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女装恋愛  作者: 薔薇の花
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ご覧いただきましてありがとうございます、チビチビと書いていくのでよろしくお願いします(^^)

  

俺はちょっとおかしいのか? いや、多様性が主流になってきているこの時代俺は別にイカれているわけじゃあない多分。



そりゃ世間一般から見てみれば変わった趣味だと思われるだろうけど。



そう思って街の中人混みを歩く俺に男は大体こちらを見る、そう…… 俺は今可愛い女の子にしか見えないからだ!




ああ、世の美少女達はこうやって男の視線をチラホラと浴びているのか。 女にとっては煩わしいに他ならないその視線も俺にとっては自分の女装の完璧さを物語る羨望の眼差しにしか感じない。



俺は女装しているからと言って男が好きだというわけじゃない、恋愛対象は女の至って健全な男子だ。 



この通りゆく視線が物語るように今の俺は可愛いんだと思う。 いや思うんじゃなくて可愛いに決まってる!



どこかに不備があればこの視線が哀れな者を見るような目になっているはずだからな。 そして……



「ごめん! ちょっとトイレ行ってたら遅くなっちゃった」

「そうだろうと思ってその辺散歩してたよ」

「散歩って。 別にこの辺散歩するようなとこでもないんじゃ?」

「そんな気分だったの、ほら行こうよ」



ふッ、周囲の反応を見て自分の完璧さにご満悦になってたなんて言えるわけがない。 今もこの山吹やまぶき 沙良さらも俺が男だということに気付いていない、俺は声も高い方だし声色を変えれば女にだって区別がつかない。



しかし…… そんな俺にも欠点があった。 それは非常に汗っかきだということ、冬でも室内に入ればジワジワと汗をかいてくる体質、俺の女装という趣味の天敵としか言いようがない。 



けど元々ヒゲも薄い方だしあんまり問題もない気はするが化粧が汗で落ちてるなんて見苦しいからな。 全部とは言わないが大体の女って冷え性って印象あるし美人だって汗だくで街歩いてたら幻滅するだろ? …… いや中には興奮する性癖の奴もいるのかも。



それより悪いことに今は夏、この日差しが俺のメイクを剥がしていき内心焦っている。 なぜそんな状況で散歩なんかしたんだろうかと己のバカさ加減に腹が立つがそんなこと言っている場合ではない。



「沙良」

「なあに?」

「ちょっとトイレ」

「えー? だからさっき一緒に行こうって言ったのに」

「ごめんごめん、すぐに済むからちょっと待っててよ」

「じゃあ一緒に行こッ」

「ううん! 悪いし」

「いや私もメイク直そうかなって。 今日暑いじゃん? 汗かいちゃったし」



服の胸元を伸ばして色白な肌と鎖骨が見え隠れして少しエロい。 おっといかんいかん、というかさっき行った時に直せば良かったじゃん…… と思っても不毛なことだ。



仕方ない、どうせトイレの中で俺もメイク直しするんだ。 いいだろう、と駅のトイレへ向かった。



ちゃっかりと女子トイレへ入る。 いや変態なのかと思われそうだけど今の俺は女だ、逆にここで男だと宣言したらそれこそ変態だ。 女専用とかそういうのを見ると罪悪感はあるが俺が俺の趣味のためネタバレするわけにはいくまい。



なんて心の中で思いつつ女子トイレへ入り速やかにポーチを開けて鏡をチェックする。 



良かった、まだそんなにメイクは崩れていない、カツラも自然だ。 俺は安堵しメイクをし直す。



柚月ゆづきまだ?」

「今出るって」



沙良が急かすので俺はチャッチャとメイクを直した。 柚月と名乗っているのは俺の名前、沙良に名前を聞かれた時に何も考えてなくて咄嗟に言ってしまったのだ。 川崎かわさき 柚月ゆづき、これが本名なのだけれど苦し紛れに苗字だけは中原なかはらと名乗り沙良の中では中原柚月ということになっている。



「そんなに見なくても柚月は美人だよ」

「え? ああ…… 沙良こそじゃん」

「いやぁー、それほどでもあるかなぁ!」

「あはは、強いなぁ」



違う、鏡が目に入るとすぐに不備がないかチェックしてしまう癖なんだよ。 なんせ女子トイレとかに出入りしている俺がもし男だとバレようものなら下手したら警察沙汰になっちまうかもしれないからな。



「じゃああのケーキ屋行こう! この前のテレビ観て食べたくて食べたくて」

「はいはい、もうそれ何回も聞いたから」



ケーキか、まだマシだよな。 激辛系の食べ物だったらまずアウトだし。 まぁそういう系の食べ物は苦手だし熱いものも苦手って言ってるからいいが本当は好きなんだよな、それとケーキとか甘ったるいお菓子は生憎好きじゃない。



けどこんな形をしている以上それは不自然だし好物として認識してもらっている。 はぁ〜……




ところで俺はこの沙良という女性が好きだ、俺は高校生で沙良も俺と同い年の高校生だった。 俺と沙良が知り合ったのは偶然で沙良が街で男にナンパされていて明らかに困っていたので俺はそんな沙良を見て一目惚れしてそのナンパ男に割り込んで沙良の手を取りそいつから逃げた。



それから沙良と仲良くなった。 沙良はその可愛さから昔からモテていたのだがそういう輩からも絡まれるのですっかり嫌になって女子校へ。



「ねえ柚月これこれ!」

「ふぅん……」



こんなに愛くるしく目をパチパチさせてメニューを見せてくる沙良を騙している俺は最低だなと思いつつも沙良が好きで俺は女友達として沙良と仲良くする。



「暑いし思い切って髪切っちゃおうかなぁ〜」

「もったいないよ、沙良って凄く髪綺麗だし」



あ、それは俺の好みなんで……



「うーん、そぉ? 柚月がそう言うならやめとこッ! へへへッ」



うん、天使のようなスマイルだ。 ご馳走様です!



タラリ……



「あ……」

「え?」



沙良がハンカチを出して俺の頬をポンポンと優しく拭った。



「汗かいてたよ」

「うあ、ごめん」

「ううん、柚月はホント暑がりだなぁ。 私は寒がりだけど」



油断していた、そう思うとどんどんとジワァ〜と顔面から汗が吹き出してきそうだ、落ち着け俺のエクリン腺、あんまり滝汗をかくと沙良にドン引きされるぞ。



「でもそんなとこ可愛いよ柚月」

「いや、こっちとしては割と真剣に汗っかきは治したいんだけどね」

「あははッ、だったらロシアとかに住んだ方いいんじゃない?」



日本から出てけってか? 



沙良はテーブルのアイスコーヒーをストローでクルクルとかき混ぜながら汗ばんでいる俺にふぅーッと息を吹きかけた。








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