第4禁忌
街に帰ってきて、とりあえずギルドに向かう。その後ろをフィーアがついてくる。
街を歩いていると、エルフが珍しいのか行く人来る人がちらちらとフィーアを見ている
ギルドに入ると、ほとんどの人が新入りの分際で...というような視線を向けてくる
「あ、レンさんお帰りなさい。もう終わったんですか?」
「終わりました」
「早いですね。それではあちらにあるカウンターでクエストの完了の報告をしてください」
「分かりました。それじゃあその間フィーアの登録お願いできますか」
「そちらの女性ですね。わかりました」
そこで俺はフィーアと別れてさっき言われたカウンターへ
「よう。クエストの終了報告だな。ちなみに俺はダイオス。聞かれてはいないがいっつもここにいるから名前くらえ覚えてくれ」
そこにいたのはごつい体格の男の人だった
「俺はレンです。変な意味ではないんですがここだけ女性ではないんですね」
「まあなー討伐証明部位の受け渡しとかあるからな、女はやりたがらないんだよ。まあそれはそれで女らしくていいんだけどよ。それで、レン、今回の完了報告はどのクエストだ?」
「森の洞穴の洞窟のゴブリンですね。計6匹で全部です。洞穴に横穴がないのもしっかりと確認してきました。俺が行ったところは殲滅できたと思います」
「お前...ほんとに今日冒険者になったばっかりか?」
変なことを聞いてきた。今俺がした報告の中にそんなことを疑うような発言があっただろうか
「どうしてそんなことを聞くんです?」
「いやな、冒険者になりたてのやつはたいてい、クエストの依頼の、たとえば討伐だったら討伐のことにしか頭が行かなくて、お前が言った横穴の確認なんかつい忘れて帰ってきちまうことがあるんだよ。」
「そうですか。まあ俺は今日登録したばっかりの底辺冒険者ですからね。死なないように冒険するしかないですよ。これ、ゴブリンの耳です」
「おう。報告通り6匹分。1匹につき大銀貨1枚と銀貨5枚だから...大銀貨9枚だな。ちょっと待ってろ」
そう言ってダイオスは奥に入っていった。カウンターの壁に目を向けると指名手配の張り紙がしてあった。中には見た顔もある...見た顔もある?
「は?」
「どうした呆けた声を出して」
銀貨を持って出てきたダイオスに聞かれたようだ
「いや、この張り紙のこいつ今日捕まえたんだが...」
「何!?今そいつらはどこにいる!?」
「この中だ」
そうって異空間収納の中に手を突っ込む
「収納の能力持ちか...ということは中身は死体だな?」
「いや、生きている。」
「何?生き物は普通はいらないはずだが...まあ今はそんなこと追及している場合じゃないな。出してくれ...といいたいところだがいきなり暴れたりはせんよな?」
「そこは大丈夫だロープで縛ってある」
「そうか...ならば出してくれ」
俺は首を縦に振って異空間収納から今日捕まえた盗賊を引っ張り出す。異空間収納の中から入れた時の状態の盗賊たちが出てきた
「この顔...本物のダール盗賊団の頭だ...」
かなり驚いている。こいつらそれなりに名の通った盗賊たちだったのか?
「驚いているとこ悪いが、ゴブリンの洞穴と間違えて入ったところにいたやつらもこいつの仲間か?」
そういって洞穴で捕まえた盗賊たちも引っ張り出す
「こいつら...そうだ!こいつらもだ!」
「とりあえずこいつらはギルドに任せておけば何とかなるのか?」
「ああ。何とかなるどころか懸賞金が出る」
懸賞金が出るのか。金はいくらあってもありがたいから助かるな。特にフィーアがついてくるなら面倒も見ないといけないからな
「また奥へ戻らなきゃいけなくなったぜ...これはいいことなんだがな」
そういって大オスは懸賞金を取りに奥へ入っていった
ダイオスが奥に入っていったあと、ギルドの中にはざわめきが広がっていた
それほどこのダールとやらは強かったのか...
