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杉の利休

 興奮が眠気を吹き飛ばしていく。そこに、朝日が追い打ちをかけた。日向高校野球部の本入部。今日から本格的に部活動が始まる。

 寝室から出て階段を降りていく。

 そして、親父は先に起きていたようだ。

「こい。渡したいもんがある」

 向かった先は家の裏扉を開けた所にあるスポーツ用品店。野球のコーナーへとやってきた。

 誰もいない店の中。店主の親父は、秘密の隠し棚から細長い箱を取り出した。その中には、深い味を出す木製バットが入っていた。

「入学祝いだ。本入部前に渡そうと思ってな」

 滑らかに伸びるボディ。美しい流線が何とも言えない形を作り出す。軽やかなイメージ。これを手にすると、神秘な森が想像されていく。深い森の奥地に佇む滝。その滝を背にして僕は立っているような幻覚に陥りそうだ。


「こりゃ、()いや。すげぇのが打てそうだ」

「だろ。父さんの父っちゃんの力作だからな。三代目"杉の利休"として、野球界に革命を起こしてくれよな」

「俺は革命を起こす気はない。あの人の代わりに甲子園を目指す。ただ、それだけだ。それに、革命は起こすもんじゃなくて、いつのまにか起きるもんだから」

「いっちょ前のこといいやがって」



 そして、木製バットを持って学校へと向かった。

 授業も終わり、ようやく部活動の時間となった。先輩たちが部室や倉庫を説明していく。続いて、グラウンドにやってくると、一年は横一列に並ばされた。

 僕を含めて三人の部員がいた。

 想定外の少なさに部員のほとんどが思わず目を見張ってしまうほどだ。木製バットを持った僕に、少し背高い陽を嫌うオーラを放つ仲間と、普通の高校生としかいいようのない仲間。この三人が二、三年生の部員に囲まれていた。


 その中で、主将が前に出てきた。

 人際、目立つ所に現れ、物静かな空気の中で放った言葉は……


「ようこそ野球部へ。そして、三人の(こん)中に極道の()()()がいるようだね」


 思わぬ一声に驚きを隠せない。

 僕達の中に、極道のヤクザが!?

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