その25 偵察2
「くそっ! 応援は来ないのか!?」
衛兵たちはもうすでにボロボロになっていた。その鎧はところどころ外れていて、周りには落ちた鎧の破片と共に魔物が多数倒れている。
「なんで急に魔物の群れが出てくるんだよ!」
兵達の目の前には赤いスカーフを顔に巻いた小人が数体いて、その手にはナタのような刃物を手にしている。スカーフの隙間から見える目はうっすらと光り、その視線は衛兵の先にいる市場に向いている。
そのうちの一体が飛び出して市場へと入ろうとした。
「させるか!」
1人が小人の進行を止めようと回り込んだ。小人のナタと兵の剣がぶつかる。
「強いな、まさかレッドスカーフがここまでやられるとは」
レッドスカーフたちを後ろの木の枝から見ている男が呟く。
「ハァッ、ハァッ」
兵士たちはボロボロになりながらもなんとかレッドスカーフたちを市場に入らまいと食い止めていた。
「うっ・・・!」
限界がきたのか、兵士の1人がふらつく。その瞬間を見逃さなかったレッドスカーフは身軽さを活かしたスピードで襲いかかってきた。
「おいっ!」
仲間が気づいたがとても間に合わない。レッドスカーフのナタが彼の首元に狙いを定め振り下ろされた。
「おっと」
兵士がレッドスカーフから遠ざかり、ナタが首元に当たらなかった。正確にはレッドスカーフが後ろに引っ張られたのだ。スカーフは誰かが頭を鷲掴みにしていることに気づき、空中でジタバタする。
次の瞬間、鷲掴みにされたレッドスカーフはボールのようにぶん投げられ木に激突、そのまま動かなくなった。
「あ、あんたは・・・」
兵士が見上げるほどの大きい体がそこに立っている。
「パワード!」
兵士たちは歓喜の声を上げる。
「誰ですか?」
若い兵士が尋ねた。
「新入りのお前は知らないか。勇者パーティーの1人だ」
「大丈夫ですか?」
グードは倒れた兵士たちのところまで駆け寄る。
「レッドスカーフか、かなりいるな。しかしさすがは国の衛兵、この数相手によく持ち堪えたな」
パワードが襲いかかるレッドスカーフを殴り飛ばす。
「俺たちは普段からそれなりに魔物の相手をしているからな。本来ならレッドスカーフなら倒せるんだが・・・」
「こいつらだけでは無理か」
木から観戦していた男は立ち上がると降りた。その空中で男の皮膚は鱗へと変化し、その手には鉤爪が現れ、背中から翼も現れて口は前方へと伸びだした。そして地に着く頃には全く別の姿へと変化していた。
「くそっ、またでやがった!」
兵士達の表情が曇る。
「なんだあのちっこいドラゴンみたいのは?」
パワードが兵に尋ねる。
「あいつだ。レッドスカーフはともかく、コイツがヤバイ。さっきもこいつが出てきてものすごいスピードで俺たちを襲ったんだ。その後姿を消したと思ったんだが・・・」
話していた兵士から急に血が出た。鉤爪で引っ掻かれたような傷だ。一瞬降りてきた細いドラゴンが見えたが、そのスピードからすぐに姿を消した。
「大丈夫ですか!? くそっ、まるで弄ばれているようだ・・・!」
やられた兵士を若い兵士が支える。
「グード! ここは危険だ、全員ここから離れろ! こいつは俺が相手をする」
「しかし・・・」
「早く行け!」
心配する兵士たちにパワードは逃げるよう叫んだ。
「行きましょう、動ける人は倒れた人を運んでください」
躊躇する兵士たちをグードが誘導し、全員市場の方へと退避した。
ふーん。この男、相当信頼されているようだな。
ドラゴンに変身した男の興味はパワードに向かっていた。
「はじめて見る魔物だな」
パワードもドラゴンを見つめる。2人が向かいあうと、体もパワードの方が高く、細いドラゴンに対してパワードの筋肉の大きさが目立つ。
「でも、大丈夫なんですか? あの魔物、かなり速いですよ。パワードさんと相性悪いんじゃ・・・」
「大丈夫、パワードはああいうのとも戦える」
グードはそう言うと兵士たちと共に避難した。
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