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結局あの後沙良は俺と一緒に帰るということになって実達が帰ったあとは沙良と2人で公園にいた。 ユウヤの奴…… 何か引っ掻きましてくるかと思ったら空気みたいな奴だったな。
沙良が積極的ではなかったので話はさほど盛り上がらず…… というか適当に帰らなきゃと言って引き上げたのだが。
ところでそんな沙良は少し浮かない顔をしていた。 思えば俺が嘘の高校を言った時からだった。
「なんかごめん」
「ん?」
沙良がいきなり謝ってきた。
「私って前言ったみたいに男の子苦手でしょ? なのに行ったりして。 見てて思った、私居ると話し難いだろうなって」
「あー、そんなことないとは思うけど。 沙良が凄く可愛いからそんな風なところも可愛いって思ってたと思うよ多分だけど」
「そうかなぁ?」
「あの2人顔デレデレしてたし間違いないよ」
今日は精神的に疲れ果てた。 ちょっと外に出てくるつもりだったのにどうしてこうなった。
「あ、それと柚月!」
「何?」
「さっき…… んーと実君だっけ? 嘘ついたでしょー?」
「それね…… ちょっと高校を教える勇気はなかったかなぁ」
実が出しゃばって自分は城内高校とか言わないで良かった、沙良は実のことはバスケ部の練習試合の時に見ているはずなんだけどまったく記憶に残らなかったようだし。
「でも嘘は良くないよぉー! もしバレたら相手は傷付くんだからね」
「はいはい、ごめんなさい」
なんて心にくること言うんだ、もう俺の存在自体が嘘なのに。 これを沙良が知ったら傷付くどころじゃなくなるような……
自然消滅、エリカやメグミが言ってたことを思い出す。 もし自然消滅したとして男の俺として沙良とやり直せるか? いやいや無理だ、だって男の俺は柚月の兄貴ということになってるし。
「もしかして不安?」
「うん…… って何が?」
「柚月考え込んでたから。 何かあったら私に言ってね! 隠し事はなしだからね」
「う…… うん、じゃあその時はよろしくね」
その時ってなんの時? 隠し事なしか、だったらここで沙良にバラしちゃうか? そしたらまだ傷は浅…… くもないけどまだマシなんじゃないか?
「柚月ッ!!」
「ひゃッ!」
また沙良はひっついて来た、女子だからと思って遠慮がないんだろうけどヤバい、今日はスキニーパンツだし盛り上がってしまったらバレる、というか沙良のお腹に当たってしまう。
「んん? なんか硬いものが」
めちゃくちゃ密着するからあっさりと予想が的中してしまった。
「け、携帯だよ」
「あ、ほーんと。 てかどうしたの? しゃがみこんで」
「や、ちょっとお腹が痛くて」
「え、大丈夫!?」
「大丈夫、いつものことだから少しすれば引くよ」
そう言うと沙良は理解したのか「ああ」と言って俺の背中をさすってくれた。 俺はよくわかんないけどな!
「だから柚月今日ずっと顔色悪かったんだねぇ」
ああ、ずっと気が気でなかったからな!
「汗も凄いよー、無理してない?」
「してる」
「え?」
「な、なんでもない!!」
危ない、沙良が心配そうに見つめるから今なら許してくれるかもと思ってうっかり口走ってしまうところだった。 言うのはダメだ、自然消滅じゃなきゃ。
「ようやく落ち着いてきた」
沙良にはないところが。
「良かった、トイレ寄らなくて大丈夫?」
「うん、今日は沙良の顔も見れたし帰ろうかな」
「ええー? 柚月私に会いたかった?」
何がツボにハマったのか知らんが沙良はニヤニヤして俺に迫ってきた。
「まぁ髪も切ったし沙良に見てもらいたいなぁって思ったしさ」
「柚月が切ったの? 上手だねぇ、私も後で切ってもらおうかなぁ」
「え〜、私は沙良の髪長いの好きだから切るならお金取るよ?」
「友達じゃーん。 てか最近寂しい思いさせてごめんね」
その瞬間沙良が俺のほっぺにチューをした。
「えへへ、お詫び」
「ははは……」
俺今何されたんだ? 沙良は何したんだ? なんのつもりで?
「じゃあ柚月も」
沙良は頬を俺の顔の前に持ってきた。
これはッ!! 俺達女友達だぞ(女ではない)!? こんなことあっていいのか?
俺は荒ぶる心を落ち着けて無我の境地のつもりで沙良のほっぺにチューをした。
「あー、そういえば私初キスだった。 まぁ柚月ならいっかぁ」
「わ…… 私も」
言わなくて良かった。




