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彩る君に恋をした。  作者: 椎名 椋鳥
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ヒヨリ 

「おーい。大丈夫ですか〜? おーい」

 んん、なんか聞こえる。女の人の声。


「目を覚まさないなぁ…。そうだ! ビンタしたら起きるかも!」

ちょっ……待て待て。見ず知らずの人にいきなりビンタとか、


「いってえ! なにすんだ!」

 手と頬が擦れ、強い痛みを感じる。

「あら?起きてたの?」

 俺は素早く起き上がって、

「起きてたの? じゃないだろ! 寝てる人にいきなりビンタするやつがいるかよ!」

「はーい! わたしでーす!」

 生い茂る木々の中、無邪気な笑顔で手を挙げているのは、赤い髪のセミロング? くらいの長さの女の子。


「はぁ……もういいよ。それで君に名前は?」

「私はヒヨリ。君は?」

「俺は金指湊だ」

「湊君ね、よろしく! どうしてこんなところで寝てたの?」

 小さなため息を吐いて、

「俺もよく分からないんだけど……」


 俺はこれまでの経緯を簡単に説明した。ヒヨリは多分理解できてないようだけど。

 スマホの電波は圏外。


「んで、ここはどこなんだ?」

「んーとねぇ、森!」

「そんなもん、見たら分かるわ! ここはどういう地域だとか、近くにどんな物があるとかを聞いてるんだよ」

 俺は声を荒げて言った。

ヒヨリはおチャラけた表情でこっちを見てくる。そしてヒヨリはこの場所のことを簡単に説明してくれた。彼女の言うにはここはベルモント王国という国で、この森はその西のはずれだということらしい。ベルモント。聞いたことない。日本ではないみたいだし。じゃあどこか違う世界へ飛ばされたのだろうか。


「そうか、ありがとう。それで、もう一つ聞きたいことがあるんだけど……」

「なになに? なんでも聞いて!」

なんでこの子はこんなに楽しそうなんだ?

「めっちゃ気になっていたんだけど、その……両肩の上に浮いているのは?」

動物?動物にしては見たことないな。ハムスターにしては大きいほうだ。

「この子たちは私の精霊。右のオレンジの子がペティ、左の赤い子がパティっていうの」


精霊。

この世界には精霊という生物がいるのか。面白そうだ。こんなにワクワクするのはいつ以来だろう。

「精霊は自分の性格を色で判断してくれるらしいんだ。ちなみに私は赤だよ」


 赤、エネルギッシュで行動力のあるアグレッシブな人物、ということか。

「じゃあその精霊にどこで出会えるんだ?」

 ヒヨリは左腕をまっすぐ伸ばして指差しながら、

「そこだよ!」

 ん? という表情を浮かべた俺。ヒヨリは続けて、

「だから、あそこの泉だって!」

「近っ! かすかに見えるあの場所か」


 こういう場所ってもっと奥地とか僻地にあるものじゃないのか?俺の偏見だっただけなのか。

ヒヨリは何故だか分からんがウキウキで俺を案内してくれた。そこに広がるのは青く澄んだ泉。自分の見てきた景色の中で群を抜いて綺麗だったので、つい感嘆の声をもらしてしまった。


 そこでヒヨリは誇らしい顔をして、

「どう? 綺麗でしょう?」

「なんかすごい自慢気だな。それで精霊はどこにいるんだ?」

ヒヨリがベルモントの町の人に話を聞いた手順をそのまま行ったら精霊に出会えらしい。

ただ精霊に出会えるのは限られた人だけだというが。

 穏やかな声でヒヨリは言う。


「じゃあ、私の言った通りにやって。まず右手を水面にかざして。目を瞑って。そして、心の中で祈るの」——精霊よ、我の心の中に

 すると、突然目に突き刺すような光が水面から溢れてきた。

その眩い光は俺の視界の全てを埋めた。俺は眩しさのあまり、目を細める。その後次第に光が薄れてゆく。

俺は徐々に目を開けていく。光が全て消え去った時、俺の目に映ったのは見たことのない生き物だった。

ハンドボールぐらいの大きさ、鋭い眼光、黒い肌、まるでカラス?の様な風貌。

予想はしていたが本当に黒色だったとは思わなかった。

「これが俺の精霊……」

 俺の精霊はゆっくり近づいてくる。そして俺の右肩にちょこんと乗っかった。

精霊は声も発さず、鳴き声すらしない。するとヒヨリが、寄ってきて、

「名前、付けないの?」

 名前……そうだな、

「よし!お前はクロウだ」



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