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そう、おそらくは同族だろうな……もちろん、ヴァンパイアの(EP2終)


 ニーナが泣き止んでから、ようやく僕は後片付けに入り、邪眼がその場に釘付けになっている野次馬に全部忘れるように指示し、中華料理店の夫婦にも、同様の処置をした。


 ついでなので、資産について尋ねると、この夫婦は本当にすっからかんだった。


 むしろ、「この人らはこの人らで、助けが必要じゃないのか?」と思ったほどだ。

 ただし、僕は余計な真似はしない。

 そこまでこの人達に好意的じゃないのもあるが、そもそも僕は単なる高校生であって、慈善事業は趣味じゃないのだ。


 というわけで、最後に結界を解除して、周囲の霧を消そうとしたが……ダニーが僕に尋ねた。





「この子はどうします?」

「……むう」


 鼻血で胸元まで赤く染めたニーナに、僕は首を傾げる。


「一応、考えていることはあるんだが」


 既に誰もいなくなった通りに立ち、僕はちらっとダニーを見る。


「君の家の子になるのはどうかな? 確か、両親は金持ちだったと思うが」

「は、はあっ!?」


 ダニーが滅多に見せない驚愕の表情で固まり、僕は密かにおかしくなった。


「ニーナ、君は嫌かな? 施設に戻る方がいい?」


 まだ少ししゃくり上げてたニーナは目を丸くし、僕を見た。


「あ、あそこは嫌だけど……このおにいちゃんの家の子になるなんて、出来るの?」

「里親って手があるさ」


 そこでまたダニーとニーナが口を開いたので、僕は目で押し留めた。


「わかっているとも。普通、そんな簡単に任意の里親につけるなんて無理だし、審査だってある。でも、そういうのはナントカできちゃう人がいるんだよ……もちろん、僕じゃないけどね。それで、可能だとしたら、それでどうかな?」


 二人の顔を交互に見ると、ダニーとニーナは顔を見合わせ、ひそひそやり始めた。

 まあ、相談くらいは当然か。





「ねえっ」


 ここぞとばかりに先生が僕に囁く。


「さっきのセリフ、本当? 人を殺したことがあるようなこと言ってたけど?」

「イエスと言ったら、先生は気にしますか?」

「先生じゃなくて、歩夢ちゃんよ!」


「……じゃあ、歩夢ちゃん」


 渋々言われた通りに呼ぶと、途端に先生の顔が笑顔全開になった。


「ずっとそれでお願いね」

「外だけです。それで、質問のお返事は?」

「気にはなるけど、別に離れたりしないわ。レイ君のことだから、そうせざるを得ない事情もあったんだろうし」

「事情があっても殺人は殺人ですけどね……相手は人間じゃないけど」


 だいたい、教師的にその倫理観の緩さはどうなんだろう。

 僕が呆れたところで、ダニー達が揃って僕を見た。なにも言わず、ダニーが頷く……困惑顔ではあったが、少なくとも心底嫌って感じでもないな。


 まあ、ダニーなら彼女のブレーキになるだろう……多分だけど。


 それに、もう時間切れだ――まるでタイミングを計ったかのごとく、スマホが振動したのだ。

 出ると、もちろん養母のノーラさんである。



『全部、済んだかしらー?』

「まあ、一応のところは。それで、ノーラさんの予想通り、お願いがあります」

『でしょうねぇ……それで、わたしの要求、覚えてる?』


「忘れていて欲しかったですが」


 ため息が出たが、こればかりはしょうがない。

 これでもノーラさんは本気だろうしな

 そこで僕は、他の三名から少し離れ、淡々と要求をこなした。


『もっと愛情込めて!』


 なんて言われたが、そこはおまけしてもらった。無理なものは無理だし。

 ただ、彼女が最後にこう忠告したのが気になる。



『これで全部終わりじゃないのよ、レイ君。……用心しなさい』



「それは一体――ちっ、切れた!」


 未来予知だか予感だか知らないが、なにか知ってるのなら、教えてくれると早いのに。


「とりあえず、話はついたよ。ひとまず今晩は、あの施設にこっそり戻ってもらうけど――」


 ダニーとニーナに告げたその瞬間、僕はようやくノーラさんの警告の意味を悟った。





『なるほど、ピュアブラッド(純血種)でもないのに、やるもんだね』


 さっと周囲を見たが、確認できない。


「レイ君、今の声はっ」

「わからないが、用心してくださいっ。普通の人間じゃない」


『もちろん、違うとも。それに、君だって人間じゃあるまい?』


 ひどく無邪気なくすくす笑いが聞こえた。

 ただし、未だに相手の位置が掴めない。 


『今日のところは、挨拶まで。……けどまあ、忠告くらいはしてあげようかな。自分の立場を考え、あまり目立つものじゃないよ、神代零君』


 それを最後に気配は完全に消えた。

 もう少しで察知できそうだったんだが、向こうもそれを悟ったのかもしれない。


「誰なの、今のっ」

「敵ですか!」

「場所がわかんないっ。ガードされてるわ!」


 先生とダニーが同時に尋ね、最後にニーナが不満そうに喚く。


「……多分、ダニーが正解だろう」


 僕は夜空を仰ぎ、疲れたように答えた。

 そう、おそらくは同族だろうな……もちろん、ヴァンパイアの。


ポルターガイスト騒動のエピソード2が終わりました。

これも普通に、次のエピソード3に続きます。


読後に気が向いたら、評価などよろしくお願いします。

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