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女装恋愛  作者: 薔薇の花
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さて夏休みに入って数日、沙良から頻繁に連絡があるだろうと俺は踏んでいた。 けどない、全然ない。 俺はもしかして沙良に飽きられたのだろうか?



そんなはずはない、沙良は最後の帰り際「夏休みになったらいっぱい遊ぼうね!」と眩しい笑顔で言っていた。 なんだろう、部活かな?



「しゃあないッ!」



俺は携帯をベッドに投げて鏡の前に立ってクルッと回り顔を近付ける。 別にナルシストではない、そろそろカツラを被るのはやめようかと思っていたのだ。



長い髪は好きだけど今年は暑すぎる、沙良の前で熱射病で倒れたらシャレになんない。 切らないで伸ばしていたので中期のミ◯サくらいの髪の長さがある、分け目を作って更に見る。 



うーん、前髪は作った方がいいな。 



ハサミを取り出して前髪を作っていく。 眉毛の上くらいまで切り薄く切っていくとあら完成。



なかなか良いんじゃないか? 美容室いらずだな俺。 なんか可愛いぞ! 



その調子で化粧をしていく。 



おお! かなり良いじゃん。 沙良に見てもらいたいな、けど連絡もないし。



そう思った俺は久しぶりにひとりで外に繰り出し歩いてみることにした。 今日はメイクはケバいが黒スキニーコーデで簡単な出立ち、もちろんレディース用。



けどこの方が動き易いしなんぼか涼しい、部屋を出る時制汗スプレーを全身に浴びていたのでまぁちょっとマシ。



いやぁー、久しぶりだなぁこの感じ。 途中で何も考えることなく普通に女子トイレへイン。 おっと…… こういうとこだった、エリカやメグミに指摘されたのは。



いけないいけないとデパートへ行って涼しそうな服でも見に行った(勿論レディース系)。 特にめぼしい物もなかったので服屋を出てウロウロしていると……



「なんか腹減ったなぁー」

「適当にそこのフードコートで良くね? 安いし」

「だな」



なんか聞き覚えある声だなぁとその方向を見るとなんてこった、実じゃねぇーかぁ! 



視線を感じたのか実はこっちを見たので俺はさっと顔を伏せる。 だが遅かったみたいだ、こちらに向かってくる足音が聴こえる。



「柚さんじゃない?」



おいおい、クラスメイトの顔と柚の顔の見分けつかない奴がなんでそこから柚がわかるんだよ!?



「はい?」



無駄だと思うが軽薄な返事をする。



「ほらやっぱり!」

「き…… 奇遇だね実君。 友達?」

「そう、高校は違うけど地元の友達のユウヤ。 こっちは前に言ってた柚さんだ」

「どもッ! すげぇ、めっちゃ美人じゃん」

「はは…… よろしく」



他校の生徒で良かったよ、同じ学校の同級生だったらかなりヤバかった。



「あれ? そういえばひとり?」

「あ、うん。 ちょっと買い物」



そう言うと実は少し考えて言った。



「もし良かったらこれから飯なんだけど柚さんも一緒にどうかな?」

「ええ? 私いたら邪魔じゃない?」

「邪魔じゃないよ、むしろ嬉しい。 な、ユウヤ」

「おお、大歓迎!」

「あ、でも私これから用事で」

「大丈夫、ほんの少しの時間!」



パンと手を合わせて頭を下げてきた。 



お前…… 俺は彼氏いるんだぞ? いないけど。



強引に誘われて実とその友達と飯を食う羽目になってしまった。 ああーー!!



だがそれは地獄の入り口だったのだ。



「私はこれでいいや」

「え? サラダだけってそれで足りるの??」



とっとと食べて退散したいんだよ! そうして私だけサラダが来たので食べようとすると2人の視線を感じ、見上げると……



「何か変?」

「い、いや全然!」

「そう! ホントここらじゃ見ないくらい美人だなぁって。 実がいてぇッ!!」



ユウヤが何か言おうとすると実に頭を叩かれた。 おおよそ予想は付くけど。



「ありがと。 でもちょっと食べ難い」

「お前が見過ぎなんだユウヤ!」

「いやお前だろ!」



そうこうしているうちに2人が頼んだ料理も来た。 



はぁー、これで普通に食べれる。 



すると数人の女子のグループがフードコートにやってきた。 このジャージ見覚えあるぞ、うちの学校で見たことある。 そして俺の正面側には……



「あー! 柚月!」



その声にビクッとして顔をテーブルに突っ伏した。 会いたいとは思ってたけどこういうシチュエーションじゃない、どちらかというと最悪の展開だ。



「あれって確か鈴鹿女子のこの前来たバスケ部のメンツ…… 柚さん知り合い?」

「そ、そうなの。 終わった」

「へ?」



小さくポツリと言った言葉は聞こえてないみたいだけど本当に終わったかもしれない。 矛盾だらけだこのパーティ。 



自分の中でついた嘘のおさらいをすることにした、その間5秒……



俺は柚月の近くに住んでる柚さんでそんでもってオトコオンナ、実には柚さんだけど沙良には柚月。



こいつと同じ学校だと沙良には話しているが実はそんなこと知らない、これを言われてしまえばアウト。



あとは…… あとはないか? 触れられてはいけないことは?? いやそもそもどうするこれ? 俺はここから無事に退散できるのか??



「あれ? 柚月…… その人達はお友達?」

「え…… と」

「柚月? 柚さんじゃなくて」

「あ、えっと……」

「うわぁ、鈴鹿女子って噂通り可愛い」



1人だけどうでもいいことを言っているユウヤを無性に殴りたくなった。





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