぉ」
「沙良の家ってどんなとこかなって」
「大したとこじゃないから緊張しないで」
「もぉーミカが言う?」
沙良達と俺達には微妙な温度差があるな、隠し事をしているのと知らないのとで。 エリカは言わずもがなメグミも何気に気を配っていてくれてる。 気を付けないと……
現状一番頼りになるのはメグミだ、エリカはちょっと感情が表に出やすいというか意気込みは感じられるんだけどって…… 突然の味方考察よりもこの場を乗り切らなくては。
「着いたよここ!」
「わぁ、タワマンなんて流石鈴鹿女子」
「あははッ、見た目ほどでもないから。 行こう」
「だからミカがそれ言うな!」
そしてエレベーターで登り沙良の家に着いてようやく俺達は腰を落ち着けた。 つーか沙良の部屋だ、というか家全体からいい匂いがする。 これが女子の家……
「ここが私の部屋! じゃあその辺でゆっくりくつろいでて」
「柚月ジロジロ見ない!」
「柚月なんかキモい」
「あはッ、柚月だけなんでそんなに責められてるの?」
エリカとメグミに注意される、くそ…… わかってますとも!
「この子見た目は美人だけど中流階級以下だから」
「ぐぬッ……」
メグミの奴余計な設定盛りやがって。
「お待たせ!」
沙良はお菓子を持ってきた。 クッキー…… もしかして沙良の手作りだったりして?
「上手く焼けたんだ、食べて食べて!」
「へぇ、沙良ってお菓子も作れるんだ」
「わ、私もこれくらい出来るよ柚月!」
「なんでそこで対抗意識燃やしてんの?」
「はい、柚月あーん」
沙良が俺にいの一番でクッキーを差し出す。 やっぱ沙良が作ったのか。
「美味しい?」
「美味しい、すっごく」
「良かったぁ」
「沙良めっちゃ気合入れてたもんね」
「ミカァー! それ内緒!」
いい感じで沙良と俺達は沙良の家でワイワイキャッキャと盛り上がった。
なんだこの空間……
この瞬間だけは女子に産まれてきたかったと思った。




