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彩る君に恋をした。  作者: 椎名 椋鳥
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原因究明

「そろそろ戻ろうか」

「そうですね」

 俺とレオナは無言で浜辺を歩き、街に戻った。街は相変わらず物音一つ無く、明りも無い。夜になると一層不気味な気配を保っている。


 ……?


 人の気配がする。


真夜中なのになぜこんなに人が歩いているのだろう? 

それに一人や二人でなく大勢の人々が。


「あの、すいません」

 杖をついている老人に声をかけてみた。

「あっ、外から来た人たちじゃないのかい?」

「そうです。あなたはなんでこんな夜中に出歩いているんですか?」

「わしはアムージュの住人じゃよ」


 アムージュの住人? 石になっているのが住人のはずじゃないのか? 

 よく見れば少し透けている。

「この街はなぜこうなってしまったのですか?」

「三日前じゃったか、この街の上空から強い光が降り注いだんじゃ。光に飲み込まれたわしらは外にいたもの、屋内にいたものすべての人の体が固まってしもうて……じゃが、夜の一定の時間帯になるとこうして魂みたいなものだけじゃが動けるようになるんみたいなんじゃ」


 光……自然現象で石化させる光が上空から降るなんて考えられない。人口的にやったと考えるべきか。

「あの、その光はどこから出てきたとか覚えてないですか?」

「どこじゃったかの……確かあの灯台のふもとからじゃった気がする」


 なるほどそういうことか。

彷徨う老人にお礼を言って、レオナと走りながら相談。

「原因ははっきりしましたね」

「あぁ。で、次は元凶を突き止める」

 まずはヒヨリとメルを起こし、それから灯台のふもとへ行くと決めた。

何があるか分からないがヒヨリたちの戦力も必要だという判断だ。


 宿に着いてヒヨリを揺らし起こす。

「起きろ〜ヒヨリ」

「んん……朝〜?」

目を擦りながらフワフワと起き上がる。

「朝じゃない。石化の原因が掴めたんだ」

「え、あっ、おぉー!」

 寝ぼけていたが俺の言葉を聞いてようやく目が覚めたようだ。

 レオナがメルを起こしていよいよ出発。目指すは灯台のふもとだ。




 辺りは真っ暗、灯台といっても今の状況じゃあ機能してないのも当然か。

「ねぇ、ホントにこんなところに石化の原因があるの?」

「さきほど確信的な情報が聞けたのですよ。ねっ湊君」

「おう!」

 ヒヨリの問いかけに自信満々に答えるレオナ。

その答えに疑念を持つヒヨリ。

疑念というより寂しげだったか。


 さぁ考えよう、どこに元凶があるのだろうか。

まず、俺が石化させるような光を打ち上げるとしたら自分は当たりたくない。

建物内もその光を見ればアウト。一番効率良く光を打ち上げられる場所……。


 それは地下だ! 

地下だと建物より安全であり、何より光が通らない。だが地下といっても範囲が広すぎてキリが無い。

なにか……。

「メル、この辺りに電波が通っている場所とか確認できるか?」

「余裕なのだ!」

 ブイサインを突き出し、それからメルは精霊ピスラに手を当てる。

「《変化ヴェクセル》」

 針。何百本にも及ぶ針が体のいたるところに仕掛けられている。

暗器……というほどではない。

メルは針を通して微弱な電波をキャッチ、ひらめいたかの表情を浮かべると無言で歩き出す。


「ここの下だぞ」

 メルは灯台の真下、真っ白な壁のその下を指差した。

灯台の壁を三回ノック、違和感のあるところに注視すると地下室を発見した。階段を下りていくと実験室と書かれた部屋を見つける。


 いよいよ突入。全員で頷き合う。


恐る恐る扉を開けると、そこには一人の男が立っていた。

「ようこそ、君たちを待っていました」

白衣のポケットに手を入れながら話し始める男。

「君たちが来るのは分かっていた。上の街は見たんだろう? あれすごいよね。僕がやったんだ」


 分かっていた? 俺たちが来たのはつい昨日だぞ。

「すごいって何? あんなことしていいと思ってるの?」

 ヒヨリ……。


「いいじゃないか、新たな技術の進歩だ。地下からこの管に玉を通して打ち上げる、花火みたいで綺麗だったよ。それにあの方がお喜びになる。そしてこれを見てしまった限り、生きては返さない!」

 あの方って誰だ? 石化の実験をして何になる?

「あなたは許せない。ここで取っ捕まえて牢屋へ送り込んでやるわ!」

 熱くなるヒヨリ。

普段はお茶目でバカっぽいところはあるけど、いざという時は誰よりも正義感は強い。

「できるのならばやってみたまえ。僕も一応戦えるから、あまりナメないほうがいいよ!」

 男は薬を口に含み、笑みを浮かべる。ドーピングか何かだな。

「まずは……息巻いていた君からだ!」

 目に見えない速さでヒヨリの元へ走り出す。

このスピードで突っ込んできたら精霊の変化が間に合わない。

「危ない!」

 俺は無我夢中でヒヨリの前に飛び出し敵の拳を受ける。腹にモロ入った。思った以上に力が強くヒヨリもろとも壁まで吹き飛ばされてしまった。な、なんて力の強さだ。


「まぁこんなところか。聞いていた話より大したことないじゃないか……。少しがっかりだよ。そこの男と息巻いていた女を先にやっちゃおうか」


 悶える俺と立ち上がれないヒヨリ、こちらに男が向かってくる。


 まずいぞ……やられる!


「《変化ヴェクセル》」


 あいつらだな。


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