「こいつが懸賞金だ。大金貨5枚でもよかったが使いやすいほうがいいだろうと思ってな思ってな。金貨30と大金貨2にしてある」
「ああ。助かる。ところで魔石とかは買い取ってないのか?」
気になったのでしれっと聞いておく。もしかしたら錬禁術でごみにする前に金にできるかもしれない
「あーここらの魔物の魔石じゃいい値段にならんだろうなーせいぜい銀貨が関の山だろう」
「そうか。それじゃあ一応買い取ってはいるんだな?それを売ってもらうことはできるか?」
「それはいいが全く質のいいものなんてないぞ?」
「ああ。構わない」
「そうか。それじゃゴブリンの魔石10個大銀貨1枚でどうだ?」
「それじゃあ100個もらえるか?」
「良いだろう金貨1枚だ」
そういってダイオスは魔石を取りに中へ入っていった
少しして、大きな箱に魔石を詰め込んで出てきた
それを俺にわたしてきた。俺は金貨を私てその箱から魔石を異空間収納へ流し込む
「良いおもちゃが手に入った」
「おもちゃ?」
「まあ才能で遊ぶだけだ。そう気にするな」
俺はダイオスにうやむやに返してその場を後にした
ダイオスは首をひねっておもちゃ?と考えていた
「フィーア終わったか」
「ええ。囲まれて大変だったのよ?」
「そうか。俺はこの後ギルドにある共同作業場で魔石を使って実験するがフィーアはどうする」
「レンについていく。そのほうが面倒無くてよさそうだから」
「そうか」
それだけ言って共同作業場に向かう
途中の物販窓口で、大量の紙と、インクをいくつか買った
昼頃だからか作業場に人は少なかった
ここでは、食用にできる魔物の素材を取って売るために狩ってきた魔物を解体するのが主な使い道らしい。他には薬草の選別をやったり自ら薬を作ったりしている冒険者もいる。
ところで魔物の解体か...俺は魔物を解体している人に近づいて話しかけた
「すみません」
「ん?どうした?」
「魔物の解体をしてらっしゃるんですよね?よければ魔石を譲っていただければと思って話しかけました」
「なんだ、そんなことか。いいぞ、ほらもっていきな」
その人は快く魔石を譲ってくれた
「ところでお前さん。なんで低品質な魔石なんか欲しがるんだ?」
「ちょっとした実験を」
「そうか。俺はルートっていうんだ。俺はこうやって依頼で狩った魔物をさばいて肉屋に卸している冒険者だ。今度からタイミングよくここで会えたら解体した魔物の魔石はやるよ」
「俺はレンです。それはありがたいですね」
「それより後ろの嬢ちゃんのとこ行ってやんな。男は女を待たせちゃいけねぇ」
「そのとおりですね。それじゃあこれで」
そういってルートとの会話を終えて自分の作業の机に戻る
「魔石の事ばっかり...」
「良いだろ、俺は俺の好きなようにやる。それが嫌ならついてくるな」
「うぅ...レンの意地悪」
その言葉を無視して実験の準備に入るとりあえずさっきもらった魔物の魔石を鑑定する
・超低純度魔石(純度5%)
不純物が多く魔石としての価値がかなり低いもの。魔力を少し保存できる。魔術の威力を少し増加できる
「ふむ、表記が変わったな。とりあえずこれはあとで使おう。とりあえずはゴブリンの魔石だな」
・超低純度魔石(純度3%)
不純物が多く魔石としての価値がかなり低いもの。純度が低くいため使い物にならない
とりあえずこれを2つのパターンで100%にしてみるか
まずは...魔石を大量に錬成して1つの大きな魔石にしてみる
錬成を使おうと思ったのだがいちいち錬成陣を書いて、魔力を流すのも面倒なので、錬禁を使ってみる
幸い異空間収納に錬禁書なるものが入っていたからな
異空間収納から錬禁書を取り出して読んでみる。どうやら、錬禁術は禁忌に触れる魔術らしい。原理は、物の価値を操作する魔術。要するに物質自体を変えることができるらしい
禁忌に触れるゆえか、錬成を自分自身を錬成陣として扱い、簡易的に錬成をできるうえ、錬禁術の原子構成変更も使えるようだ
しかし禁忌かかなり字面は悪いが、ガインは止めなかった。ならば使ってもいいんだろう。
それに人間の言う禁忌とガインの思う禁忌は違うだろう。俺が思う禁忌も違う。
普通の人間が思う禁忌は、触れてはいけない領域。
俺の思う禁忌は、普通の人間では到達できない領域。
ガインは禁忌をどう思っているかは知らんがこれは俺が授かった才能だ。誰が何を言おうが使うのは俺の勝手だ。
「さて...やるか」
俺はそうつぶやいて持っていた2つのゴブリンの魔石を錬成する。
感覚的にフィーアの手枷を錬成した時より小さな魔力で錬成できた気がする。
手の上にあったのはさっきよりの少し大きな魔石。鑑定は後回しにして錬成していく
このままでは効率が悪いので、残った魔石を一気に錬成する
錬成が終わると机の上には50センチほどの大きさの魔石があった
それを鑑定してみる
・超低純度魔石(純度3%)
かなりの大きさがあるが、不純物を多く含んでいる魔石。
なるほど...割合そのままに大きくなったのか。
それじゃあ次は不純物を取り除く作業か...
大きな魔石に手を当てて錬成していく
不純物を取り除くと、魔石1つ分の大きさの赤く透き通った、宝石のような石が目の前にあった。
それを鑑定してみる
・超高純度魔石(純度100%)
高純度の魔石。魔石としての価値は高く、魔力を大量に込めることができる。もう少し大きければ中位魔法を込めることができる。魔力を通しやすい
「よし。できた」
「すごい...こんなキレイな魔石なんて初めて見たわ」
「もう一つ作るぞ」
「まだ作るの?!」
驚いているフィーアを横目に俺はまたゴブリンの魔石の錬成を始める
今後は、先に全部の不純物を取り除いてから一の魔石にする方法だ
実験は思った通りに進んで、さっきと同じ魔石ができた。
どちらの作り方でも高純度の魔石が作れることがわかった
そのあとは残った魔石を全部まとめて3つ目の高純度の魔石を作った
「そんな簡単にこんなきれいな魔石をポンポンと...」
「一つは用途を思いついてるからもうちょっと小さくしたいんだが...」
そう思って3つのうち一番小さいものをさらに錬成すると
さらに小さくなった。鑑定は忘れない
・超高純度魔石(純度120%)
純度の限界を超えた魔石。魔力をかなりためることができ、中位魔法までなら封じ込められる。
また、加工すれば魔術の威力を増加できる。
これはいい。そう思い俺はその魔石を異空間収納にしまう
「え?しまっちゃうの?もうちょっと見てたかったなー」
「まだ2つあるだろう」
「そういうことじゃなくてぇ」
「はいはい」
適当にあしらって次にしたかったことに入る。魔石はいったんおいて次はスクロールの作成
魔術書を開き買ってきた紙に魔術書に書いてあるファイヤボールの魔術語列を描きこんでいく
出来上がったものを異空間収納に向かって撃ってみる。
するとかなりの魔力を紙に押し込んでやっとファイヤボールが発動した。
しかもその魔力の影響か紙ははじけ飛んでしまった
「これじゃ使い物にならんなぁ」
「今度はスクロール?」
「まあそうだな」
「ねえねえ、もったいないだろうけどインクに魔石を粉にして混ぜてみたらどう?」
「お、いいなそれ」
フィーアに言われた通りに魔石を粉にする。もちろん手動など面倒なので、錬禁術でまんべんなく粉々に
それをインクの中に入れ混ぜる。
そうしてできたインクで、同じファイヤボールの魔術語列を書き異空間収納に向かってファイヤボールのスクロールを使って撃つ
すると今度はかなり少ない魔力で打てた、そのうえまだ紙が生きている
試しに何発か撃ってみると4発で紙は消えたが計5発撃てることになる
もう少し丈夫な紙ならどうだろうと思い物販窓口で羊皮紙を買った
匂いはきついが強度は紙より高いはずだ
結果として羊皮紙は10回打てた。
これはいい発明だろう
一息ついて周りを見ると魔石をくれたルートが帰ろうとしていたので少し引き留めた
羊皮紙にヒールの魔術語列を掻き込んで渡す
「こりゃなんだ?」
「ヒールのスクロールだ。たぶん戦士系のルートでもそれくらいだったら使えると思う今使ってみてくれ」
「そうか?ちょっと魔力込めるだけでいいんだな?」
そういってスクロールに魔力を込めるルート。そのあとルートの体を光が包んだ
「こりゃ確かにヒールだ...どんなふうに作ったかは聞かないようにしよう大切に使わせてもらうよ」
「魔石のお礼だ。まあ、また頼む。ちなみに今使ったからあと9回しか使えない」
「分かった」
そういってルートとの会話を終えた
「さて...ダイオスに商談でも持ち込むか」
もう二つファイヤボールのスクロールを作ってダイオスのところに行く
「ダイオス」
「おう、どうした?」
「商談だ」
俺は口に笑みを浮かべファイヤボールのスクロールと、魔石を混ぜたインクを目の前に置いて言った
「そりゃスクロールか...ちなみに何の魔術だ?」
「分かりやすいようにファイヤボール。ちなみに実演用はある」
「分かった訓練場っまで行こう」
ダイオスに連れられ俺とフィーアは訓練場まで来た
「さて...スクロールの基本知識は知っているか?」
「知らん」
「俺のとこに売りに来てよかったな...他じゃ足元みられてたぞ...まずスクロールはかなり高価。お前の持ってきたファイヤボールですら売値は金貨5枚」
「高いな」
「しかしメリットは、詠唱時間の短縮だけ。使用に大量の魔力が必要だから、戦士系才能のやつには使えない。その上使えるのは一回だけ。使う時点で魔力供給過多で紙がはじけ飛ぶ」
「ふふふ...俺のスクロールはそのデメリットを打ち消してあるのさ!」
「何?それが本当なら俺にもスクロールが使えるということか?」
「本当だ。これに少し魔力を流してみてくれ。もちろん俺には向けるなよ」
そういってダイオスに渡すダイオスは半信半疑な様子でスクロールに魔力を流す
するとファイヤボールが現れ訓練場の人形に向かって飛んでいき人形をまっ黒焦げにした
「お、おいこれなんなんだ?俺の魔力で発動できるうえに、まだスクロールが生きている」
「さっき見せたインクがあるだろ?それで魔術語列を書くだけだ」
「インクはこのギルドで販売しているものだからな。何かインクに細工したな?」
「ああ。純度100%の魔石を砕いて混ぜ込んだだけだ」
「じゅ、ひゃ、く...お前そんなもんどこで手に入れたんだ?」
「ゴブリンの魔石から作ったんだよ。まあそのインクを使うことで魔力の通りがよくなって少魔力で使える。その上紙に無理がかからないから回数使える。」
そういって俺は純度100%の魔石を取り出した。
「さて、このインクと魔石とスクロール。それぞれどれくらいで買いとれる?」
そういうとダイオスはかなり考え込んで、よしという顔でこちらに向き直した
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